穀物水分計の価格は、ハンディ型が約5万〜8万円、卓上・据置型が約19万〜48万円、近赤外やライン組込型が118万〜178万円台というのがメーカー公式定価の目安です。この記事では公式サイトに定価が公開されている機種だけを根拠に、型式別の相場・見積を動かす6つの要因・2026年10月時点で使える補助金・発注前の確認事項までを並べます。
結論から書きます。穀物水分計の価格は「測定方式」と「一度に測る粒数」でほぼ決まります。米麦専用のハンディ型は電気抵抗式で5万円台から、多品目を非破壊で測る高周波容量式の卓上型が19万円前後、単粒を100粒まとめて測るPQ-520が約47.8万円、近赤外で成分まで測る据置型が約118万円です(いずれもケツト科学研究所の公式定価・税別)。判断の軸はひとつで、水稲うるち玄米の検査規格は水分の最高限度が15.0%と1等から3等まで同じです。15.0%を超えれば規格外、乾かし過ぎれば目減りする。だから「何%で止めるか」を誰がどこで測るのかが、そのまま必要な機種と金額を決めます。
穀物水分計の価格の目安|型式別の相場(メーカー公式定価ベース)
はじめにお断りします。検索すると買取サイトや通販のまとめ価格が大量に出てきますが、出所をたどれない数字は見積の材料になりません。ここではケツト科学研究所の公式製品ページに掲載されている定価(税別)だけを挙げます。サタケは穀物乾燥調製機械の価格一覧を公開していますが水分計の単体価格は掲載がなく、静岡製機の穀物水分計も公式サイトに価格の記載がありません。この2社については「要見積」と書くほかなく、推測の数字は置きません。
型式 | 価格帯(公式定価・税別) | 測定方式 | 公称精度 | 向く用途 |
|---|---|---|---|---|
ハンディ(米麦専用) | 約5.4万〜8.0万円/ライスタf2 ¥53,800/ライスタf ¥59,800/ライスタf5 ¥66,000/ライスタf7 ¥80,000 | 電気抵抗式 | 乾燥法に対する標準誤差0.5%以下(水分20%未満) | 個人農家。刈取り時と乾燥中の確認 |
ポータブル卓上(多品目) | 約18.8万〜22.8万円/PM-640-2 ¥188,000/PM-650 ¥228,000/PM-680 ¥228,000 | 高周波容量式(50MHz)・非破壊 | 同0.5%以下(水分20%未満) | 麦・大豆・そばも扱う。容積重も同時に必要 |
据置(AC電源・粉砕式) | 約23.8万〜29.8万円/PB-S ¥238,000/PB-R ¥278,000/PB-R07 ¥298,000 | 電気抵抗式 | 同0.5%以下(水分20%未満) | ライスセンター・集荷場の荷受窓口 |
単粒・連続測定 | 約47.8万円/PQ-520 ¥478,000 | 電気抵抗式(単粒) | ±0.5%(水分20%以下)/玄米100粒を40秒以下 | 乾燥むら・胴割れの管理。粒ごとの分布を見る |
近赤外・据置(成分同時) | 約118万円/AN-920 ¥1,180,000 | 透過型近赤外分光 | 水分・タンパク質・アミロース(参考値)を非破壊で表示 | 食味・成分で売り分ける産地やJA |
ライン組込(インライン) | 約178万円〜/KB-30 ¥1,780,000〜 | 近赤外反射式・非接触 | 測定距離260mm±30mm、3波長、4-20mA出力 | 乾燥・調製ラインの連続監視 |
表の価格はいずれも本体のみです。プリンタ、データロガー、15%テスタなどのオプション、ライン組込の場合の架台・配線・制御盤は別途かかります。価格帯が5万円から178万円まで30倍以上に開くのは、測り方そのものが違うからで、「高いほうが正しい」という単純な話ではありません。
ハンディ型|5万〜8万円。測る場所に持っていける安心
米麦専用のハンディ型は電気抵抗式で、試料皿に穀粒を入れて潰しながら電気抵抗を読む方式です。本体はおよそ164×94×64.5mm・0.44kgで乾電池駆動なので、コンバインの脇でも乾燥機の前でも測れます。玄米・精米・もみ・乾燥中もみ・大麦・小麦・はだか麦に対応し、ライスタfの定価は税別59,800円。外国産米の銘柄を測り分けるf5が66,000円、酒米の精米と麹を7%台まで測れるf7が80,000円と、対応品目が増えるほど素直に上がります。
卓上・据置型|19万〜48万円。荷受窓口の「基準の1台」
卓上型のうち高周波容量式(50MHz)の機種は、試料240mLをホッパーに流し込むだけで前処理も粉砕も不要です。PM-640-2は小麦・大麦・はだか麦・もみ・大豆・小豆・いんげん・玄そばなどまで測れて税別188,000円。AC電源の据置型PB-Rシリーズは粉砕して測る電気抵抗式で、カラー液晶とRS-232C出力を備えて238,000〜298,000円です。荷受で複数の生産者から集める場所では、持ち出さない「基準の1台」を据えて、各自のハンディをそこへ合わせる運用が現実的です。
近赤外・ライン組込型|118万円〜。水分以外も測りたいときだけ
近赤外の据置型AN-920は、玄米・精米の水分とタンパク質・アミロース(参考値)を非破壊で約40秒で表示し、定価は税別1,180,000円です。インライン型のKB-30は製造ラインを非接触で連続測定する機種で、IP66適合・4-20mA出力・定価178万円〜。ここから上は「水分を知りたい」ではなく「水分と成分で売り分けたい」「ラインを止めずに監視したい」という目的に切り替わります。水分値だけが要るなら、この価格帯は不要です。
見積・費用を動かす6つの要因
同じ「穀物水分計」でも、見積書の金額を動かすのは本体価格だけではありません。相談を受けていて、後から効いてくるのはいつも次の6点です。
- 測定方式:電気抵抗式が最も安く、高周波容量式で非破壊・多品目、近赤外で成分同時、インラインで連続監視と上がります。方式を1段上げるだけで金額は数倍変わります。
- 品目対応数と検量線:米だけなら専用機で足ります。麦・大豆・そば・なたねまで測るなら多品目機、さらに外国産米の銘柄別や酒米・米粉のような特殊品目は専用機種か追加の試料リストが必要です。
- 検定・精度管理:農産物検査の標準計測方法(平成13年農林水産省告示第332号)は、計量法上の特定計量器を使う場合は検定証印または表示の付いたものを使うこと、電気水分計は定期的に基準となる電気水分計と同一試料を測って精度を点検することを求めています。登録検査機関では、機器メーカーの点検基準または年1回以上の精度確認が前提です(農産物検査に関する基本要領の整理資料)。この点検の手間と費用は本体価格に入っていません。
- 基準側の器械:公定法に近い基準値を自前で持つなら、乾燥減量法の赤外線水分計が必要です。ケツトの公式定価ではFD-720が税別358,000円、上位のFD-800が588,000円。ハンディ3台を買うより、基準器1台を共同で持つほうが効く現場もあります。
- 保守と消耗:粉砕ロールの清掃と交換、試料皿、電池、プリンタ用紙、校正板。据置機は電源工事と設置場所の温度環境も見ておきます。
- 設置・データ連携:インライン型は架台・配線・制御盤・既存ラインの改造が別見積です。RS-232CやBluetooth、データロガーで記録を残す構成にするなら、PC側のソフトと運用ルールもコストに入ります。
価格の構造は、同じ乾燥調製ラインに入る色彩選別機の価格とよく似ています。本体より「どこまでを一式に含めるか」で総額が動くという点では、土壌診断の費用の考え方も参考になります。
用途別の選び方|ハンディと据置はどう使い分けるか
カタログを比べる前に、自分の条件を3つの数字で固めると商談が早く進みます。ひとつは年間に測る検体数、ひとつは測る品目の数、もうひとつは「誰が測るか」です。この3つが決まれば、だいたい機種は絞れます。
規模と役割から決める
- 個人農家・家族経営:ハンディ1台(5万〜8万円)で足ります。乾燥中もみも測りたいならもみ対応の機種を選びます。
- 集落営農・ライスセンター:荷受窓口に据置1台(24万〜30万円)、現場にハンディを数台。据置を基準にしてハンディの読みを合わせる運用がいちばん揉めません。
- JA・集荷業者:品目が多く、生産者間の公平性が問われます。多品目の卓上型か、乾燥むらまで見る単粒型(約47.8万円)、成分で仕分けるなら近赤外(約118万円)。
- 乾燥・調製ラインの連続監視:インライン型(178万円〜)。ただし既存ラインへの取り付けが成立するかが先で、価格はその後の話です。
据置型とハンディ型の違い
違いは「精度の等級」ではなく、測り方と置き場所です。ハンディ型は乾電池駆動で持ち出せますが、測る人・測る場所の温度がばらつきます。据置型はAC電源で、試料240mLや粉砕機構を使って1回の測定でより多くの粒を代表させます。告示は電気水分計について、本体と室温の差を2℃以内、試料と水分計の温度差を3℃以内にしてから測り、同一試料を複数回測った平均値を小数点以下第1位まで出すよう定めています。この条件を守りやすいのは、どう考えても据置型です。
一方で、ほ場や乾燥機の前で「いま何%か」を知る用途は、据置型では代わりになりません。だから多くの現場は両方を持ち、据置を基準にハンディを校正する形に落ち着きます。水分だけでなく成分や外観まで面で見る話になると、ハイパースペクトルカメラの仕組みと何が見えるのかを一度押さえておくと、近赤外機種のカタログが読みやすくなります。
私たちMilk.株式会社(Invisible World)は、国産のハイパースペクトルカメラ irodori を自社で開発している小さなチームです。水分計の見積の話の途中で恐縮ですが、「水分だけでなく、むらや品質も面で押さえたい」という段階にいらっしゃるなら、これまでの取り組みと合わせて資料に目を通していただくだけでも、比較の材料になると思います。
正直に書く、穀物水分計の測定誤差と限界
水分計は便利ですが、公定法の代わりではありません。ここを曖昧にしたまま導入すると、等級や取引で揉めたときに根拠が崩れます。
- 公定法との差は±0.5%を見込む:基準は常圧加熱乾燥法(恒温乾燥機を106.5±1.0℃とする105℃乾燥法、135.0±1.0℃とする135℃乾燥法)で、その許容差は0.1%です。これに対し電気水分計の仕様は「常圧加熱乾燥法測定値との標準誤差±0.5%以内」。メーカー公式の仕様欄も「乾燥法に対する標準誤差で0.5%以下」と書いています。つまり0.5%程度のずれは正常な範囲です。手順や温度条件は常圧加熱乾燥法の手順と温度条件にまとめています。
- 高水分域は精度の保証外になりやすい:公称精度の多くは「水分20%未満」の条件付きで、乾燥中もみを除外している機種もあります。自動穀温補正の適用も水分20%以下までです。刈取り直後の20%超は目安として読むべき数字です。
- 温度の影響が大きい:本体と室温の差2℃以内、試料と本体の差3℃以内という条件は飾りではありません。冷えた倉庫から持ち出した水分計でそのまま測れば、ずれます。
- 近赤外は適用品目が限られる:告示の近赤外分析計による測定方法は、水分については適用品目が精米及び小麦です。もみや大豆を近赤外で測って検査値にする、という使い方はできません。
- 校正はドリフトする:どの方式も定期点検が前提です。基準となる水分計や基準試料との突き合わせを年1回以上は回してください。
非破壊で水分を測る手段そのものを比べたい場合は、食品の水分測定を非破壊で行う方法と7手法の比較が近い内容です。本記事は価格と機種選定に絞っているので、原理の比較はそちらをご覧ください。
使える補助金と発注前の確認事項
補助金・助成金の公募状況(2026年10月11日時点)
先に正直なところを書きます。穀物水分計は1台あたりの単価が低いため、水分計だけを単体で申請して通る制度はほとんどありません。乾燥機・籾摺機・選別機を含む設備整備や、データを使った工程改善の計画の一部として組み込むのが現実的です。
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回公募):中小企業基盤整備機構の事業サイトによると、第1回公募の申請受付は2026年9月30日18時に開始され、応募締切は2026年10月30日18時厳守と案内されています。革新的新製品・サービス枠は補助率1/2(小規模事業者等2/3)、補助上限は最大2,500万円(賃上げ特例適用時3,500万円)で、補助下限額は100万円。機械装置・システム構築費が必須経費です。水分計1台では下限に届かないことが多い点はご注意ください。
- デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金):公式の事業スケジュールでは、通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠の6次締切分が2026年10月30日17時、交付決定日は2026年12月10日(予定)と公表されています。7次締切分の日程は、同ページで「確定している募集回のスケジュールのみ公表」とされており、記事作成時点では未確定です。測定データの記録・管理ソフトを含めるなら対象を確認する価値があります。
- 産地生産基盤パワーアップ事業:農林水産省のページでは令和7年度補正予算の資料が公開されており、収益性向上対策および生産基盤強化対策は都道府県を通じて要望調査が行われ、日程や詳細は都道府県・地方農政局への問い合わせとされています。新市場獲得対策は補助事業参加者の公募ページで案内されます。乾燥調製施設の整備と一体で考える制度です。
採択率や受給できる額は、誰にも約束できません。公募時期・要件は年度ごとに変わり、発注前の申請が必要な制度も多いので、必ず上の公式サイトで最新の情報をご確認ください。農業分野の制度はスマート農業の補助金と公募状況にも整理しています。計画に載せられるかどうかは条件次第ですので、対象になり得るかどうか、まずはご相談ください。
発注前に確認したい7項目
- 測る品目と、将来測る可能性のある品目(後から増やせない機種が多い)
- 年間の検体数と、ピーク時に1日何点測るか
- 高水分域(20%超)をどこまで数字として使うか
- 基準にする器械は何か。誰が、どの頻度で突き合わせるか
- 検定証印や仕様確認が必要な用途かどうか(農産物検査に関わるか)
- オプション込みの総額(プリンタ、データロガー、消耗品、電源工事)
- 修理対応と部品供給の期限。販売終了機種を中古で買う場合は特に要確認
ここまで決まっていれば、販売店に渡す条件はそろっています。もし「水分は測れているのに、乾燥むらや品質のばらつきが説明できない」という段階でお困りなら、私たちの資料が何かの手がかりになるかもしれません。売り込むつもりはなく、判断の材料のひとつとしてご覧いただければ十分です。




