色差計で「合格」なのに、並べると色ムラが見える。こうしたズレは、色差計が数mmの一点を一つの光源で測る道具であることから生まれます。この記事では、色差計(L*a*b*・ΔE)で捕まえにくい色ムラの4つの典型例と、面で測る分光カメラとの使い分けを、判定チャートつきで整理します。
結論から言うと、色差計が苦手なのは「面内の分布」「光源による見え方の違い(条件等色)」「光沢・質感の影響」「測定点より小さい局所ムラ」の4つです。色の数値管理そのものは色差計や分光測色計が今も最も確実な手段で、置き換えるのではなく、点の数値管理は測色計、面の分布は分光カメラと役割を分けるのが現実的です。
色差計は何を測っている道具か
色差計(光電色彩計)は、人の目の感度特性(等色関数)に近づけたフィルタ付きの受光器で反射光を直接測り、XYZ三刺激値に相当する値を得る「刺激値直読方法」の測定器です。得た値からL*a*b*や色差ΔE*abを計算し、基準色との差を数値で示します(石川典夫「測色の基礎と実際」日本写真学会誌)。
同じ文献では、刺激値直読方法は分光測色方法より正確さで劣るものの、簡単な操作で短時間に比較的正確に測れるため工業的に広く使われていると説明されています。つまり色差計は、決めた場所の色を、速く、繰り返し同じ条件で測るための道具です。
押さえておきたいのは、測定の単位が「点(小さな円)」であることです。たとえば分光測色計の例でも、測定径をφ3mmとφ8mmで切り替える機種があります(佐賀大学 総合分析実験センター 機器デモ資料)。測定値はその円の中の平均であり、円の外で何が起きているかは分かりません。
色差計で捕まえにくい色ムラ4つ
1. 面内の分布・グラデーション
製品の端から端へゆるやかに色が変わるグラデーション状のムラや、まだら状のムラは、数点の測定では見逃されやすい代表例です。測定点がたまたまムラの「谷」と「山」の中間に当たれば、平均値は基準に近く出てしまいます。
測定点を増やせば精度は上がりますが、1点ずつ当てる測定では手間が比例して増えます。シート・フィルム・塗装板・内装材のように面積が大きく、ムラの場所が毎回違う製品ほど、この限界が効いてきます。
2. 光源を変えると違って見える色(条件等色)
分光反射率が異なる2つの試料が、特定の照明の下では同じ色に見える現象を条件等色(メタメリズム)と呼びます。工場の照明では一致していたのに、店頭や屋外では色が違って見える、という問題の原因になります。
コニカミノルタの解説では、刺激値直読方法の測色計は光源が1種類しか内蔵されていないため条件等色を測定できず、評価には発光特性の大きく異なる複数の光源での測定が必要だとされています(コニカミノルタ「条件等色(メタメリズム)の問題」)。分光測色計なら波長ごとの反射率を持っているため、光源条件を変えて計算し直すことができます。
3. 光沢・質感による見え方の違い
同じ色の塗料でも、つや有りとつや消しでは見た目の色が違って見えます。測色では、正反射光を含めて測る方式をSCI、含めずに測る方式をSCEと呼び、正反射光は表面の凹凸の状態と関係していて光沢に直結すると説明されています(大阪産業技術研究所 技術資料 No.16008)。
つまり「色は合っているのに質感が違うせいでムラに見える」ケースは、どちらの方式で測っているかによって数値に出たり出なかったりします。色差計の数値が合格でも、見た目のクレームが出るときは、色そのものではなく光沢や表面状態の差を疑うべき場面があります。
4. 測定点より小さい局所的な色ズレ
点状のシミ、細い筋、数mm以下の色抜けのような局所的なムラは、測定円の中で平均されると周囲の色に埋もれます。逆に測定円の外にあれば、そもそも測られません。こうした不良は目視検査に頼ることが多く、見逃しの原因になりがちです。目視検査の限界については目視検査の見逃し対策を整理した記事で詳しく扱っています。人の目による色ムラの判定そのものを基準化したい場合は、外観の官能評価を機器で数値化する方法も参考になります。
測色計・RGBカメラ・分光カメラの比較表
色ムラの評価に使われる手段を、得意なことと苦手なことで並べると次のようになります。
手段 | 測る単位 | 得意なこと | 苦手なこと |
|---|---|---|---|
色差計(刺激値直読) | 点(数mmの円) | 決めた位置の色差を速く安定して測る。現場での合否判定 | 面内の分布、条件等色、測定点の外のムラ |
分光測色計 | 点(数mmの円) | 波長ごとの反射率から色を計算。光源を変えた評価、条件等色の確認 | 面内の分布(点を増やすほど手間が増える) |
RGBカメラ+画像処理 | 面(画素) | ムラの位置・形を面で捉える。高速なインライン検査 | 3色の情報しかないため、条件等色や微妙な色差の数値化は難しい |
ハイパースペクトルカメラ(分光カメラ) | 面(画素ごとのスペクトル) | 画素ごとに分光情報を持ち、色の分布をマップ化。光源を変えた見え方の比較 | 照明の均一性と校正に精度が左右される。データ量が大きく、装置も高価 |
ハイパースペクトルカメラは、画素ごとに多数の波長の反射率を記録するカメラです。仕組みはハイパースペクトルカメラとは何かを解説した記事で、RGBやマルチスペクトルとの違いはスペクトル画像の基礎を図解した記事で紹介しています。
面で測る分光カメラとの使い分け
分光カメラは画素ごとに分光反射率を持つため、原理的には画素ごとにL*a*b*を計算し、基準色からのΔEを「地図」として描けます。点の数値ではなくムラがどこに、どれくらいの広がりで出ているかを一枚で見られるのが最大の違いです。
一方で、正直にお伝えしたい限界もあります。
- 色の数値の正確さは測色計が上:測色計は測定条件(照明と受光の幾何条件)が規格化されています。カメラは照明のムラや角度の影響を受けやすく、測色計と同じ数値をそのまま出すには校正の工夫が要ります
- 取引先との数値の取り決めは測色計のまま:検査規格や受入基準がΔEで決まっているなら、その判定は従来どおり測色計で行うのが基本です
- コストとデータ量:装置価格は色差計より大幅に高く、データも大きくなります。全数検査に使うのか、工程改善の分析に使うのかで構成が変わります
現実的な分担は、出荷判定や取引上の数値は測色計、ムラの原因調査や面の分布の可視化は分光カメラという形です。分光測色計とハイパースペクトルカメラの違いはコニカミノルタのハイパースペクトルカメラと分光測色計の違いでも比較しています。
私たちは国産のハイパースペクトルカメラ「irodori」を開発しています。色差計では説明できない色ムラにお困りでしたら、どんなカメラなのかだけでもご覧いただけたら嬉しいです。
あなたの色ムラは何で測るべきか:判定チャート
質問 | Yes の場合 | No の場合 |
|---|---|---|
Q1. ムラは決まった位置に出るか | その位置を色差計で管理するのが最も効率的 | Q2へ |
Q2. 照明を変えると見え方が変わるか | 条件等色の疑い。分光測色計で複数光源の評価を行う | Q3へ |
Q3. 色は合格なのに、つや・質感の違いでムラに見えるか | SCI/SCEの両方で測り比べ、光沢や表面状態の評価を加える | Q4へ |
Q4. ムラの場所・形が毎回違う、または面全体の分布を知りたいか | 面で測る手段が必要。位置だけならRGBカメラ、色差の分布まで数値化したいなら分光カメラを試す | 測定点を増やした色差計の運用で足りる可能性が高い |
Q4でYesになった場合でも、いきなり導入せず、まず実際の製品で「ムラが分光データで見分けられるか」を確かめるのが手堅い進め方です。
分光カメラを試すときの進め方(3ステップ)
- 良品とムラ品のサンプルを用意する:見た目でムラが分かるもの、色差計では合格になってしまうものを含めると比較がしやすい
- 色差計の測定値と並べて評価する:同じサンプルを測色計とカメラの両方で測り、カメラで描いた分布が見た目のムラと一致するかを見る
- 使い方を決める:工程改善の分析用か、インライン検査用かで、必要な速度・視野・照明の構成が変わる
事前検証の流れや準備物はハイパースペクトルカメラのデモ・実機検証の進め方に、検証にかかる費用の考え方は画像検査のPoC費用の相場にまとめています。外観検査全体の装置選びは外観検査装置の選び方も参考になります。
まとめ|点の管理は測色計、面の分布は分光カメラ
- 色差計は、決めた点の色を速く安定して測る道具。数値管理の基本であることは変わらない
- 捕まえにくいのは「面内の分布」「条件等色」「光沢・質感」「測定点より小さい局所ムラ」の4つ
- 条件等色は分光測色計、光沢はSCI/SCEの測り比べ、面の分布は分光カメラと、原因ごとに手段を選ぶ
- 分光カメラは測色計の置き換えではなく、ムラの原因調査と可視化に強い補完の手段
私たちはこれまで、食品・農業・インフラ・医療などの現場とともに、ハイパースペクトルカメラの実証を重ねてきました。受賞歴や学術成果は実績一覧でご覧いただけます。目に見えない違いを捉えるハイパースペクトルカメラの活用事例も合わせてご覧ください。製品の資料は無料でお送りしています。




