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漏水を非破壊で調査するには?漏水検知5手法の比較と分光で水分可視化

漏水を壁や地面を壊さずに調べたい——本記事は、ビル・工場・インフラの漏水調査で使われる主要な非破壊手法(音聴法・相関法・トレーサーガス・赤外線サーモグラフィ・ハイパースペクトル)の違いと、水分そのものを光で可視化する分光技術の位置づけを、得意・不得意まで正直に整理します。

結論を先に述べます。漏水調査に「万能な一手」はなく、実務では複数手法を段階的に組み合わせて絞り込むのが標準です。管内の音を聞く音聴法・相関法は地中の水道管に強く、面の異常を捉える赤外線サーモグラフィやハイパースペクトルは、壁・床・屋上といった面としての濡れ・水分滞留の可視化に向きます。とくにハイパースペクトルは、水が近赤外域(波長1450nm・1940nm付近)で強く光を吸収する性質を利用して「水分そのもの」を面で捉えられる点が他手法との違いです。ただし表層情報が中心で環境光の影響も受けるため、深部の管路特定には音響系が優れます。

漏水調査が難しい理由——「見えない・特定できない」の二重の壁

漏水対応がやっかいなのは、多くの場合水が見える場所と、漏れている場所が一致しないからです。天井のシミや床の湿りは水が重力と毛細管現象で移動した末の「結果」であり、原因となる配管の破断や防水層の欠損は数メートル離れていることも珍しくありません。目視やシミの位置だけで判断すると、無関係な壁や床を壊してしまう掘削・解体の空振りが起きます。

もう一つの壁が「見えない」ことそのものです。壁裏・床下・埋設管・屋上防水層の下など、漏水しやすい箇所ほど目視が届きません。そのため漏水調査は「壊さずに、内部や表層の異常をどうやって外から推定するか」という非破壊検査の問題になります。ここで、音・ガス・熱・光といった異なる物理量を手がかりにする複数の手法が生まれました。

ハイパースペクトルカメラをはじめとする光学的な検査は、こうした「見えないものを可視化する」課題全般と地続きです。漏水と隣り合う劣化の見極めについては、油漏れを早期検知する3方式の使い分け錆・塗装劣化をカメラで定量化する方法、構造体側の異常を扱うコンクリートのひび割れ検査もあわせて参考にしてください。

主な漏水検知手法の比較——音・ガス・熱・光

非破壊で行う漏水調査の代表的な手法は、手がかりにする物理量で整理すると理解しやすくなります。それぞれ得意な対象と苦手な対象がはっきり分かれており、現場では組み合わせて使うのが前提です。

音を聞く——音聴法・相関法

音聴法は、漏水時に管や地面に伝わる微小な漏水音を、探知器(センサー)で電気的に増幅してヘッドホンで聞き取る方法です。相関法は、離れた2点に設置したセンサーが漏水音を捉える時間差から、漏水箇所を機械演算で特定します。いずれも地中の水道管・給水管など「加圧された配管からの漏れ」に強く、埋設管漏水調査の主力です。一方で、面としての湿り、圧力の低い排水・雨水系の漏れ、防水層のにじみのような「音が出にくい漏水」は苦手です。(各手法の位置づけは漏水調査事業者の解説、森工業「漏水調査の方法と最新技術」が参考になります)

ガスで追う——トレーサーガス法

トレーサーガス法は、水素や窒素・ヘリウムなどの検知用ガス(トレーサーガス)を管内に注入し、漏水口から地表へ抜けてくるガスを高感度センサーで検出して箇所を絞り込む方法です。音が出にくい微小漏水や、断水して管内を空にできる現場で有効ですが、ガス注入や養生の準備が要り、広い面を一気に見るスクリーニングには向きません。

熱で見る——赤外線サーモグラフィ

赤外線サーモグラフィ(サーモグラフィ=物体が放つ赤外線から表面温度の分布を画像化する技術)は、漏水部が周囲より冷たく(または温水漏れで温かく)なる温度差を面で捉えます。壁・床・屋上防水層のような「面の異常」を非破壊・非接触で広く見られるのが強みです。ただし温度差が出ていることが前提で、外気温や日射、断熱材の有無に結果が左右されやすく、「温度差=必ず水」ではない点に注意が必要です。

光の波長で捉える——ハイパースペクトル/分光

分光とは、光を波長ごとに分解して、物質が「どの色(波長)をどれだけ吸収・反射するか」を測る技術です。ハイパースペクトルカメラは、画像の1画素ごとに数十〜数百の波長帯の情報(スペクトル)を取得し、見た目の色では区別できない物質の違いを面で可視化します。似た技術に数バンドだけを撮るマルチスペクトルがありますが、波長を細かく連続的に捉える点でハイパースペクトルはより詳細です。漏水の文脈では、後述するように水分そのものの吸収を手がかりにできるのが独自の強みです。ハイパースペクトルカメラ全体の仕組みと活用事例はハイパースペクトルカメラの仕組みと活用事例で解説しています。

手法の比較表

手法

手がかり

非破壊

広域性(面で見る)

水分そのものの特定

得意な用途

音聴法

漏水音

△(点で探る)

×(音で推定)

地中の加圧配管

相関法

漏水音の時間差

△(2点間)

×(音で推定)

埋設管の箇所特定

トレーサーガス

注入ガス

×(局所)

×(ガスで推定)

微小漏水・断水可能な管

赤外線サーモグラフィ

表面温度差

△(温度差=水とは限らない)

壁・床・屋上防水の面点検

ハイパースペクトル/分光

水の光吸収(波長)

○(水分の吸収を直接捉える)

表層の濡れ・水分滞留の可視化

表のとおり、深部の管路を「点」で特定するなら音響・ガス系、面としての水分分布を「見える化」するならサーモグラフィやハイパースペクトルという役割分担になります。どちらが上位ということではなく、対象と目的で選ぶ・組み合わせるのが実務の基本です。

ハイパースペクトルが水分を捉える仕組みと、得意・不得意

ハイパースペクトルが水分検知に向くのは、水が特定の波長の光を強く吸収する物理的な性質があるからです。水分子のO-H結合は近赤外域(NIR=おおむね波長700〜2500nmの、目に見えない赤より長い光)で振動吸収を起こし、970nm付近(弱め)、1450nm付近(強い)、1940nm付近(非常に強い)に吸収帯を持ちます(ケイエルブイ「ハイパースペクトルカメラで水分を検出できますか」近赤外分光器を用いた水分測定)。

したがって近赤外〜短波長赤外(SWIR)に感度を持つハイパースペクトルカメラ(例:900〜1700nm帯)で撮ると、水分の多い部分では1450nmなどの光が余分に吸収されて反射・透過が弱まります。この吸収の強さは水分量と相関するため、面の中でどこがどれだけ濡れているかを、色では見えない状態でも可視化できます。錆や油といった他の物質はそれぞれ別の波長パターンを持つため、水分・錆・油を波長の違いとして切り分けられる点が、単なる可視カメラや温度差頼みのサーモグラフィとの本質的な違いです。

ただし、正直に不得意も書きます。第一に、光学的な検査は基本的に表層〜ごく浅い層の情報が中心で、分厚いコンクリートや金属の奥にある配管の水漏れを透視することはできません。第二に、屋外の太陽光や照明の変化といった環境光の影響を受けやすく、安定した計測には光源条件の管理や参照補正が要ります。第三に、取得する情報量が多いぶん、「どの波長差を水分と判定するか」の解析設計が結果を左右します。つまりハイパースペクトルは、深部の管路特定では音響系に譲り、面としての濡れ・水分滞留・浸水範囲の可視化で力を発揮する——という住み分けが現実的です。

私たちInvisible Worldは、国産・自社開発のハイパースペクトルカメラ irodori を開発しています。記事の途中で恐縮ですが、「壁や屋上のどこが濡れているのか面で把握したい」「水分・錆・油をまとめて切り分けたい」といった課題をお持ちでしたら、まずは技術の概要だけでもご覧いただけたら嬉しいです。

ドローン等との組み合わせと、導入の考え方

ハイパースペクトルによる水分可視化は、単体よりも他の手段と組み合わせることで実務価値が高まります。広い屋上防水層や大規模施設の外壁では、ハイパースペクトルカメラをドローンに搭載して面を一括スキャンし、水分が疑われるエリアを先に絞り込む使い方が有効です。そのうえで、地中の加圧配管が疑わしければ音聴法・相関法で「点」を特定する、というように面で当たりをつけ、点で確定する二段構えにすると、掘削・解体の空振りを減らせます。

導入を検討する際は、次の3点を最初に整理することをおすすめします。(1) 対象が「面」か「点(配管)」か——面ならハイパースペクトル/サーモ、点なら音響系が主役になります。(2) 撮影環境の光条件——屋外・屋内、日射や照明の変動をどこまで管理できるか。(3) 判定したい対象の切り分け——水分だけか、錆・油・防水材の劣化まで一度に見たいか。とくに(3)で複数の物質を切り分けたい場合、波長情報を持つハイパースペクトルの適性が高くなります。

Invisible Worldでは、カメラを納めて終わりにせず、現場のデータをもとに「どの波長差を漏水・水分と判定するか」という解析まで一緒に設計する irodori 共創プランを用意しています。国産・自社開発ゆえに、対象や光条件に合わせた検討をともに進められるのが強みです。詳しくは国産ハイパースペクトルカメラ irodoriのページをご覧ください。

よくある質問

漏水調査でハイパースペクトルを検討する際に多い疑問を、本文の内容の範囲で整理します。

私たちはこれまで、食品・農業・インフラ・医療などの現場とともに、ハイパースペクトルカメラの実証を積み重ねてきました。「自社の対象で本当に水分を切り分けられるのか」を確かめたい方に向けて、製品カタログ・事業紹介資料を無料でお送りしています。受賞歴・メディア報道・学術成果は実績一覧にまとめていますので、あわせてご覧ください。

よくある質問

漏水調査は非破壊でできますか。

はい。音聴法・相関法・トレーサーガス法・赤外線サーモグラフィ・ハイパースペクトルはいずれも壁や地面を壊さずに調べる非破壊の手法です。ただし手法ごとに得意な対象が異なり、実務では複数を段階的に組み合わせて漏水箇所を絞り込むのが標準です。

ハイパースペクトルカメラは水分そのものを検知できますか。

できます。水は近赤外域の1450nmや1940nm付近の光を強く吸収するため、近赤外〜短波長赤外に感度を持つハイパースペクトルカメラで撮ると、水分の多い部分を面として可視化できます。吸収の強さは水分量と相関します。

サーモグラフィとハイパースペクトルはどう違いますか。

サーモグラフィは表面の温度差を捉えるため、温度差が出ていない濡れや、水以外の要因による温度差を水分と誤りやすい面があります。ハイパースペクトルは水の光の吸収そのものを波長で捉えるため、水分・錆・油などを切り分けやすいのが違いです。

ハイパースペクトルで地中の配管の漏水も特定できますか。

苦手です。光学的な検査は表層〜ごく浅い層の情報が中心で、コンクリートや金属の奥にある配管を透視することはできません。地中の加圧配管の箇所特定は音聴法・相関法などの音響系が向いており、面で当たりをつけてから点で確定する組み合わせが現実的です。

導入時に最初に整理すべきことは何ですか。

対象が面か点(配管)か、撮影環境の光条件をどこまで管理できるか、水分だけか錆・油まで一度に切り分けたいか、の3点です。とくに複数の物質を切り分けたい場合にハイパースペクトルの適性が高くなります。

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