Invisible World Logo
ブログ

コンクリートのひび割れ調査方法|クラック検査5手法の比較と選び方【2026】

コンクリートのひび割れ調査方法は「使い分け」が結論

コンクリートのひび割れ調査方法(クラック検査)を、目視・打音・ドローン・赤外線・分光の5手法で比較します。クラック調査は「ひび割れを検出する」目的と「中性化・塩害など劣化の前兆をつかむ」目的で、選ぶべき手法が変わります。足場の要否・1回あたりの手間・定量性まで並べ、手法ごとの限界も正直に整理しました。

先に結論を述べます。ひび割れそのものの検出・記録は、目視やドローンのRGB画像(可視光カメラ画像)、レーザーで足りる場面が多いのが実務の実感です。国の道路橋定期点検要領(令和6年3月改定)でも、道路法上の道路にある橋長2.0m以上の橋を対象に、5年に1回、近接目視を基本とする点検を行い、健全性を4区分で診断することとされています(国土交通省 道路橋定期点検要領(令和6年3月))。ハイパースペクトル(分光)が補完できるのは、むしろ「表面に現れにくい変状の前兆」を面で捉える領域で、万能ではありません。

この記事でわかること

  • ひび割れ検査の主要5手法(目視/打音/ドローンRGB/赤外線サーモグラフィ/分光)の役割と限界
  • 「測れる変状・必要な足場と機材・1回あたりの手間・定量性・苦手なこと」で並べた比較表
  • 手法を選ぶ3ステップの判断フレームワーク
  • 分光やドローン点検が「向かないケース」と、現場での正直な落とし穴
  • 発注の目的(法定点検/原因の切り分け/一次スクリーニング)で手法を振り分ける判定チャート
  • 既存手法で足りるか/分光まで要るかを切り分ける判定チャート
  • 試験撮影から運用判断までの、導入を検討するときの進め方

読み終える頃には、自分たちの構造物と目的(ひび割れを記録したいのか、劣化の進行を早く読みたいのか)に対して、どの手法をどう組み合わせるかを判断できるようになります。

ひび割れ調査方法5種の比較|目視・打音・ドローン・赤外線・分光

コンクリート構造物の点検は、単一の万能手法があるわけではなく、変状の種類ごとに得意な手法が異なります。まず、現場で使われる主要5手法の役割を、得意・不得意まで含めて整理します。インフラ点検に限らず、非破壊検査にどんな手法があり何で選ぶのかという総論から確認したい場合は、そちらの記事もあわせてご覧ください。

目視・打音|今も点検の基本で最有力

目視は、ひび割れ・漏水痕・剥離・遊離石灰(コンクリート内部の成分が表面に染み出した白い痕)などの表面変状を確認する基本手法です。打音は、点検ハンマーで叩いた音の違いから、内部の浮き・剥離(コンクリート表層が浮いている状態)を確認します。いずれも近接が前提で、高所では足場・高所作業車・橋梁点検車が必要になり、コストと時間がかさむのが弱点です。それでも、変状の最終判断は人の目と手が担うのが実務の現実で、後述の非接触手法はこの一次判断を補助・効率化する位置づけになります。なお、外壁タイルのように全面近接での打音が前提になる調査では、非接触の手法をどこまで代替に使えるかが論点になります。その整理は外壁の打音調査を代替する非接触検査の考え方にまとめています。

ドローンのRGB撮影とSfM|ひび割れの位置・幅を面で記録

ドローンによるRGB撮影は、高所や広範囲のひび割れを非接触で撮影し、位置・幅・進行を画像として記録するのに向きます。複数枚の写真から立体形状を復元するSfM(Structure from Motion)を使えば、対象面のオルソ画像(ゆがみを補正した正射画像)を生成し、経年比較の基礎データを蓄積できます。橋梁点検でもUAV(無人航空機)やロボットを近接目視と組み合わせて活用する取り組みが進んでいます(日本精密工学会誌「橋梁点検における新技術の活用と今後の展望」)。ひび割れの「見つける・測る・記録する」に関しては、分光より可視光カメラやレーザーのほうが素直で低コストな場面が多い点は、正直に押さえておくべきです。

赤外線サーモグラフィ|浮き・剥離を非接触で推定

赤外線サーモグラフィは、表面温度の分布を熱画像として捉える手法です。浮き部は健全部より熱容量が小さく温度変化が速いため、日射などの熱負荷で生じる温度差から、遠望・非接触で浮き・剥離を推定できます。足場や交通規制が不要で、高所の面的スクリーニングに向きます。国土交通省 九州地方整備局の技術評価でも、赤外線法により浮き・剥離を高精度かつ定量的に検出する技術が評価されています(国土交通省 九州地方整備局「コンクリート構造物のうき・剥離を検出可能な非破壊検査技術」)。

ただし適用条件は厳しめです。同資料では、雨天でないこと・調査対象が湿潤状態でないこと・対象面への角度が30°以上・撮影距離は約50m未満(レンズ等で80m程度まで)・調査は原則夜間・日較差7℃以上が望ましいといった条件が示され、検出対象も「表面から4cm奥までの浮き・剥離」とされています。温度差が生じにくい条件では検知が難しく、天候・時間帯・季節に左右される点が実務上の制約です。

ハイパースペクトル(分光)でわかること・わからないこと

ハイパースペクトルカメラは、対象を数十〜数百の細かい波長帯(バンド)に分けて撮影し、物質ごとに異なる反射・吸収パターンを面で捉える装置です。分光(光を波長ごとに分けて分析すること)により、可視光では区別しにくい材質のちがい・含水状態・成分の分布を画像として読み取れる可能性があります。近赤外分光をコンクリートの劣化調査へ応用する研究も報告されており、中性化や塩分浸透に着目した検討が行われています(土木学会「近赤外分光イメージングによるコンクリートの劣化調査」)。技術の全体像はハイパースペクトルカメラの仕組みと業界別の活用事例で解説しています。

一方で、分光は「ひび割れを見つける道具」ではありません。分光が補完しうるのは、中性化・塩害・漏水・含水・鉄筋腐食のサインといった、表面には現れにくい変状の前兆を面的な分布として読む領域です。しかも、屋外の外乱光やキャリブレーション(基準合わせ)の影響が大きく、現状は現場実証を前提とした段階にあります。表面撮影だけからコンクリートの中性化「深さ」を直接確定することは難しく、確定にはコア採取など従来の非破壊・微破壊検査が基準になります。過度な期待は禁物で、「劣化の状態を分光で読む」補助手段として位置づけるのが誠実です。塩害や鉄筋腐食に伴う錆や塗装の劣化をカメラで定量化する考え方、漏水に関わる液体の漏れを分光で検知する方式の整理もあわせて参考にしてください。

手法

測れる変状

必要な足場・機材

1回あたりの手間

定量性

苦手なこと

向くケース

目視

ひび割れ・漏水痕・剥離・遊離石灰などの表面変状

近接が前提。高所では足場・高所作業車・橋梁点検車が必要

対象面積に比例して人日が増える

ひび割れ幅はクラックスケール等で測れるが、記録の粒度は人に依存する

内部の浮き・鉄筋腐食など、表面に現れていない変状

基本の一次点検と最終判断

打音

浮き・剥離(内部の空隙)

接触が前提。点検ハンマーと、高所では足場・高所作業車

打点ごとの確認になるため、面積あたりの手間は5手法で最も大きい

浮きの有無の判定は確実だが、点の情報なので面の分布は得にくい

ひび割れ幅の記録・面的な分布(点での確認になる)

浮きの有無を確実に押さえたい箇所

ドローンRGB撮影・SfM

ひび割れの位置・幅・進行の記録

足場は不要。機体とカメラ、SfM解析環境、飛行の許可と操縦体制

撮影は短時間だが、オルソ画像の生成と判読に解析時間がかかる

画像上で位置・幅・進行を数値として比較でき、経年比較の基礎データになる

内部の浮き・剥離、材質や含水のちがい

高所・広範囲のひび割れ記録と経年比較

赤外線サーモグラフィ

浮き・剥離(温度差から推定。九州地方整備局の資料では表面から4cm奥まで)

足場は不要。赤外線カメラと、原則夜間の撮影体制

撮影自体は速いが、夜間・日較差7℃以上・雨天や湿潤を避けるという条件待ちが発生する

温度差として面で定量化できるが、浮きの確定は打音に委ねる

温度差が生じない条件での浮き、材質・成分のちがい

足場が組めない高所の浮き調査

ハイパースペクトル(分光)

中性化・塩害・含水・材質のちがい等の分布(研究・実証段階)

足場は不要。ハイパースペクトルカメラ、基準板、スペクトル解析の環境

撮影に加えてキャリブレーションと解析が要るため、現時点では実証の手間が大きい

波長ごとの反射率として数値で扱えるが、深さや含有量の確定はできない

中性化深さ・塩化物イオン量の確定、細いひび割れ幅の計測

表面に現れにくい劣化の前兆を面で把握したい場合

この表からわかるのは、「ひび割れの検出」と「劣化の前兆の把握」は別の目的であり、最適な手法も異なるということです。多くの現場では、まず目視・打音・ドローンRGBで足り、分光や赤外線は「見えない変状を面で早く掴みたい」ときの補完として検討するのが現実的です。橋梁のように点検要領で手法が定められている構造物では、どこまでを機械に任せてよいかも論点になります。制度面の整理は橋梁点検の新技術で近接目視を代替できる範囲にまとめています。同じ道路インフラでも、舗装は構造物とは点検の枠組みが異なるため、手法の選び方も別に整理しておくと迷いません。舗装側の比較はアスファルト舗装の劣化調査で使われる手法の比較をご覧ください。

点検手法の選び方|3ステップの判断フレームワーク

手法選定で迷ったら、次の3ステップで絞り込むと整理しやすくなります。いきなり最新技術に飛びつくのではなく、目的と現場条件から逆算するのがポイントです。

ステップ1|目的を「ひび割れ検出」か「劣化診断」かに分ける

最初に、点検の目的を切り分けます。ひび割れの位置・幅・進行を記録したいだけなら、目視・ドローンRGB・レーザーで十分なことが多く、分光は不要です。一方で、中性化・塩害・漏水・含水など表面に出る前の劣化の前兆を面的に早く掴みたい、材質や含水のムラを可視化したい、という目的なら、赤外線や分光の検討価値が出てきます。目的が曖昧なまま高機能な手法を選ぶと、コストに見合いません。なお、ドローン点検を前提に予算を組む場合は、機材費だけでなく撮影・解析・報告書作成までを含めた費用構造を把握しておくと判断がぶれません。内訳の考え方は橋梁点検ドローンの費用内訳と相場で整理しています。

ステップ2|現場条件(高所・天候・アクセス)で候補を絞る

次に、現場条件で候補を絞ります。高所で足場が組めない箇所なら非接触のドローン・赤外線が有力ですが、赤外線は前述のとおり雨天・湿潤・温度差の条件に左右され、夜間や日較差の大きい時期が有利です。桁下などGNSS(衛星測位)が届かずドローンの自律飛行が難しい場所や、飛行規制のある空域では、地上からの目視・打音が現実解になります。分光は屋外の光条件やキャリブレーションの影響を受けるため、事前の実証・条件出しが前提です。

ステップ3|一次スクリーニングと精密調査を組み合わせる

最後に、単一手法で完結させず「面で広く一次スクリーニング → 疑わしい箇所を精密に確認」の二段構えにします。例えば、ドローンRGBや赤外線・分光で広く面的にあたりを付け、要注意箇所だけを打音やコア採取で確定する流れです。この組み合わせにより、点検の抜けを減らしつつ、コストのかかる近接・微破壊検査を必要最小限に抑えられます。手法は競合ではなく補完関係にある、という前提が大切です。なお、解体や改修を前提とした事前調査では、劣化の把握とは別に、建材の含有物を法令に沿って確認する工程が加わります。その調査フローの全体像はアスベスト含有建材の判別方法と解体前調査の手順で整理しています。

判定チャート|発注の目的で手法を振り分ける

調査を外に頼む段階では、手法の性能より先に「何のために調べるのか」で選択肢がほぼ決まります。発注の動機は実務上おおむね次の3つに分かれ、どれに当たるかで一次的な手法の組み合わせも、分光の位置づけも変わります。

発注の目的

判断の起点

主な手法の組み合わせ

分光(ハイパースペクトル)の位置づけ

法定点検の要領を満たす必要がある

道路橋定期点検要領(令和6年3月)など、適用される要領・ガイドラインの定めが起点になる

近接目視と打音を基本に、新技術は要領で認められる範囲で併用する

要領を満たす手段にはならない。記録や一次スクリーニングの補助にとどまる

原因(中性化・塩害・ASR・漏水)を切り分けたい

変状の形・位置から疑う原因を絞り、確定はコア採取などの試験に委ねる

目視で変状の形を読み、コア採取・微破壊試験で確定する。面の分布は赤外線・分光で補う

検討価値が高い領域。ただし深さや含有量の確定はできず、試験との突き合わせが前提

広い面を安く一次スクリーニングしたい

対象面積と、単位面積あたりにかけられる費用が起点になる

ドローンRGBと赤外線で面を押さえ、要注意箇所だけ近接で確認する

条件が合えば併用候補。まずRGBと赤外線で足りるかを確認するほうが安い

この3つは、同じ構造物でも並行して走ることがあります。関連する論点は役割を分けて別記事に整理しているので、該当する行から辿ってください。1行目の「どこまで新技術に任せられるか」はひび割れ検出AIの精度と限界と全面打診を赤外線で代替できる範囲、2行目の原因の切り分けは劣化事象と診断手法の対応表、3行目の機材選定はドローン点検のカメラの選び方が対応します。本記事は、その手前で「5手法のどれをどう組み合わせるか」を決めるための記事です。

判定チャート|既存手法で足りるか、分光まで要るか

3ステップを1枚にまとめると、次の表になります。「まず試す手法」で目的が満たせるなら、分光は要りません。分光の検討価値が上がるのは、既存手法では表面に現れるまで分かりにくい事象を、面の分布として早く掴みたい場合に限られます。

判定したいこと

主な対象

まず試す手法

分光(ハイパースペクトル)の検討価値

撮影条件の注意

ひび割れの位置・幅・進行の記録

橋梁・高架・擁壁などの露出面

近接目視/ドローンRGB撮影・SfM

低い(RGB画像やレーザーで足りる)

必要な解像度が得られる撮影距離とアクセスを確保する

浮き・剥離の有無

床版下面・トンネル覆工・外壁

打音(確定)/赤外線サーモグラフィ(面のスクリーニング)

低〜中(浮きそのものは温度差のほうが素直)

赤外線は雨天・湿潤を避け、対象面への角度30°以上・撮影距離約50m未満・原則夜間・日較差7℃以上が望ましい(九州地方整備局の評価資料より)

含水・漏水のひろがり

目地・打継ぎ部・地下構造物・防水層

目視(漏水痕)/赤外線

中(水は近赤外域の吸収に現れやすい)

外乱光の変動が小さい条件と、基準板によるキャリブレーションが前提

中性化・塩害など、表面に出る前の材質変化の分布

海岸部・凍結防止剤の散布区間などの構造物

該当なし(コア採取・微破壊検査で点として確認)

高い(ただし研究・実証段階。深さや含有量の確定はできない)

対象と条件を絞った実証から始める。既知の健全部・変状部との突き合わせが要る

補修材・被覆材の種類や施工範囲のちがい

補修履歴が不明な構造物

該当なし(図面・記録が無いと目視では判別しにくい)

中〜高(材質のちがいは分光が比較的得意な領域)

同上。材質ごとの参照スペクトルを取得できるかが鍵

表の3行目・4行目に当てはまり、かつ既存の点検記録だけでは判断がつかない、という状態が、分光を検討する入口です。防水層の含水を面で捉える考え方は屋上防水の劣化調査と改修判断の進め方でも整理しています。

私たち Invisible World は、宇宙技術由来の光センサーを用いた国産ハイパースペクトルカメラ「irodori」を開発し、食品・農業・インフラ・医療などの現場とともに実証を重ねてきました。インフラ分野では、近赤外線ハイパースペクトルカメラによるケーブル定着部の腐食・滞水検知のように、表面からは見えにくい変状を面で捉える検証にも取り組んでいます。上の表で「うちの対象はどの行に当たるのか判断がつかない」という段階でしたら、まず分光で何がどこまで見えるのかを製品ページでご確認ください。

ドローン点検・分光の落とし穴と向かないケース

最後に、導入前に知っておきたい正直な限界を整理します。過大な期待は、現場での失望と無駄なコストにつながるためです。

  • 分光でひび割れ幅を測るのは非効率:ひび割れの位置・幅・進行の定量は、可視光カメラやレーザーのほうが素直で低コストです。分光をひび割れ検出そのものの主役に据えるのは向きません。
  • 中性化「深さ」の確定はできない:表面撮影から劣化の前兆を面的に読める可能性はあっても、中性化深さや塩化物イオン量の確定には、コア採取など従来の検査が基準になります。分光は置き換えではなく補完です。
  • 赤外線は環境依存が大きい:雨天・湿潤・温度差が小さい条件では浮きの検知が難しく、撮影角度・距離・時間帯の制約もあります。晴天日の夜間や日較差の大きい時期が有利、という条件面の理解が欠かせません。
  • ドローンは飛べない場所がある:桁下や狭隘部などGNSSが届かない箇所、飛行規制空域、強風時は運用が難しく、地上からの点検が前提になります。
  • 分光は実証・条件出しが前提:外乱光やキャリブレーションの影響が大きいため、いきなり本番投入ではなく、対象・条件を絞った実証から始めるのが安全です。

裏を返せば、これらの限界を理解して手法を組み合わせれば、点検の精度と効率は着実に上がります。ドローンと分光を組み合わせる考え方は構造物に限らず、太陽光パネルの点検をドローンで効率化する異常検知5手法の比較でも同じ枠組みで整理しています。私たちはインフラを含む各分野で実証を積み重ねてきました(詳しくは受賞歴・メディア報道・学術成果の一覧をご覧ください)。「自分たちの構造物と目的に、分光や国産のハイパースペクトルカメラ irodoriが合うのか」は、机上の比較では決まりません。次の節で、確かめるための進め方を整理します。

導入を検討するときの進め方|現地条件の確認から運用判断まで

分光を点検に取り入れるかどうかは、いきなり本番導入で判断するものではありません。対象と条件を絞って小さく試し、既存の点検記録と突き合わせて判断するのが現実的です。一般的な流れは次のとおりです。

  1. 目的と対象の整理:何を判定したいのかを上の判定チャートで切り分け、既存手法で足りるかをまず確認します。ここで「足りる」と分かれば、それが最も安いやり方です。
  2. 現地条件の確認:高所か地上か、足場や交通規制の要否、ドローンの飛行可否、対象面までの距離と角度、日射や外乱光の変動、撮影できる時間帯を洗い出します。条件が厳しい場合、この段階で見送る判断もあります。
  3. 試験撮影:対象を絞ってサンプル撮影します。基準板によるキャリブレーションを行い、健全部と変状が既知の箇所を同じ条件で撮ることが重要です。
  4. 解析と検証:スペクトルに意味のある差が出るか、既存の点検記録・打音結果・コア採取の結果と整合するかを確認します。差が出なければ、その対象には向かないという結論になります。
  5. 運用判断:定期点検のどの工程に組み込むか、撮影・解析・報告の体制と費用をどう見るかを決めます。費用の考え方は橋梁点検ドローンの費用内訳と同じく、機材費だけでなく解析と報告書作成まで含めて見積もるのが実務的です。

ステップ3・4で「合わない」と分かることにも価値があります。本番導入してから使えないと気づくより、実証の段階で見切りをつけるほうが、結果として点検予算は守れます。

サンプルテスト → PoC → 本導入|3段階で決めること

上の流れを、社内で予算や稟議の話をするときの単位に置き換えると、次の3段階になります。段階ごとに「何を決めるのか」「次へ進む条件は何か」がはっきりしていると、検討が途中で止まりにくくなります。

段階

やること

ご用意いただくもの

この段階で決めること

次へ進む条件

1. サンプルテスト(試験撮影)

対象の一部を同一条件で撮影し、スペクトルに差が出るかを見る

図面または対象面の写真/変状が既知の箇所

そもそも分光で差が出る対象かどうか

健全部と変状部で意味のある差が確認できた

2. PoC(実証)

実際の現場条件で繰り返し撮影し、既存の点検記録と整合するかを検証する

過去の点検記録(打音・コア採取・赤外線)/現地アクセスと撮影可能な時間帯

必要な精度・撮影条件・運用にかかる手間

既存手法では得られない判断材料が、安定して得られた

3. 本導入

定期点検のどの工程に組み込むかを決め、体制と費用を確定する

点検の年間計画/報告書の様式

運用フロー・担当体制・費用・撮影の頻度

費用に対して、点検の抜けや手戻りが減る見込みが立った

なお、どの手法で頼む場合でも、見積が動くのは対象面積と箇所数、近接の要否(足場・高所作業車・交通規制)、撮影の回数、解析と報告書作成の工数の4点です。機材費や単価だけを比べると、実際の見積とは合いません。診断全体の見積内訳はコンクリート劣化診断の費用が何で決まるか、ドローンを前提にした積算はドローン点検の積算内訳と相場に分けて整理しています。

PoCの組み立て方そのものはPoCの進め方6ステップと成功基準の決め方で詳しく整理しています。自社で機材を持たず、撮影と解析だけを外部に任せて試したい場合は、分光の受託測定を依頼する手順と費用の内訳もあわせてご覧ください。

なお、点検体制のデジタル化や計測機器の導入には、中小企業向けの支援制度を検討できる場合があります。ソフトウェア・クラウドの導入が中心ならデジタル化・AI導入補助金2026(旧「IT導入補助金」。令和7年度補正予算事業から名称が変わりました)が代表的です。設備投資が中心の場合、従来のものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)は第23次公募(2026年5月8日締切)までで、令和8年度からは新事業進出・ものづくり商業サービス補助金へ再編されています。対象経費・要件・締切は公募回ごとに変わり、受付が終わっている回もあります。申請を前提に動く前に、必ず公式サイトで現在の公募状況をご確認ください。検査装置と補助金の関係は検査装置の導入に使える補助金の活用ガイドで整理しています。

なお、試験撮影の相談をいただく際に、次のものが手元にあると話が早く進みます。

  • 対象構造物の図面、または撮影したい面が分かる写真
  • 過去の点検記録(打音・コア採取・赤外線の結果があれば特に有用)
  • 判定したい変状が既に分かっている箇所(比較の基準になります)
  • 撮影可能な時間帯と、現地へのアクセス条件

ここまで読んで「まずは社内で共有できる形の情報が欲しい」という段階でしたら、irodori の製品カタログと事業紹介資料を無料でご用意しています。仕様や実証事例、向かないケースまで記載していますので、比較検討の材料として気軽にお使いください。

よくある質問

よくある質問

ひび割れ調査の費用は何で決まりますか?

見積が動くのは、対象面積と箇所数、近接の要否(足場・高所作業車・交通規制)、撮影の回数、解析と報告書作成の工数の4点です。カメラや機材の単価だけを比べると実際の見積とずれます。手法を変えてもこの4点の構造は変わらないので、まず面積と近接の要否を押さえてからの比較が現実的です。

ドローンや赤外線で法定点検を代替できますか?

代替できる範囲は、適用される点検要領の定めが起点になります。道路橋定期点検要領(令和6年3月)では、道路法上の道路にある橋長2.0m以上の橋を対象に、5年に1回、近接目視を基本とする点検を行うこととされています。ドローンや赤外線は、要領で認められる範囲での併用や、近接する箇所を絞るための一次スクリーニングという位置づけで考えるのが安全です。

足場は必ず必要ですか?

目視・打音は近接が前提なので、高所では足場・高所作業車・橋梁点検車が必要になります。ドローンRGB・赤外線・分光は非接触で足場が要りませんが、条件があります。とくに赤外線は、対象面への角度30°以上・撮影距離約50m未満・原則夜間・日較差7℃以上が望ましいとされ(九州地方整備局の技術評価資料)、桁下などGNSSが届かない箇所ではドローンの運用自体が難しくなります。

どこまで定量的に評価できますか?

ひび割れの位置・幅・進行は、RGB画像やレーザーで数値として比較でき、経年比較にも使えます。浮き・剥離は赤外線で面の温度差として捉えられますが、最終的な確定は打音に委ねます。分光は波長ごとの反射率として数値で扱えますが、中性化深さや塩化物イオン量の確定はできず、コア採取など従来の検査が基準になります。

まず何から相談すればよいですか?

判定したい変状(ひび割れ・浮き・含水・中性化など)と対象構造物が分かれば検討を始められます。図面または対象面の写真、過去の点検記録、変状が既に分かっている箇所、撮影可能な時間帯とアクセス条件があると、向き・不向きの見立てを早くお返しできます。合わない対象であれば、その旨を正直にお伝えします。先に社内で共有できる資料だけ欲しいという段階でしたら、製品カタログと事業紹介資料を無料でお送りしています。

資料請求製品・サービス資料をダウンロードirodori の製品カタログと事業紹介資料を、まとめてお送りします。資料を請求する
ハイパースペクトルカメラとは目に見えない“色”を捉える技術の基礎を解説します。詳しく見る
irodori国産・自社開発のハイパースペクトルカメラの詳細。詳しく見る
お問い合わせ導入のご相談・ご質問はこちらから。詳しく見る