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医薬品の異物検査5方式を比較|薬局方・剤形別の選び方【2026】

医薬品の異物検査は、日本薬局方の試験法と工程内検査のどちらを厚くするかで設計が変わります。本記事では目視・X線・金属検出機・画像検査・分光イメージングの5方式を、検出できる異物と剤形適性から比較し、自社の品質保証に合う選び方を整理します。

結論として、医薬品の異物検査に「これ1台で全部」という方式は存在しません。薬局方の不溶性異物検査法・不溶性微粒子試験法は最終製品の合否を判定するための試験であり、工程内で異物を減らす仕組みとは目的が違います。異物の材質・サイズ・剤形の3軸で分解し、方式を重ねて設計するのが現実的な出発点です。

医薬品の異物検査とは|薬局方が定める試験と工程内検査の違い

医薬品の異物検査は、大きく「薬局方に規定された公定試験」と「製造現場で品質を作り込むための工程内検査」に分かれます。前者は規格適合の判定、後者は不良の流出防止と原因究明が目的で、求められる感度も記録の粒度も異なります。GMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令)の枠組みでは、異物混入・交叉汚染を防ぐ手順を製造管理の中に組み込むことが求められており、最終試験だけに頼らない設計が前提になります(出典: 厚生労働省令第179号 GMP省令)。

注射剤:目視による不溶性異物検査と、微粒子の計数試験の二段構え

注射剤では、まず一般試験法「6.06 注射剤の不溶性異物検査法」で、たやすく検出される不溶性異物の有無を目視で確認します。第1法は、容器の外部を清浄にし、白色光源の直下 2000〜3750 lx の明るさの位置で、白黒それぞれの背景において約5秒ずつ肉眼で観察する方法です。プラスチック製水性注射剤容器の場合は、上部および下部に白色光源を用いて 8000〜10000 lx の明るさで観察します。用時溶解・用時懸濁して用いる注射剤は第2法で、溶解・懸濁したうえで同様に観察します(出典: 第十八改正日本薬局方 一般試験法(国立医薬品食品衛生研究所 日本薬局方データベース))。

目視で見える異物の下に、さらに微小な粒子の管理があります。「6.07 注射剤の不溶性微粒子試験法」は、第1法(光遮蔽粒子計数法)と第2法(顕微鏡粒子計数法)で粒子数を計数する試験です。第1法の判定は、容器当たりの表示量が100 mL以上の注射剤では1 mL当たり10 µm以上のもの25個以下・25 µm以上のもの3個以下、100 mL未満の注射剤では各容器当たり10 µm以上のもの6000個以下・25 µm以上のもの600個以下と規定されています(出典: PMDA 6.07 注射剤の不溶性微粒子試験法(改正案))。点眼剤には別に「6.11 点眼剤の不溶性異物検査法」があり、白色光源を用い 3000〜5000 lx の明るさで観察すると規定されています。

重要なのは、これらが抜取りの試験であり、全数の品質を保証するものではないという点です。6.07 の本文でも、個別の容器を試験して得られた結果は他の未試験の容器に外挿できるわけではなく、統計学的に適切なサンプリング計画が必要だと明記されています。全数の流出防止は、工程内の検査装置と手順の側で設計するしかありません。

錠剤・カプセル・原薬粉体:公定規格がない領域を自社基準で埋める

錠剤・カプセル剤・原薬粉体には、注射剤のような「異物の個数規格」が一律に置かれているわけではありません。そのぶん、何を異物と見なし、どのサイズから排除するかを自社の品質規格で定義する必要があります。ここで論点になるのが、黒点・変色・異種錠・原薬の凝集塊のように「異物なのか品質変動なのか」の線引きが難しい対象です。官能的な判断に寄るほど検査員間のばらつきが出やすく、定量評価のニーズが高まる領域でもあります。

原薬粉体では、秤量・混合・造粒の各工程で混入し得る樹脂片や繊維が、白色の粉体に埋もれて見えにくくなります。色が近い異物をどう扱うかは食品工場でも共通の課題で、透明プラスチック片の検査が難しい理由と対処の考え方は、粉体・固形製剤の設計でも参考になります。

異物の種類別に「何が見えて、何が見えにくいか」

方式を選ぶ前に、想定異物を材質で分解しておくと議論が早くなります。以下は現場でよく挙がる異物種別ごとの傾向です。

金属片(鉄・ステンレス・アルミ)

金属検出機は、送信コイルと受信コイルが作る磁界の乱れから金属を検出します(出典: ミネベアミツミ 金属検出機とは)。鉄は比較的検出しやすい一方、非磁性のステンレスは感度が落ちやすく、アルミ包材やPTPの金属箔は磁界に影響するため、包装後の全数検査では使いにくい場面があります。金属検出機で取りこぼしやすい異物の考え方は、金属検出機で検出できない異物の整理にまとめています。

樹脂片・ゴム片(ガスケット、栓のコアリング)

製造設備のガスケット、シール材、ゴム栓に針を刺したときに生じるコアリング片などは、密度が製剤と近く、X線では濃淡がつきにくい代表格です。色も無色・乳白・黒とさまざまで、カラーカメラでも背景と紛れることがあります。材質由来の情報を使わないと安定した判別が難しい異物です。

ガラス片(アンプル、バイアル、シリンジ)

ガラスは密度が高く、大きな破片であればX線で捉えやすい一方、薄片や細い繊維状のかけらは透過差が小さくなります。溶液中に浮遊する微小なガラス片は、6.06 の目視検査で「たやすく検出される」水準に達しないこともあり、検出下限の置き方が論点になります。

繊維・毛髪

作業者由来の毛髪、拭き取り材の繊維、防塵衣の糸くずは、密度が製剤とほぼ同じでX線が苦手とする典型です。細長い形状のため画像処理では検出しやすい一方、粉体に半分埋もれると輪郭が途切れます。

原薬の凝集塊・異種錠・変色

これらは厳密には「外部からの異物」ではありませんが、外観検査の不適合としては同じ棚に乗ります。形状だけでは良品と区別しにくく、成分の違いを見る手段があるかどうかで判定の安定性が変わります。

医薬品の異物検査5方式を比較する

ここまでの異物種別を踏まえ、代表的な5方式を整理します。どれが優れているかではなく、守備範囲が違うという前提で読んでください。

方式

検出しやすい異物

検出しにくい異物

剤形適性

導入の勘所

目視官能検査(薬局方 6.06 準拠を含む)

目視サイズの不溶性異物、変色、欠け

微小異物、透明異物、粉体に埋もれた異物

注射剤・点眼剤(公定試験として必須)/固形製剤の最終確認

照度・観察時間・背景色など条件の標準化と、検査員の教育・疲労管理が前提

X線検査装置

金属、ガラスの大きな破片、石など高密度異物

毛髪、繊維、軟質樹脂、薄いゴム片(密度差が小さい)

PTP・箱詰め後の包装品、バイアル、粉体充填品

密度差で映す原理のため、想定異物の密度を先に確認する。遮蔽・被ばく管理と法令対応が必要

金属検出機

鉄、ステンレス、アルミなどの金属片

非金属(樹脂・ガラス・繊維・ゴム)全般

原薬粉体・顆粒のライン、非金属包材の製品

金属以外は原理的に対象外。アルミ箔包材や導電性の高い内容物では感度設計が制約される

カメラ式画像検査(可視・カラー)

色・形状・輝度が明確に違う異物、欠け、印字不良

製剤と同系色の異物、透明異物、材質違いの見分け

錠剤・カプセルの外観全数検査、アンプル・バイアルの外観

高速・低コストで全数化しやすい。色や形が似ると閾値設計が難しく、過検出と見逃しのトレードオフが出る

近赤外/ハイパースペクトル分光イメージング

材質・成分の違いに起因する異物(樹脂、ゴム、繊維、異種成分)、色が近い異物

金属など反射特性が極端な対象、包材越しの内部、極小の粒子

粉体・顆粒、錠剤表面、コンベア上の面評価、研究段階の定量評価

1画素ごとのスペクトルを取得して材質で分ける。事前のスペクトル取得と学習データづくりが必須

X線を入れてもなお残る異物の考え方は、X線で映らない異物をどう検出するかの比較記事でも扱っています。装置選定そのものの進め方は異物検査機の選び方が参考になります。

どの方式を選ぶべきか——4つの判断基準

  1. 想定異物の材質は何か:金属のみなら金属検出機やX線で足りる場面が多く、樹脂・ゴム・繊維が主因なら分光や画像側に軸を移す必要があります。
  2. 検査するのは包装前か包装後か:包装後の全数検査が要件なら透過系(X線)が中心になり、包装前なら表面を見る方式が選べます。
  3. 目的は流出防止か、原因究明か:流出防止ならライン速度と過検出率、原因究明なら材質同定の精度と記録性が評価軸になります。
  4. 判定を数値で残す必要があるか:逸脱調査や当局対応を見据えるなら、官能判断ではなく再現可能な数値として残せるかが効いてきます。

ここまで読んで「自社の異物が、そもそもどの方式の守備範囲なのか分からない」という段階であれば、実際のサンプルを分光で撮って確かめるのが近道です。国産・自社開発のハイパースペクトルカメラ「irodori」は、機器の貸出と実証からご相談いただけます。

分光イメージングで「材質まで見分ける面評価」はどこまで可能か

ハイパースペクトルカメラの仕組みと産業での使われ方を一言でいえば、1画素ごとに連続した波長の分光スペクトルを取得し、色ではなく「光の吸収の形」で対象を分ける技術です。近赤外領域では、樹脂・ゴム・繊維・糖類など有機物の分子振動に由来する吸収が現れるため、可視光では同じ白に見えるものを材質ごとに分けられる可能性があります。近赤外分光法の測定波長域は 700〜2,500 nm で、主に C-H・O-H・N-H に由来する倍音・結合音を捉えるため、有機物の判別に向いています(出典: 垂水利泰「近赤外分光法入門」薬剤学 77(2), 81-85, 2017(J-STAGE))。医薬品分野では、近赤外分光が原料の確認試験や製剤中の成分評価に用いられてきた蓄積があります。

「点の分析」から「面の評価」へ

FT-IRやラマン分光による異物の材質同定は、すでに逸脱調査の標準的な手段です。ただしこれらは基本的に、見つかった異物を取り出して点で測る手法です。分光イメージングの位置づけは、これを面で・非破壊で・その場で行うところにあります。どこに何があるかを画像として残せるため、「検査員Aは黒点と判定、検査員Bは影と判定」といった官能検査のばらつきを、スペクトルという共通の物差しに置き換えられます。

定量評価のためのデータの作り方

分光イメージングは、撮れば自動で異物が出てくる装置ではありません。実務では次の順序が要ります。

  • 想定異物(ガスケット材、ゴム栓、作業衣の繊維、包材の樹脂など)を実際に入手し、単体のスペクトルを取得する
  • 製剤マトリクス(錠剤表面、粉体、溶液)の上に置いた状態で、コントラストが出る波長帯を探す
  • 照明・搬送速度・空間分解能の条件を固定し、再現性を確認する
  • 検出下限(何µmの異物まで、どの確率で検出できるか)を実測し、規格と突き合わせる

正直に書く、向かないケース

分光イメージングにも明確な限界があります。第一に、不透明な包装の内側は見えません。PTPシートや紙箱に入った後の検査には使えず、その領域はX線の守備範囲です。第二に、金属片の材質分別は不得手です。金属は分子振動由来の吸収が乏しく、金属検出機やX線のほうが確実です。第三に、空間分解能より小さい異物は、原理的に画素として現れません。6.07 が対象とするような数十µm以下の微粒子を溶液中で数える用途は、光遮蔽粒子計数法など専用の試験法が適しています。第四に、事前のスペクトル取得と条件出しに手間がかかります。未知の異物をいきなり同定できる万能装置ではありません。

そのうえで申し添えると、本記事のどの方式も「異物ゼロ」を保証するものではありません。検出下限と抜取り条件のもとで、どこまでのリスクを下げられるかを定量的に把握し、工程改善と組み合わせることが実務上の目標になります。

導入検討の進め方——実証・機器貸出・補助金

最初の一歩としておすすめしているのは、装置の仕様書を比較する前に、自社の実物サンプルで撮って確かめることです。想定異物が数点あれば、コントラストが出る波長帯があるかどうかは比較的早い段階で判断できます。ここで「分光では分けられない」と分かること自体、選定の大きな前進になります。

私たちは、食品・農業・インフラ・医療などの現場とともに実証を重ねてきました。研究用途での定量評価から、ライン適用の可否判断まで、段階に応じた検証の組み立てをご相談いただけます。これまでの取り組みは実績一覧をご覧ください。製品の詳細は国産ハイパースペクトルカメラ irodori の製品ページにまとめています。

設備投資に使える補助金について

検査設備の導入では、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)などの活用を検討される企業が多くあります。同補助金は回次ごとの公募制で、公式サイトのスケジュールによれば第23次公募は2026年5月8日で締め切られ、2026年9月時点で次回公募の受付開始は公表されていません。公募時期・要件は年度によって変わるため、必ず中小企業庁の補助金公募情報で最新情報をご確認ください。irodori の導入や実証が補助金の対象になり得るかは、事業計画とあわせてお気軽にご相談ください。

検査方式の比較表をもう少し詳しく見たい、自社の剤形での適用可否を検討したい、という段階であれば、製品カタログと事業紹介資料をお送りします。導入を前提としない情報収集の段階でも構いません。

よくある質問

日本薬局方の不溶性異物検査法と不溶性微粒子試験法は何が違いますか。

6.06 注射剤の不溶性異物検査法は、白色光源の下で肉眼により、たやすく検出される不溶性異物の有無を確認する目視の検査です。一方 6.07 注射剤の不溶性微粒子試験法は、光遮蔽粒子計数法または顕微鏡粒子計数法で10µm以上・25µm以上の粒子数を計数し、規定値と比較する試験です。目視で見える異物と、計数で管理する微粒子という役割の違いがあります。

X線検査装置を入れれば医薬品の異物検査は十分でしょうか。

十分とは言えません。X線は密度差を画像化する原理のため、金属やガラスの大きな破片には有効ですが、毛髪・繊維・軟質樹脂・薄いゴム片のように製剤と密度が近い異物は濃淡がつきにくく苦手です。想定異物の材質を先に洗い出し、方式を重ねて設計することをおすすめします。

錠剤やカプセル剤にも薬局方の異物規格はありますか。

注射剤のような異物の個数規格が一律に置かれているわけではありません。そのため、何を異物と見なし、どのサイズから排除するかを自社の品質規格として定義する必要があります。黒点・変色・異種錠のように良品との線引きが難しい対象では、判定のばらつきをどう抑えるかが課題になります。

ハイパースペクトルカメラで異物をゼロにできますか。

できません。分光イメージングは材質の違いを面で捉えられる手法ですが、不透明な包装の内側は見えず、金属の材質分別は不得手で、空間分解能より小さい異物は画素として現れません。検出下限と条件を実測したうえで、他方式や工程改善と組み合わせる前提でご検討ください。

導入検討はどこから始めればよいですか。

仕様書の比較より先に、自社の実物サンプルと想定異物で撮って確かめることをおすすめします。コントラストが出る波長帯があるかは比較的早く判断でき、分光では分けられないと分かること自体も選定の前進になります。機器の貸出と実証からご相談いただけます。

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