ハイパースペクトルカメラの撮影方法は、レンズ・照明・撮影条件の3つをどう組み合わせるかで決まります。同じカメラでもこの選定を誤ると狙った差がスペクトルに出ません。本記事では撮影前に決める項目を一覧にし、対象物の大きさ・形状・知りたい変化量から条件を絞り込む手順を解説します。
記事のポイント💡 ・ハイパースペクトルカメラとはどのようなものか? ・ハイパースペクトルカメラの撮影方法について解説 ・ハイパースペクトルカメラのプロである当社が撮影時の注意点を解説 |
1.ハイパースペクトルカメラとは?
ハイパースペクトルカメラは、従来のカメラの色彩情報が3原色であるのに対し、141原色の色彩情報を有し、人間の目では見分けることの出来ない色(=ゴーストカラー※)の違いを見分けることが出来るカメラです。また、従来のカメラとハイパースペクトルカメラの中間ほどの色彩情報を有するカメラとして、マルチスぺクトルカメラがあります。
※ゴーストカラー・・・可視光領域における人間の目で識別できない色に対する当社独自の呼称

なお、当社ではハイパースペクトルカメラを、市場に出回っている製品から「特定範囲の波長帯 を数十~数百の波長のまとまりで分割した情報(分光情報)とその位置情報(ピクセル)を同時に取得できるカメラ」と定義しています。
波長数の多さや連続的なスペクトルを取得できることを要件とするケースもありますが、それぞれの方式にメリットがあるので広義に捉えています。
定義や仕組みそのものはハイパースペクトルカメラとは?仕組みとマルチスペクトルとの違い、ラインスキャン・分光フィルター・スナップショットの違いはハイパースペクトルカメラの原理と3つの分光方式で詳しく整理しています。本記事は「機種が決まったあと、どう撮るか」を扱います。
2.ハイパースペクトルカメラの撮影方法
ハイパースペクトルカメラは、一般的に市販されているようなデジタルカメラやスマートフォンとは異なり、高度な専門知識に基づき撮影を行うことで、性能を発揮するカメラです。カメラ自体の分光方式をはじめとするスペックと撮影目的が合致しているかどうかという点が大前提ですが、その上で、撮影する際にも以下の要素について、①対象物の大きさ、②対象物の形状、③知りたい変化量などに応じて、最適な選定を行って撮影する必要があります。単純にハイパースペクトルカメラと対象物を用意して撮影すれば良いというものではなく、専門知識に基づき、撮影方法を選定していく必要がある点が特徴です。
要素 | ポイント |
レンズの選定 | 焦点距離、絞り値、画角、倍率、レンズ直径、収差補正の有無など |
照明の選定 | 白熱灯、白色LED、ハロゲンランプ、ストロボライト、キセノンランプ、人工太陽灯など |
撮影条件の選定 | 拡散板の使用、偏光板の使用、バンドパスフィルターの使用、ライトボックスや暗室での撮影、撮影台の使用など |
3.ハイパースペクトルカメラの撮影時の注意点
ハイパースペクトルカメラを撮影する際は、専門的な知識がないまま撮影を行っても期待したような撮影結果が得られない可能性が高いといえます。撮影にあたって注意すべき代表的な要素を上記で述べましたが、それぞれの要素について簡単にご説明します。
a.レンズの選定
ハイパースペクトルカメラ本体に取付するレンズについて、どのようなレンズを選択するかは非常に重要です。望遠レンズや広角レンズなど、レンズには多くの種類があり、その中から最適なレンズを選定します。焦点距離や絞り値、画角、倍率、レンズ直径など、様々な要素を把握した上で選定していく必要があります。また、収差補正の有無も重要です。収差の詳細については改めて記載いたしますが、ここで述べておきたいことは「完璧なレンズは存在しないことを前提に、ノイズの入りづらい撮影方法を考えていく必要がある」ということです。
b.照明の選定
撮影時に使用する照明の選択も撮影結果に大きく影響します。照明の種類には、白熱灯、白色LED、ハロゲンランプ、ストロボライト、キセノンランプ、人工太陽灯などがあります。また、紫外線ランプ、積分球、ナトリウムランプといった照明もあります。このように照明には非常に多くの種類があり、新しい商品も販売されるため、常に最新の情報をキャッチしながら、それぞれの照明の特徴を踏まえ、対象物の大きさ・形状、知りたい変化量に応じて、最適な選定を行います。
c.撮影条件の選定
レンズや照明とともに、撮影条件の選定を行います。拡散板や偏光板を使用したり、バンドパスフィルターを使用することもあります。また、ライトボックスや暗室で撮影するようにセッティングをしたり、撮影台を使用することもあります。これらの撮影条件の構成要素を組み合わせて最適な条件にセッティングしていきます。その上で、撮影の際には対象物との位置関係(距離や角度)をしっかりと調整して撮影します。
撮影前に決める項目のチェックリスト
実際の現場では、次の順に決めていくと手戻りが少なくなります。撮影を外部に依頼する場合も、この表が埋まっているほど見積と結果の精度が上がります。
決める順 | 項目 | 判断のもとになる情報 |
1 | 知りたい変化量 | 何と何を見分けたいのか(鮮度・異物・劣化・濃度など)。ここが曖昧なまま撮ると、あとから波長を選べません |
2 | 対象物の大きさ・形状 | 視野に収める範囲と作動距離。曲面・光沢の有無は照明と偏光板の要否に直結します |
3 | レンズ | 焦点距離・絞り値・画角・倍率・レンズ直径・収差補正の有無 |
4 | 照明 | 白熱灯・白色LED・ハロゲン・ストロボ・キセノン・人工太陽灯など。必要な波長域を照らせるかで絞り込みます |
5 | 撮影条件 | 拡散板・偏光板・バンドパスフィルターの要否、ライトボックスや暗室、撮影台、対象物との距離と角度 |
6 | 校正 | 白色基準板・暗電流の取得手順。これがないと日をまたいだデータを比較できません |
撮影して得たデータをどう処理するかはハイパースペクトルイメージングの解析5工程、可視・近赤外とSWIRのどちらを使うかは波長域の選び方にまとめています。
Milk.の国産ハイパースペクトルカメラ「irodori」は、こうした撮影条件の設計まで含めてご相談いただけます。
撮影条件の設計から相談する
以上のとおり、期待する撮影結果を得るには、代表的な要素だけでもこれだけの項目を対象物に合わせて選定する必要があります。ハイパースペクトルカメラは製造だけでなく、運用においても専門知識が求められる機材です。
当社ではハイパースペクトルカメラの製造・販売だけでなく、導入から運用までのコンサルティングを提供しています。特に購入後の運用・保守のサポートが重要と考えており、導入段階だけでなく導入後も継続して支援しています。レンタルや出張撮影で先に試す方法もあり、費用感はレンタル料金相場、購入まで含めた内訳は価格相場にまとめています。
撮りたい対象が決まっていれば、条件の当たりを付けるところからご相談いただけます。製品カタログと事業紹介資料だけでもご覧いただけたら嬉しいです。





