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土壌診断のやり方|採土・分析・処方の5手順と即日判定の方法【2026】

土壌診断のやり方を、採土・乾燥と調製・分析・結果の読み方・施肥への反映(処方)の5手順で整理します。対角線5か所の採り方や深さの目安、分析を外注するか現場で即日測るかの判断軸まで、初めての方でもそのまま段取りに使える形にまとめました。

土壌診断とは、ほ場の土を採って化学性(pH・EC・リン酸・塩基類など)を測り、都道府県などが定める診断基準と比べて、次作の施肥や土づくりを決める作業です。精度を最も左右するのは分析機器ではなく採土で、一般的には「ほ場の対角線上の5か所から作土を採り、よく混ぜて1検体にする」方法が案内されています。分析値は処方に落として初めて意味を持つため、採る前に「何を決めるための診断か」を決めておくことが大切です。

土壌診断のやり方5手順(全体像)

まず全体の流れを押さえます。各手順の詳細は後の章で解説します。

手順

やること

よくある失敗

1. 目的と時期を決める

何を決めるための診断か(元肥の量、石灰の要否、塩類集積の確認など)。時期は収穫後・次作の施肥や耕起の前が基本

施肥後に採って、まいた肥料の値を測ってしまう

2. 採土する

対角線上の5か所から、表層を除いた作土を同じ深さで採り、混ぜて1検体にする

1か所だけ・深さがばらばら・畦際や肥料の塊の近くで採る

3. 乾燥・調製する

日陰で風乾し、土塊をほぐして2mm目のふるいに通す

濡れたまま袋に詰める・直射日光や高温で乾かす

4. 分析する

JA・都道府県の機関・民間分析機関に依頼、または簡易測定器・キットで自前測定

依頼先の指定(量・乾燥・袋)を確認せずに送る

5. 読んで処方する

地域・作目の診断基準と比べ、施肥量・土壌改良資材を決める

数値だけ見て、基準や作物の要求と照らさない

手順1〜2:採土のやり方(地点・深さ・量)

採土の基本は、ほ場内のばらつきを平均化することです。代表的な方法は、ほ場の対角線上の交点と線上の計5地点から土を採り、混ぜて1検体とするやり方で、愛知県や旭川市など多くの自治体・JAの案内で共通しています(愛知県の土壌採取方法、旭川市 土壌分析の案内)。

深さの目安は「表層を除いた作土」

深さは依頼先によって指定が異なりますが、多くは表面の土を除いてから作土層を均一に採る形です。旭川市は表面1cmを除いた10〜20cm程度、徳島県は表層3〜4cmを除いて一定の深さで採るよう案内しています(徳島県 土壌採取の手引き)。水田は露地畑より浅めを指定する依頼先もあるため、必ず依頼先の案内に合わせてください。

果樹園は根の位置で採る

果樹園では、代表的な樹を選び、樹冠の先端から内側付近で複数か所採るのが一般的で、表土と下層土を分けて採取する方法も示されています(愛知県の資料)。施肥の位置と根の分布が畑作と違うため、同じ5点法をそのまま当てはめないよう注意します。

量と時期

  • 量: 混合後の分析試料として200〜300g程度を目安とする案内が多くあります(依頼先の指定を優先)。
  • 時期: 作物の収穫後、次作の耕起・施肥の前が基本です。施肥直後は肥料成分そのものを測ってしまいます。
  • 避ける場所: 畦際・出入り口・堆肥や石灰の置き場の跡・極端に生育の違う場所は、平均から外れるので外します。

なお、生育ムラが大きいほ場では「5点を混ぜた平均値」がどこにも当てはまらないことがあります。この点は後半の「点では取り逃す場面」で触れます。

手順3:乾燥と調製(風乾・2mmふるい)

採った土は、新聞紙などに広げて日陰で風乾し、土塊をほぐして2mm目のふるいに通してから提出するのが一般的です。東京都の案内でも、採取した土を日陰で乾かし、ふるいにかけてから採取袋に入れるよう求めています(東京都の土壌分析案内)。環境省の土壌環境基準の付表でも、試料は30℃を超えない温度で風乾し、非金属製の2mm目ふるいを通すことが前処理として定められています(環境省 土壌の汚染に係る環境基準 付表)。農業用の診断とは目的が異なる基準ですが、「低温で乾かし、2mmでそろえる」という考え方は共通です。

濡れたまま袋に詰めると、輸送中に微生物の働きで窒素などの値が変わることがあります。乾燥とふるいは、分析の精度を守るための工程だと考えてください。

手順4:分析の方法——外注か、現場で即日測るか

分析には大きく、外部機関への依頼と、測定器・キットによる自前測定があります。どちらが正しいということはなく、何を決めたいかで使い分けます。

方法

分かること

結果が出るまで

向いている場面

外部機関に依頼(JA・都道府県・民間)

pH・EC・可給態リン酸・交換性塩基・CEC・腐植など、診断基準と比べられる項目一式

依頼先によるが数週間程度が目安

次作の施肥設計、土づくりの年次計画

pH・EC測定器(自前)

pHとECを中心とした限られた項目

その場〜当日

作付け前の簡易確認、ハウスの塩類集積チェック

簡易キット(自前)

項目ごとの目安(色の比較による半定量が多い)

当日

経時変化の把握、外注結果の補完

センシング(分光・画像)

面としての分布・ばらつきの傾向(研究・実証の段階を含む)

撮影当日〜(解析次第)

ほ場内のムラの把握、採土地点の決め方の見直し

外部機関に依頼する場合の受付から結果までの期間は依頼先で異なり、たとえば全農とちぎは風乾試料の受付後、原則30日以内に診断するとしています(全農とちぎの土壌診断)。窓口別・項目別の費用の目安は 土壌分析の費用・価格の相場(外注と自前の比較)、キットで分かること・分からないことは 土壌診断キットで分かること・分からないこと に整理しています。

どれを選ぶかの判定チャート

  1. 次作の元肥・土壌改良資材の量を決めたい → 外部機関に依頼(基準と比べられる項目一式が必要)
  2. ハウスで塩類が溜まっていないか、作付け前にすぐ知りたい → EC・pH測定器で自前測定
  3. 同じほ場の変化を短い間隔で追いたい → キット・測定器で定点観測し、年1回程度は外注で校正
  4. 場所によって生育が違い、5点混合の平均値が実態に合わない → 区画を分けて採土するか、面で見るセンシングを検討

手順5:結果の読み方と処方

分析結果は、単体の数値ではなく地域・土壌の種類・作目ごとの診断基準と比べて読みます。基準値は全国一律ではなく、都道府県が施肥基準や土壌診断基準として定めています。農林水産省のサイトでは都道府県の施肥基準が一覧で公開されているので、まず自分の地域の基準を確認します(農林水産省 都道府県施肥基準等)。

項目

何の目安か

処方で決めること

pH

土の酸性・アルカリ性。養分の効きやすさに影響

石灰資材の要否と量

EC(電気伝導度)

水溶性の塩類(肥料成分)の総量の目安

元肥を減らすか、除塩が必要か

可給態リン酸

作物が利用できるリン酸の量

リン酸施肥の増減(過剰なら減肥)

交換性塩基(石灰・苦土・加里)

土に保持されている塩基類の量とバランス

苦土・加里の補給や減肥

CEC(陽イオン交換容量)

土が陽イオン(石灰・苦土・加里・アンモニア等)を保持できる最大量

一度に入れてよい肥料の量、塩基バランスの目標

CECやEC、各項目の基準値の考え方は沖縄県や埼玉県などの資料でも解説されています(埼玉県 土壌分析の資料)。CECと塩基バランスの見方を詳しく知りたい方は 土壌肥沃度とは(CEC・塩基バランスの見方と測定手法) も参考になります。

処方の基本は「足りないものを足す」だけでなく、過剰なものを減らすことです。リン酸や加里が基準上限を超えているほ場では、減肥することで肥料代を抑えられる場合があります。和歌山県の資料のように、CECと診断基準の上限値から加里の減肥量を算出する方法を示している例もあります(和歌山県 肥料節減に関する資料)。

よくある失敗と、点では取り逃す場面

  • 採土の深さが毎回違う: 年ごとの比較ができなくなります。同じ道具・同じ深さで採るよう手順を固定します。
  • ほ場ごとにラベルを付けない: 複数ほ場をまとめて採ると、どの結果がどこのものか分からなくなります。採土袋に、ほ場名・採取日・作目を書きます。
  • 数値を見て終わる: 処方に落とさない診断は費用だけがかかります。結果を受け取ったら、次作の施肥計画に反映するところまでを1セットにします。
  • ムラのあるほ場を1検体で済ませる: 5点混合は「ほ場の平均」を知る方法です。水はけや前作の違いで生育差が大きい場合は、区画を分けて採るほうが実態に合います。

この最後の問題——点で採った平均値では、ほ場内のばらつきが見えない——に対して、近年は分光や画像による「面で見る」センシングの研究が進んでいます。私たちの研究成果としても、ハイパースペクトル画像を用いた土壌の水分量の推定 を公開しています。ただし、面のセンシングは採土・化学分析を置き換えるものではなく、どこで採土すべきかを決める・ばらつきの傾向をつかむための補完として使うのが現実的です。作物側の生育ムラを見る方法とその限界は NDVIの限界と作物モニタリング で解説しています。

ハイパースペクトルカメラは、光を細かい波長に分けて撮影し、目では同じに見える違いを捉えるカメラです。仕組みと活用例は ハイパースペクトルカメラとは(仕組みと活用事例) にまとめています。

まとめ:土壌診断は「採土」と「処方」で決まる

  • 手順は、目的と時期を決める→採土→乾燥・調製→分析→結果を読んで処方、の5段階
  • 採土は対角線上の5か所から、表層を除いた作土を同じ深さで採り、混ぜて1検体にするのが基本
  • 風乾して2mmふるいに通し、依頼先の指定(量・袋・乾燥)に合わせて提出する
  • 施肥設計には外注分析、作付け前の簡易確認には測定器・キット、と目的で使い分ける
  • 結果は地域・作目の診断基準と比べ、足すだけでなく減らす処方まで落とす

私たちは国産ハイパースペクトルカメラ irodori を開発し、農業・食品・インフラ・医療などの現場とともに実証を重ねてきました(取り組みは 実績一覧 をご覧ください)。ほ場のばらつきを面で捉える方法に関心をお持ちでしたら、まずは資料だけでもご覧いただけたら嬉しいです。

FAQ

土壌診断の土はどこから採ればよいですか?

一般的には、ほ場の対角線上の交点と線上の計5か所から作土を採り、よく混ぜて1検体にします。畦際や出入り口、堆肥や石灰の置き場の跡など平均から外れる場所は避けます。果樹園では代表的な樹の樹冠の内側付近で採るなど、方法が異なります。

土壌診断の採土は何cmの深さで行いますか?

表面の土を除いてから作土層を均一に採るのが基本で、表面1cmを除いて10〜20cm程度とする案内や、表層3〜4cmを除いて一定の深さで採る案内があります。依頼先によって指定が異なるため、提出先の案内に合わせてください。

採った土はそのまま送ってよいですか?

多くの依頼先では、日陰で風乾し、土塊をほぐして2mm目のふるいに通してから提出するよう求めています。濡れたまま送ると輸送中に値が変わることがあるため、依頼先の指定に従って乾燥させてください。

土壌診断はいつ行うのがよいですか?

作物の収穫後、次作の耕起や施肥の前が基本です。施肥の直後に採ると、まいた肥料の成分を測ってしまい、診断になりません。

自分で測る方法と外注はどう使い分けますか?

次作の施肥量や土壌改良資材を決めるには、診断基準と比べられる項目一式が出る外部機関への依頼が向いています。作付け前の簡易確認や塩類集積のチェック、経時変化の把握にはpH・EC測定器やキットによる自前測定が向いています。

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