ペットボトル選別機は、色付きPET・PVC・キャップ残りといった「異材と色」を落としてベール品位を上げる装置です。本記事は5方式が落とせる不良を不良名で整理し、既存の近赤外(NIR)選別機が取りこぼす条件を判定チャートで切り分けます。
結論として、方式は「どの不良を落としたいか」で決まります。無色透明・単層・乾いたPETが主体なら近赤外(NIR)選別機と比重・風力選別の組み合わせで足りることが多く、分光(光を波長ごとに分けて測り、面全体のスペクトルを取る方法)が必要になるのは黒色部材・アルミ蒸着ラベル・水濡れ・微細片の重なりが混じる条件です。判断の土台になる公的な基準もはっきりしています。清涼飲料用ペットボトルの設計認定基準案では、指定PETボトルの自主設計ガイドラインの必須事項として「PET単体とすること」「着色はしないこと」「キャップは比重1.0未満のPEまたはPPを主材とすること」が挙げられ、あわせて再生材またはバイオマス素材を年間重量ベースで15%以上使用することが求められています(経済産業省「設計認定基準(案)~清涼飲料用ペットボトル容器~」令和6年10月)。つまりボトル本体に色や異材が出てくること自体が、設計側で想定されていない混入です。選別機の仕様は、この「想定外の混入」を何種類まで、どの粒度で落とすかで決まります。
ペットボトル選別機が落とす6つの不良|発注仕様は不良名で書く
見積が迷走する最大の原因は、依頼側が「純度を上げたい」という抽象語で相談してしまうことです。選別機のメーカーが見積を出せるのは、落としたい不良が名前で特定され、その混入率がわかったときだけです。まずは自社のベールやフレークで、次の6つのどれが問題になっているかを書き出してください。
不良名 | 何が問題になるか | 主な発生源 | 検出に効く原理 |
|---|---|---|---|
色付きPET(緑・茶・淡青) | 再生PETに色が残り、ボトルtoボトル用途に回せない | 旧規格容器・業務用容器・輸入品の混入 | 可視光(色彩選別) |
PVC混入(ボトル・シュリンクラベル) | 加熱工程で塩化水素が発生し、再生樹脂と設備を傷める | PETに外観がよく似た透明PVC容器、PVCラベル | 近赤外の吸収スペクトル |
PE/PPキャップ・リング残り | 比重1.0未満で本来は浮くが、圧着・貼り付きで残る | キャップ未分離、ベール圧縮時の噛み込み | 近赤外+比重・風力の併用 |
ラベル片・アルミ蒸着ラベル | 反射が強くスペクトルが崩れ、フレークに黒点として残る | アルミラミネート/蒸着ラベル、糊残り | 分光(面で撮る)+風力選別 |
PET以外の透明樹脂(PS・A-PET・PLA) | 目視と可視光では判別できず、再生品の物性を落とす | 食品トレー・カップ・惣菜容器の混入 | 近赤外の吸収スペクトル |
汚れ・残液・水濡れ | 水の吸収でスペクトルが埋もれ、判別率が落ちる | 未洗浄、雨天回収、屋外ヤード保管 | 前処理(洗浄・乾燥)+分光 |
このうち「色付きPET」と「PE/PPキャップ」は設計ガイドラインが想定している範囲の話ですが、PVCとPET以外の透明樹脂は可視光ではまず見分けがつきません。実際、容器リサイクルの分野では1990年代からPP・PE・PSの選別とPVC除去に近赤外吸収が使われてきました(河済博文「光学識別法を用いる次世代ソーティング機器の開発動向」廃棄物資源循環学会誌 Vol.29, No.2, pp.125-132, 2018)。逆に言えば、色だけで済む不良に高価な分光機を買う必要はありません。
手選別に頼り続けた場合の副作用も数字で出ています。環境省の実証事業では、ある自治体のプラスチック製容器包装の中間処理施設で、手選別工程において約40%が異物(不適合物や禁忌品)として除去され、独自に組成を調べたところその約30%は適合物相当だったと報告されています。汚れの付着の判断が作業員の主観になりやすく、処理速度を保つために周囲もまとめて除去してしまうことが要因として挙げられています(環境省「令和6年度プラスチック資源循環に関する先進的モデル形成支援事業」令和7年7月)。過剰除去は歩留まりの損失そのものなので、選別機の導入効果は「不良の除去率」だけでなく「取りすぎの削減」でも評価すべきです。
ペットボトル選別機の5方式比較|色彩・NIR・比重/風力・X線・分光
ペットボトルの選別に実際に使われている原理は5つに整理できます。方式は択一ではなく、工程のどこに置くかで役割が分かれます。
方式 | 測っているもの | 得意な不良 | 苦手・限界 | 置き場所の目安 |
|---|---|---|---|---|
色彩選別(可視RGBカメラ) | 反射光の色 | 色付きPET、濃色キャップ、明らかな異色物 | 無色透明どうしの樹脂違いは判別不可 | ベール解砕後の粗選別 |
近赤外(NIR)選別 | 少数波長の近赤外吸収(従来の検出器は900〜1,700nm、近年は2,500nm付近まで感度) | PVC除去、PE/PP、PS、A-PETなど樹脂種の分離 | 黒色・被覆・濡れ・重なりで信号が取れない | フレーク選別の主力 |
比重・風力選別 | 密度と空気抵抗 | 比重1.0未満のPE/PPキャップ、ラベル片、紙粉 | 貼り付き・圧着した異材は残る/樹脂種は分けられない | 洗浄・湿式比重分離の工程 |
X線透過選別 | 元素の透過率(重元素に感度) | 金属片、臭素系難燃剤を含む樹脂、タルクなどの充填材 | PET・PE・PPのような軽元素だけの樹脂種は区別できない | 危険物・金属の最終除去 |
分光(近赤外ハイパースペクトルイメージング) | 面の各画素で連続スペクトル | 微細片、重なりの一部、似た透明樹脂の分離、品位の数値記録 | 黒色部材は原理的に不可/初期費用と解析設計が必要 | 高品位ラインの仕上げ選別・品位検定 |
スループットの相場観も押さえておくと、既存ラインに載るかどうかの判断が早くなります。近赤外吸収方式では毎分200m以上のベルトコンベア速度で毎時1トン以上を処理できる装置が複数のメーカーから販売されています。またハイパースペクトルカメラの高性能機の仕様は、空間方向が300〜500画素、波長方向が200〜300画素、読み出し速度が毎秒200〜500画面で、1m幅のコンベアなら空間分解能2mm、スペクトル分解能5nm、進行方向6mm間隔でのデータ取得が見積もられています(前掲 河済 2018)。つまり分光は「遅いから使えない」技術ではなく、ラインの粒度に合うかどうかを画素数と読み出し速度から逆算できる技術です。
一方で、選別機の精度は光学識別だけで決まりません。ほとんどの装置は圧縮空気で吹き落とす二者択一方式なので、破砕片が重なっていると上面の判定結果で下の片も一緒に落ちます。そのため振動フィーダで広げる、回収した一方をもう一度かける「二度掛け」を前提にする、といった設計が要ります(前掲 河済 2018)。方式の議論より前に、供給の均し方と二度掛けの余地を確認してください。方式ごとの一般的な整理は廃棄物の選別自動化6方式の比較と材質判別の限界にまとめています。
分光が要る条件・要らない条件|NIR選別機の取りこぼしで判定する
ここが検討の分岐点です。近赤外選別機は成熟した技術で、条件が合えば分光を足す必要はありません。判定は「NIRが信号を取れない条件がいくつあるか」で行います。
分光を足さなくてよい条件
- 対象が無色透明PET主体で、落としたい異材が2〜3種類に限定されている
- フレーク片が10mm以上で、振動フィーダで単層に広げられている
- 洗浄・乾燥の工程が前段にあり、含水が管理されている
- 黒色・濃色の部材(黒キャップ、黒ラベル、カーボンブラック入り部材)が事前に除かれている
- 品位を「数値の記録」として残す必要がなく、抜き取り検査で足りる
分光の検討に進むべき条件
近赤外法の弱点は原理から説明できます。近赤外は表面の反射光を測るため、塗装や被覆があると内部の樹脂を識別できません。カーボンブラックなどの顔料を使った黒色プラスチックは可視領域から2.5μmまでの光をほとんど反射しないため、そもそも信号が得られません。さらに1,300nm以上の波長には水の大きな吸収があるため、濡れていると識別が困難になります(前掲 河済 2018)。この3つが、現場で「カタログ値どおりに出ない」原因の大半です。
- 微細片と重なりが多い:5mm前後の片や重なりが残るラインでは、点計測より面で撮る分光のほうが取りこぼしが減ります
- 似た透明樹脂を分けたい:PET・A-PET・PS・PLAのように可視光で区別できない樹脂を同時に分ける
- アルミ蒸着・金属ラミネートのラベル片が混じる:強い反射でスペクトルが崩れる部位を面で特定する
- 品位を数値で示す必要がある:納入先や認定制度に対し、異材混入率をスペクトルの記録として残す
- 混入する異材の種類が今後増える見込み:波長を後から選び直せるかどうかで将来の作り直しが変わります
正直に書くと、黒色部材は分光を入れても解決しません。近赤外ハイパースペクトルでも反射光が返らないため同じ壁に当たります。この領域には中赤外(3〜5μm)のハイパースペクトルカメラを使う方法があり、2017年に国内で使われるようになった事例が報告されています(前掲 河済 2018)。黒色が主要な課題なら、近赤外の議論から切り離して検討したほうが早く、詳細はプラスチック選別機の選定4軸と黒色樹脂の壁を参照してください。破砕・風選・磁力など前後の工程まで含めた組み方は混合廃棄物の選別機を工程で選ぶ考え方が近い話になります。
なお「何波長を、どれだけの分解能で見るか」を決めるところが分光の設計です。原理の全体像はハイパースペクトルカメラの仕組みと原理の解説にまとめており、装置の仕様はirodori の製品ページで公開しています。
プラ新法と改正資源法で変わる品位要件|2026年4月施行分まで
ペットボトルの選別品位は、この数年で「現場の努力」から「制度の要件」に近づいています。プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)は令和3年6月11日に公布され、令和4年4月1日に施行されました。設計から廃棄物の処理までのすべての主体に資源循環の取組を促し、環境配慮設計の指針に適合した製品を国が認定・率先調達する仕組みが置かれています(環境省「プラスチック資源循環法関連」)。
さらに2025年に改正された資源有効利用促進法(改正資源法)が令和8年4月1日に施行されました。再生材の利用義務を課す「指定脱炭素化再生資源利用促進製品」の第一弾として、対象製品に自動車・家電4品目・容器包装、対象素材に再生プラスチックが指定され、令和9年度から再生材利用に関する計画の提出、令和10年度から定期報告が始まる予定です(環境省「改正資源有効利用促進法の施行に向けた関係法令の整備について」令和8年3月)。再生材を「使う側」に報告義務が生じるということは、再生材を「作る側」に品位の説明責任が回ってくるということです。
数字で見ると、この圧力の大きさがわかります。ペットボトルのボトルtoボトル(水平リサイクル)比率は2010年度の3.3%から2023年度に33.7%まで伸び、全国清涼飲料連合会は2030年に50%以上を目標に掲げています。ただし50%の達成には約32万トンの再生PETが必要と試算され、業界からは「事業系ベールの回収品質を向上するための支援策」が要望として挙げられています(経済産業省 業界ヒアリング資料(全国清涼飲料連合会・PETボトルリサイクル推進協議会)2025年7月)。選別機の投資判断は、この「品位が足りず水平リサイクルに回せない量」をどれだけ減らせるかで評価するのが実態に合っています。
参考として、家電の水平リサイクルでは99%以上の純度で単一素材を選別回収する必要があるとされており(前掲 河済 2018)、ボトルtoボトルも同じ方向の要求水準です。「混ざっていないこと」を示す手段を持っているかどうかが、取引条件の差になります。
発注前チェックリストと実証(PoC)の進め方
選別機の見積は、次の情報がそろうと一気に精度が上がります。逆にこれが埋まらないまま相談すると、メーカー側は最大構成で見積るしかなく、金額が実態より膨らみます。
発注前チェックリスト(10項目)
- 処理対象:ベールか、破砕フレークか、ボトル丸のままか
- 目標処理量:毎時トン数と稼働時間、ピーク時の変動幅
- ライン条件:コンベア幅、搬送速度、単層に広げられるか(振動フィーダの有無)
- 落としたい不良:上記6分類のどれか、それぞれの現状混入率(重量%か個数%かを明記)
- 目標品位:納入先が求める異材混入率と、その測り方(抜き取り検査か全量記録か)
- 色の条件:色付きPETの比率、黒色部材が含まれるか
- 含水条件:洗浄・乾燥の有無、屋外保管の有無、雨天時の含水差
- 片のサイズ分布:最小片の寸法と、5mm以下の比率
- 二度掛けの余地:排出側をもう一度かけられるスペースと電力があるか
- 記録要件:品位のデータをどの形式で、どれだけの期間残す必要があるか
実証(PoC)の5ステップ
- サンプル設計:良品だけでなく、落としたい不良を不良名ごとに一定数そろえる。季節・天候・仕入元でスペクトルが変わるため、条件の異なるロットを2〜3種類混ぜる
- 分離可能性の確認(ベンチ計測):静止状態で分光計測し、目的の不良が波長のどこで分かれるかを確認する。ここで分かれない不良は、ライン速度を落としても分かれません
- 成功基準と撤退基準の明文化:検出率・過検出率・処理量の3つを数値で決める。「過検出率が◯%を超えたら撤退」まで先に書いておく
- ライン条件での実測:実際の搬送速度・照明・重なりの条件で撮り、ベンチとの差分を測る。差の大きさが、前処理(広げる・乾かす)に投資すべき量を教えてくれます
- 運用設計:誰がモデルを更新するか、仕入元が変わったときの再学習手順、品位データの保存先を決める
PoCの立て方そのものはPoCの進め方6ステップと撤退基準の決め方に詳しく書いています。相談先の区分けで迷う場合はリサイクル向け選別機の相談先4区分が役に立つはずです。
使える補助金・助成金(2026年9月時点の公募状況)
選別設備は補助事業の対象になり得ますが、公募は年度内に複数回に分かれ、締切が短いものが多いです。2026年9月時点で確認できる状況を整理します。採択の見込みや金額は事業内容と審査次第なので、ここでは制度の枠と直近の公募実績だけを挙げます。
制度 | 枠の性格 | 直近で確認できた公募 |
|---|---|---|
二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(プラスチック資源・金属資源等のバリューチェーン脱炭素化のための高度化設備導入等促進事業) | 省CO2型プラスチック高度リサイクル設備、金属破砕・選別設備などの導入費に1/2を上限に補助。執行団体は公益財団法人廃棄物・3R研究財団 | 令和8年度3次公募(令和7年度補正4次公募と併行)が令和8年8月25日〜9月25日12:00必着で実施(環境省 報道発表)。受付は終了 |
脱炭素型循環経済システム構築促進事業(プラスチック等資源循環システム構築実証事業) | リサイクル困難なプラスチックのリサイクルプロセス構築などの実証に、設備費・業務費等を1/3または1/2を上限に補助。執行団体は一般社団法人日本有機資源協会 | 令和8年度3次公募が令和8年8月7日〜9月15日で実施(環境省 報道発表)。受付は終了 |
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金) | 中小企業の革新的な設備投資を支援する汎用枠。検査・選別装置の導入に使われる例がある | 第23次公募は申請締切が2026年5月8日、採択発表が2026年8月7日(公式サイト スケジュール)。次回公募は本稿執筆時点で未公表 |
いずれも年度ごとに要件と枠が見直されます。公募時期・要件・補助率は必ず公式サイトで最新情報を確認してください。設備の発注時期を補助金の交付決定より前にすると対象外になる制度もあるため、導入スケジュールは公募要領を読んでから引くのが安全です。
私たちは国産ハイパースペクトルカメラ irodori を開発しています。分光がベール品位の改善に効くのか、それとも前処理や別原理の話なのかは、対象物を見せていただかないと私たちにも判断できません。irodori の導入が補助金の対象になり得るかも含めて、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ|落としたい不良名から逆算する
ペットボトル選別機の検討は、方式のカタログ比較から始めると必ず迷います。色付きPET・PVC・キャップ残り・ラベル片・PET以外の透明樹脂・汚れという6つの不良のうち、自社で問題になっているものを名前と混入率で書き出すことが最初の一歩です。そのうえで、黒色・被覆・濡れ・重なりという近赤外の弱点に自社の条件がいくつ当たるかを数え、当たらなければNIRと比重・風力で組み、当たるなら分光や別原理を検討する。この順番なら、過剰な仕様にも不足した仕様にもなりにくいはずです。
制度の側も、改正資源法の施行で「再生材を使う側の報告義務」が始まりました。品位を数値で説明できる体制は、これから取引条件そのものになっていきます。手持ちの樹脂判別機で足りるかを先に確かめたい場合は、樹脂判別ハンディセンサーの価格と見積の変数から入るのも現実的な進め方です。
記事の最後に恐縮ですが、もし「どの不良までなら分光で分けられるのか」で迷っていらっしゃるなら、判定の考え方をまとめた資料をご用意しています。営業のご連絡が目的ではありませんので、社内の検討メモとしてご覧いただけたら嬉しいです。




