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混合廃棄物の選別機は工程で選ぶ|6方式の比較と選別フロー設計【2026】

混合廃棄物の選別機は、単体の性能ではなく「工程の並べ方」で成果が決まります。この記事を読むと、手選別から光学選別まで6方式の得手不得手を押さえたうえで、自社の投入物に合う選別フローを自分で設計できるようになります。

結論から書きます。混合廃棄物の選別は、1台の高性能な機械で解く問題ではなく、粒度・磁性・導電性・比重・光学特性という「分ける物差し」を何段に並べるかという設計問題です。物差しが1つしかない工程は、同じ物差しで区別できない資材の前で必ず止まります。

ここでいう混合廃棄物とは、木くず・がれき類・廃プラスチック類・金属くず・紙くず・廃石膏ボードなどが分別されないまま混ざった状態の廃棄物を指します。選別工程の目的は、これを単品の廃棄物に戻し、再資源化できるものを抜き、最終処分に回す量を減らすことにあります。

まず前提:混合廃棄物には何が混ざっていて、なぜ分別が要るのか

建設混合廃棄物の中身は「工事の種類」で変わる

混合廃棄物という一語で括られますが、中身は工事の種類でまったく違います。国土交通省の建設副産物実態調査では、建設副産物の搬出品目としてコンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、建設発生木材、建設汚泥、金属くず、紙くず、廃プラスチック類、廃塩化ビニル管・継手、廃石膏ボード、そして建設混合廃棄物が区分されています(国土交通省「令和6年度建設副産物実態調査」資料4)。選別ラインの設計は、この品目のうちどれが、どの粒度で、どれだけ入ってくるかを掴むところから始まります。

同じ国土交通省の審議会資料には、混合廃棄物の組成比率が示されています。関東建設廃棄物協同組合の調査を引用する形で、新築系混合廃棄物のリサイクル困難物が49.3%、解体系混合廃棄物が42.5%、解体残さ(下ゴミ)が69%と整理されています(国土交通省「建設混合廃棄物の現状等について」、重量ベース)。新築系と解体系で難所が違うという前提を、まず共有しておきたいところです。

同資料では、平成30年度の建設混合廃棄物の排出量は2,284千トンで、工事区分の内訳は建築工事82%・土木工事18%とされています。分別解体が義務づけられた建設リサイクル法の施行以降、排出量自体は減少傾向にあります。ただし現場分別が進むほど、中間処理施設に残るのは複合材などリサイクルが難しいものになる、という構造も同時に指摘されています。

分別が要る理由は「再資源化率」「処分費」「法令」の三つ

分別を進める理由は、きれいごとではなく数字と規制に紐づきます。環境省が2026年3月27日に公表した令和5年度実績では、産業廃棄物の総排出量は3億6,725万トン、うち54.7%にあたる約2億79万トンが再生利用され、最終処分は2.4%(875万トン)でした。建設業は排出量の21.8%を占め、排出業種の上位に入っています(環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等(令和5年度実績)について」)。

建設廃棄物全体で見ると、再資源化・縮減率は2018年度実績で97.2%と高い水準です。一方で建設混合廃棄物は「排出率」という別の指標で管理されており、2018年度実績3.1%に対し2024年度の達成基準は3.0%以下と設定されています(前掲・国土交通省 資料4)。なお現時点で公表されている実績値は平成30年度調査のもので、令和6年度調査の結果はこれから取りまとめられる段階です。数値を引用する際は年度を確認してください。

法令面では、建設リサイクル法が一定規模以上の工事に分別解体等と再資源化等を義務づけています。対象となる特定建設資材はコンクリート(プレキャスト板等を含む)、アスファルト・コンクリート、木材で、規模基準は建築物の解体工事が床面積80㎡以上、新築または増築の工事が床面積500㎡以上、修繕・模様替え等の工事が請負代金1億円以上、建築物以外の工作物の解体工事や新築工事等が請負代金500万円以上とされています(環境省「建設リサイクル法の概要」)。

処分側の制約も選別設計を縛ります。たとえば廃石膏ボードは、付着した紙を除去したものであっても安定型最終処分場に埋め立てられません。含まれる糖類が硫化水素の産生に寄与し、高濃度の硫化水素が発生するおそれがあるためです(環境省「廃石膏ボードから付着している紙を除去したものの取扱いについて」平成18年6月1日付通知)。石膏ボードを抜けるか否かが、そのまま処分ルートと処分費を左右します。

選別方式6分類を比較する|「何で分けるか」が違う

選別機を比べるとき、処理能力や価格の前に確認すべきはその機械が何という物理量で分けているかです。物差しが同じ機械を2台並べても、選別性能はほとんど上がりません。主要な6方式を、分ける原理で整理します。

方式

何で分けるか

得意

苦手

向く規模・位置づけ

手選別

人の目と手(形・色・質感・重さの総合判断)

異形物・長尺物・危険物の抜き取り、少量多品種、例外対応

連続大量処理、微細物、粉じん・高温など作業環境の負荷

全規模。粗選別と最終仕上げの両端に残りやすい

振動ふるい・トロンメル

粒度(ふるい目を通るか通らないか)

土砂・細粒分の分離、後段機器への供給サイズを揃える

材質は一切区別しない。長尺物・柔軟物の目詰まり

全規模。ほぼ全ラインの前処理として必須級

磁力選別(磁選機)

強磁性(鉄が磁石に引かれる性質)

鉄くず・鉄筋片の高い回収率、低コスト・低故障

アルミ・ステンレス・銅などの非鉄、他材と絡んだ鉄

全規模。破砕直後に置く定番工程

渦電流選別

渦電流(強い交番磁界で非鉄金属内に発生する電流の反発力)

アルミ・銅など非鉄金属の回収

微細片、扁平でない形状、水分や付着物による搬送不良

中〜大規模。磁選の後段に置く

風力・比重選別

質量と空気抵抗の比(重いもの/軽いもの)

フィルム・紙・発泡材など軽量物の抜き取り、土砂との分離

濡れて重くなった軽量物、比重が近い素材同士

中〜大規模。粒度を揃えた後でないと精度が出ない

光学選別(近赤外・カラー・AI画像)

反射光のスペクトルや色・形(材質そのもの)

樹脂の種類分け、木・紙・石膏の区別、品位の作り込み

黒色樹脂、汚れ・塗装・被覆、濡れ、破砕片の重なり

中〜大規模。仕上げ工程として効く

表を横に読むと、各方式が互いの苦手を埋め合う関係にあることが見えてきます。磁選は非鉄を取れませんが渦電流が取り、風力は材質を見ませんが光学が見る、という具合です。なお材質判別そのものの技術比較については、廃棄物の選別自動化6方式と材質判別の限界を整理した記事で詳しく扱っているので、方式ごとの原理を深掘りしたい場合はそちらを参照してください。

選別フロー設計フレーム|「どの順に並べるか」で歩留まりが変わる

ここからが本題です。同じ機械を持っていても、並べる順序を変えるだけで回収量と手選別の負荷は変わります。順序を決める原則は一つ、安く確実に減らせるものから先に減らし、高価で繊細な工程には少量のきれいな流れだけを送ることです。

基本形は5段階

段

工程

この段の役割

この段を飛ばすと起きること

1

粗選別(手選別・重機・粗破砕)

長尺物・大塊・危険物・有価の大物を抜く

後段の機械に詰まり・巻き付き・破損が発生する

2

粒度選別(振動ふるい・トロンメル)

土砂・細粒分を落とし、後段へ送るサイズを揃える

後段のすべての選別精度が落ちる。細粒が全工程を汚す

3

磁力選別

鉄を抜く(最も安価で確実な物差し)

鉄が後段機器を傷め、光学選別の誤判定要因になる

4

風力・比重選別/渦電流選別

軽量物と非鉄金属を抜き、残りを均質にする

光学選別に多量の対象外が流れ、処理能力を食い潰す

5

光学選別(仕上げ)

材質・品位を作り込み、売れる単品に整える

手選別の人員で品位を担保することになり、コストが跳ねる

順序の背後にある考え方はシンプルです。1段目から4段目までは「量を減らす工程」、5段目だけが「品位を作る工程」です。品位を作る工程に大量の未整理物を流すのは、面接に全応募者を通すようなもので、能力がいくらあっても足りません。

基本形が崩れる3つのケース

この基本形は万能ではありません。投入物の性状によっては、順序を入れ替えるか、段を足す必要があります。正直に書けば、次の3ケースは基本形のままでは成立しにくいと考えています。

  • 雨天後・屋外ヤード由来で濡れている:水分は比重選別と光学選別の両方を同時に狂わせます。軽量物が重くなって風力で飛ばず、水の吸収で材質判別も鈍ります。乾燥工程を挟むか、濡れた日のロットは別ルートに回す運用判断が要ります。
  • 解体残さ中心で細粒・複合材が多い:前掲の国土交通省資料でも、解体残さは埋立依存率が高いとされています。細かく複合化したものは、どの物差しでも分かれません。この場合は選別を厚くするより、発生源である現場分別を先に設計し直すほうが効きます。
  • 石膏ボードや塩ビ管を確実に抜きたい:処分ルートが分かれる品目は、混ざってから探すより、粗選別の段階で狙って抜くほうが確実です。順序としては前倒しになります。

設計を決める前に答えたい5つの問い

選別フローを引く前に、次の5問に数字で答えられるかを確認すると、無駄な設備投資を避けやすくなります。答えが出ない問いがあれば、その部分は実測から始めたほうが安全です。

  1. 投入物の品目構成は、新築系・解体系・修繕系のどれが主体か。季節や元請で変動するか。
  2. 抜きたい品目の優先順位は何か(売れるから抜くのか、処分費が高いから抜くのか)。
  3. 粒度分布はどうなっているか。ふるい下に落ちる細粒分は重量比で何割か。
  4. 濡れ・汚れ・付着土砂はどの程度か。雨天時にどう変わるか。
  5. 出口の受入先が求める品位はどこまでか。純度何%で売れるのか。

5問目が最も見落とされます。出口が求める品位より高い精度を目指すと、設備費も運転費も過剰になります。逆に出口の要求が厳しい場合は、選別を増やすより出口を変えたほうが早いこともあります。

光学選別の限界を正直に書く|近赤外で見えないもの

光学選別は仕上げ工程として強力ですが、万能ではありません。近赤外(NIR=波長およそ800nm〜2.5μmの、目に見えない赤外線のうち可視光に近い領域)を使う識別には、はっきりした弱点があります。

黒色樹脂・被覆・濡れ・重なり

近赤外吸収法の弱点は、学術文献に明確に整理されています。カーボンブラック等の顔料を使った黒色プラスチックでは、可視領域から2.5μmまでの近赤外領域の光をほとんど反射しないため信号が得られないこと、表面の反射光を測るため塗装や被覆があると内部の材質を識別できないこと、1,300nm以上の波長に水の大きな吸収があるため濡れていると識別が困難になることが指摘されています(河済博文「光学識別法を用いる次世代ソーティング機器の開発動向」廃棄物資源循環学会誌 Vol.29, No.2, pp.125-132, 2018)。

もう一つ、現場で効いてくるのが破砕片の重なりです。同文献では、ソーティング機器の選別精度が光学識別だけでなく破砕片の重なりや吹き落としの精度にも依存するため、二者択一で回収した一方を再度かける「二度掛け」も行われると述べられています。つまり光学選別の精度は、カメラの性能だけでなくその手前でどれだけ薄く均一に流せているかに強く左右されます。前段の粒度選別と風力選別が効いてくる理由がここにあります。

黒色樹脂の壁は、混合廃棄物に限らずプラスチック選別全般に共通する論点です。再生材の品位から逆算して装置を選ぶ考え方は、プラスチック選別機の選定4軸と黒色樹脂の壁を扱った記事に整理しています。

分光なら何が変わるか:見る波長を現場ごとに選べる

ここで「分光」という考え方が出てきます。分光とは、光を波長ごとに分けて強度を測ることです。一般的な光学選別機が数個の決まった波長帯で判定するのに対し、波長を連続的に捉えれば、判定に使う波長をその現場の投入物に合わせて後から選び直せます。

これは魔法ではありません。黒色樹脂が近赤外域で反射しないという物理は、分光でも変わりません。変わるのは「この現場の木くずと石膏ボードは、どの波長で最もよく分かれるか」を実測してから決められるという点です。汎用の判定ロジックで分かれなかった組み合わせが、波長を選び直すと分かれることがあります。逆に、何を試しても分かれない組み合わせもあります。それは実際に測ってみないと分かりません。

私たちはこれまで、食品・農業・インフラ・医療などの現場とともに、ハイパースペクトルカメラの実証を重ねてきました。分野ごとの取り組みは実績一覧にまとめています。廃棄物選別の分野でも、まずは現物を測って「分かれるか分かれないか」を確かめるところから始めるのが確実だと考えています。うまくいかない場合はその旨をそのままお伝えします。

まとめ|機械を選ぶ前に、工程を描く

混合廃棄物の選別機を検討するとき、最初にやるべきはカタログ比較ではなく、自社の投入物に対して「どの物差しを何段、どの順に並べるか」を紙に描くことです。描いてみると、必要なのが新しい機械なのか、既存工程の順序変更なのか、それとも現場分別の見直しなのかが分かれてきます。

そのうえで機械が必要だと判断したら、相談先の種類を整理するのが次の一歩です。メーカーの得意分野は方式ごとに分かれるため、リサイクル向け選別機メーカーの相談先を4区分で整理した記事が役に立つはずです。

なお、当社が扱うハイパースペクトルカメラ irodori の製品情報は、選別機そのものではなく「見る」部分を担うセンサーです。装置全体の話は、事業の全体像として宇宙技術由来のハイパースペクトルカメラで現場の見えないものを可視化する取り組みのページにまとめています。

判断材料として、方式の比較や実証の進め方をまとめた資料をご用意しています。検討の初期段階で社内共有する用途を想定した内容です。必要でなければ読み飛ばしていただいて構いません。

よくある質問

混合廃棄物の選別機は1台だけ導入すれば足りますか?

多くの場合は足りません。選別は粒度・磁性・導電性・比重・光学特性といった異なる物差しを段階的に重ねる工程です。物差しが1つしかない工程は、その物差しで区別できない資材の前で止まります。まずは何を何段並べるかを描くことをおすすめします。

選別工程はどの順に並べるのが基本ですか?

粗選別、粒度選別、磁力選別、風力・比重選別と渦電流選別、光学選別による仕上げ、という5段階が基本形です。安く確実に量を減らせる工程を先に置き、品位を作る光学選別には少量の整った流れだけを送る考え方です。ただし濡れが多い場合や解体残さ中心の場合は、この順序が崩れます。

近赤外の光学選別で黒色の樹脂が分けられないのはなぜですか?

カーボンブラック等の顔料を使った黒色プラスチックは、可視領域から2.5マイクロメートルまでの近赤外領域の光をほとんど反射しないため、識別に必要な信号が得られないためです。学術文献でも近赤外法の弱点として指摘されています。

廃棄物が濡れていると選別精度は落ちますか?

落ちます。1,300ナノメートル以上の波長には水の大きな吸収があるため、濡れていると近赤外での材質識別が困難になります。加えて、濡れて重くなった軽量物は風力選別でも飛びにくくなります。雨天後のロットは別扱いにするなどの運用判断が要ります。

廃石膏ボードはなぜ選別で確実に抜く必要があるのですか?

紙を除去したものであっても安定型最終処分場には埋め立てられないためです。含まれる糖類が硫化水素の産生に寄与し、高濃度の硫化水素が発生するおそれがあると環境省の通知で示されています。処分ルートが分かれる品目は、粗選別の段階で狙って抜くほうが確実です。

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