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非破壊糖度計の価格を比較|ハンディ・据置・ライン組込の費用差【2026】

非破壊糖度計の価格は、品目専用のハンディ機なら約10万〜17万円台で公表されている一方、選果ラインへの組込になると公表価格が存在しない見積案件になります。この記事では、価格差が生まれる理由と、見積を取る前に決めておくべき選定軸を整理します。

結論から言えば、非破壊糖度計の価格は「どのタイプを選ぶか」でほぼ決まります。手で持って1個ずつ測る品目専用のハンディ機は、メーカー公式通販で税込99,000円〜167,200円が実際に掲載されています(株式会社アタゴ「アタゴショップ」PAL-光センサー 検索結果/2026年8月時点)。一方、卓上型・選果機組込型は各社とも価格を公表しておらず、仕様と処理量に応じた個別見積になります。つまり「相場を調べる」のではなく「自分の要件をタイプに翻訳する」ことが、価格を知る唯一の近道です。

なお、NIR(近赤外)・ハイパースペクトル・音響式といった測定手法そのものの原理と使い分けは別記事にまとめています。手法から比較したい方は果物の糖度を非破壊で測る4手法を先にご覧ください。本記事は価格・機種選定に振り切って解説します。

非破壊糖度計の価格帯|タイプ別に「桁」が変わる

非破壊糖度計は、形状によって想定される処理量が違い、その処理量が価格の桁を決めます。1日に数十個を測るのか、1時間に数千個を測るのかで、必要な光源出力・搬送機構・データ処理の規模がまったく変わるためです。まずは自分がどのタイプの話をしているのかを確定させてください。

タイプ

価格の分かり方

向く使い方

注意点

ハンディ(携帯型)

公表価格あり。品目専用機で税込99,000円〜167,200円の掲載例(アタゴ公式通販/2026年8月時点)

収穫適期の判断、圃場でのサンプリング、仕入れ検品

1品目1機種の専用機が基本。品目が増えると台数も増える

卓上・据置(可搬含む)

公表価格なし。カタログ請求・見積

選果前のサンプル評価、試験場・研究、少量ロットの全数評価

測定項目(糖度/酸度/内部障害)追加でオプション費が乗る

ライン組込(選果機一体)

公表価格なし。ライン仕様込みの個別見積

選果場での全数選別、等級の自動仕分け

本体単体では価格が決まらない。搬送・制御・据付・改修が主要因

レンタル・実証利用

メーカーによりレンタル制度あり(例:千代田電子工業「おいし果」はCD-H100等でレンタル対応)

収穫期だけ使いたい/購入前に自分の品目で試したい

期間・機種が限定される。繁忙期は空きが読めない

ここで押さえておきたいのは、ハンディ機の「安さ」は専用機であることの裏返しだという点です。たとえばアタゴのPAL-光センサーは、みかん・レモン・ぶどう・いちご・りんご・メロン・大玉トマトなど品目ごとに型番が分かれています。3品目を扱う産地が全部を1台で賄おうとすると、そもそも設計思想が合いません。

ライン組込(選果機 糖度センサー)の見積が読みにくい理由

選果機の糖度センサーは、センサー単体ではなく「ラインの一部」として値段が決まります。搬送速度に合わせた光学系、既存コンベアとの接続、仕分け先の増設、制御盤や電源工事、繁忙期を避けた据付スケジュールまでが見積に含まれるためです。同じセンサーでも、既設ラインへの後付けか新設かで金額は大きく動きます。

選果ライン全体の自動化を検討している場合は、糖度だけでなく外観・形状・内部障害を含めた工程設計から考えたほうが結果的に安く収まることがあります。工程側の論点は青果の選別機を自動化する5方式で整理しています。

本体価格より効く|非破壊糖度計のランニングコスト3項目

非破壊糖度計で見積の読み違いが起きやすいのは、本体ではなく運用側です。初期費用は一度きりですが、以下の3項目は毎シーズン発生します。導入後3年・5年で見たときの総額を左右するのはこちらです。

項目

何が発生するか

見積時に確認すること

光源・消耗部品

ハロゲン等のランプ光源は寿命がある。クボタは「フルーツセレクター」のランプ光源について寿命約2,000時間、シーズン前メンテナンスを案内している(クボタ公式製品ページ

ランプ・電池・受光部の交換周期と単価、シーズン前点検の要否

校正・点検

基準体による日常チェック、メーカー点検、破壊法(屈折計)との突き合わせ作業の人件費

点検の頻度・費用、繁忙期の対応スピード、代替機の有無

検量線の更新

品種追加・産地変更・年次変動に合わせた検量線の作り直し。サンプル収集と実測の手間が実質コスト

検量線更新が有償か、自前で作れるか、必要サンプル数

糖度計の検量線は「一度作って終わり」ではない

非破壊糖度計は糖度そのものを直接測っているわけではなく、光の吸収パターンから糖度を推定しています。その変換式が検量線です。近赤外分光法による果実測定の総説では、品種・産地・栽培時期・収穫年次・熟度の違い、試料温度の変動、果実成分の不均一性が測定精度に影響すると整理され、検量線作成時には将来測る試料がもつ変動を含むサンプルを使う必要があるとされています(藤原孝之「近赤外分光法による果実類の糖および酸の測定とその問題点」日本食品工学会誌 5巻2号 51-62、2004年/J-STAGE)。

実務的には、これが「導入初年度に精度が出ない」最大の原因になります。新品種を入れた年、産地を広げた年、極端な天候だった年に、去年までの検量線がずれる。ここを誰が・いくらで直すのかを契約前に決めていないと、装置は動くのに現場が使わなくなります。メーカーによっては自前で検量線を作成できるオプションソフトを用意しており(前掲・おいし果)、自社で品種追加が多い産地では検討する価値があります。

どこまでの精度なら実用か

精度は「±何度」と一律に言えるものではなく、品目と検量線の作り方で変わります。参考として、イチゴ(章姫・さちのか・紅ほっぺ)を700〜925nmで測定した研究では、可溶性固形物含量でR²=0.86、SEP=0.9%という値が報告されています(西沢隆ほか「近赤外分光法によるイチゴ果実糖組成の非破壊測定」日本食品科学工学会誌 56巻4号 229、2009年/J-STAGE)。等級を1度刻みで分けたいのか、2度刻みでよいのかによって、必要な機種も価格も変わります。

失敗しない選定軸5つ|見積依頼の前に決めること

見積を取る前に、以下の5点を紙に書き出してください。ここが曖昧なまま複数社に問い合わせると、返ってくる金額の比較ができません。

  1. 品目と品種:専用機か汎用機か、将来の品種追加があるかまで含めて決める。
  2. 必要な等級刻み:糖度1度刻みで値付けするのか、単に「基準以上/未満」を分けたいのか。
  3. 処理量:1日あたりの個数と、繁忙期のピーク。ここでハンディ/卓上/ライン組込が確定します。
  4. 検量線の持ち主:メーカー提供のみか、自前で作れるか。更新費用は誰が持つか。
  5. 測りたい項目は糖度だけか:酸度・熟度・内部障害・水分まで欲しいなら、機種の選択肢が絞られます。

4番目と5番目は特に見落とされます。糖度だけを1点で測ればよいなら、フィルタ式やLED光源の安価な専用機で十分です。逆に「糖度も内部障害も、まだ何を見れば判別できるか分からない」という段階では、専用機を買っても要件に合わない可能性があります。

費用が変わる要因の整理

要因

費用が上がる方向

費用が抑えられる方向

測定対象

皮が厚い・大玉(メロン、スイカ等)で透過光量を確保する必要がある

小果実・薄皮で反射方式が使える

処理量

ライン全数・高速搬送

抜き取りサンプリング

測定項目

糖度+酸度+熟度+内部障害

糖度のみ

設置形態

既設ラインへの後付け、電源・制御工事を伴う

可搬・卓上で工事不要

検量線

品種が多く毎年更新が必要

単一品種・産地で安定

稼働期間

通年稼働で保守契約が必要

収穫期のみ(レンタルも選択肢)

品目別に見る「そのまま買うと外す」ポイント

かんきつ・りんご・和梨

選果場での導入実績が長く、専用ハンディ機も揃っている領域です。価格が読みやすい反面、品種更新のスピードが速い品目でもあるため、検量線の更新体制を確認してから発注してください。

メロン・スイカなど大玉果実

果肉まで光を届かせる必要があるため、小果実用の機種は流用できません。アタゴのラインナップでもメロン用・大玉すいか用は他品目より高い価格帯(税込165,000〜167,200円)に設定されています。大玉対応を明記した機種を選んでください。

いちご・ぶどう・ミニトマト

1個が小さく、1個あたりの単価に対して測定コストが相対的に重くなります。全数測定ではなく、房・パック単位のサンプリング運用にしたほうが費用対効果が合うケースが多い領域です。ぶどうのように形状の都合で近赤外法が使いにくい品目もあり、農研機構は音響式体積計を利用した糖度の非破壊推定も報告しています(農研機構 研究成果情報)。

糖度以外もまとめて見たい場合

糖度だけでなく「食味」まで踏み込む研究も進んでいます。農研機構は2021年6月28日、可搬型光センサーをベースに近赤外光(700〜2500nm)とAIを組み合わせ、トマトの甘味・うま味やジューシー感などを非破壊で推定する技術を発表しました(農研機構プレスリリース)。ただしこれは特定品目での実証であり、そのまま他品目に適用できるものではありません。

ハイパースペクトルカメラは高い|使うべき場面と、やめたほうがいい場面

私たちはハイパースペクトルカメラを開発している立場ですが、「糖度を1点測りたいだけ」ならハイパースペクトルカメラは明確にオーバースペックです。単一品目の糖度判定であれば、10万円台の専用ハンディ機のほうが速く、安く、現場で回ります。ここを正直に申し上げないと、導入後にお互い不幸になります。

ハイパースペクトルカメラが効くのは、次のような場面に限られます。

  • 使う波長がまだ決まっていない:どの波長を見れば判別できるのかを、数百バンドの連続スペクトルから探索する段階。
  • 糖度以外の項目を同時に見たい:内部障害・水分・熟度・傷みなど、複数の品質項目を1回の撮影で扱いたい。
  • 点ではなく分布を見たい:果実の中で糖度や障害がどう偏っているかを面で把握したい。

逆に、判別に使う波長がすでに確立していて、品目も固定で、必要なのは現場での数値化だけ──という状況なら、既製の非破壊糖度計を選ぶのが合理的です。装置の価格構造そのものについてはハイパースペクトルカメラの価格相場にまとめています。

導入検討に使える補助金・助成金(2026年度)

非破壊糖度計や選果設備は、設備投資の補助金・助成金の検討対象になり得ます。ただし対象要件は制度ごとに異なり、装置の種類だけで可否は決まりません。以下は2026年8月時点で公式サイトから確認できた状況です。採択を保証するものではなく、公募時期・要件は必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。

  • 中小企業省力化投資補助金:一般型の第8回公募が2026年8月18日(火)〜10月中旬(予定)で案内されています。一般型は補助上限が最大1億円、カタログ注文型は最大1,500万円と示されています。申請にはGビズIDプライムアカウントが必要です(中小企業省力化投資補助金 公式サイト)。
  • 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金:中小企業庁は2026年6月30日、第1回公募要領を6月29日より公開したと発表しています(中小企業庁 公募情報)。従来の「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」は23次締切(2026年5月8日)分の採択結果が公表済みです(同補助金 公式サイト)。
  • 産地生産基盤パワーアップ事業:産地の収益力強化に向けた高性能な機械・施設の導入等を支援する農林水産省の事業です。要望の受付は都道府県を通じた調査等で行われるため、地域の窓口への確認が必要です(農林水産省)。
  • 農地利用効率化等支援事業(令和8年度):地域の担い手が経営改善に取り組む際の農業用機械・施設の導入を支援する事業で、第3回以降の申請は令和8年5月12日から当面の間受け付けると案内されています。市町村を通じた要望提出が必要です(農林水産省)。

検査・測定装置と補助金の関係については、省力化投資補助金と検査装置の判定3ステップで対象判断の考え方を整理しています。

私たちは国産のハイパースペクトルカメラ irodori を開発しています。記事の途中で恐縮ですが、irodori の導入が補助金の対象になり得るか、判断に迷う段階でもかまいませんので、まずはお気軽にご相談ください。

発注前FAQ|見積もりを取る前に確認する7項目

複数社に問い合わせる前に、次の7項目を質問リストにしておくと、返ってきた見積を同じ土俵で比較できます。

  1. 対象品目・品種はそのまま測れるか。追加する場合の費用と期間は。
  2. 検量線は誰が作り、更新は有償か。自前で作成する手段はあるか。
  3. 測定の標準誤差はどの品種・どの条件で出した値か。
  4. 1個あたりの測定時間と、繁忙期のピーク処理量に耐えるか。
  5. 光源・消耗部品の交換周期と単価、シーズン前点検の要否。
  6. 故障時の代替機の有無と、収穫期の対応スピード。
  7. 測定データはCSV等で取り出せるか。等級判定や出荷記録と連携できるか。

買う前に自分の品目で試す

カタログの数値は、そのメーカーが検量線を作った条件での値です。自分の産地・品種で同じ精度が出るかは、実物で確かめるしかありません。レンタル制度を持つメーカーもありますし、装置を買わずに測定だけ依頼する方法もあります。検討の進め方はレンタルで試すときの準備が参考になります。

導入までの5ステップ

  1. 要件を固める:品目・等級刻み・処理量・測定項目・稼働期間を紙1枚にまとめる。
  2. タイプを決める:ハンディ/卓上/ライン組込のどれかを先に確定させる。ここが決まらないと見積が比較できません。
  3. 実物で試す:レンタルやデモで、自分の品種の実測値と突き合わせる。破壊法(屈折計)との差を必ず記録する。
  4. 総額で比較する:本体価格ではなく、5年間の消耗品・点検・検量線更新を含めた金額で並べる。
  5. 補助金の適用可否を確認する:公募時期に合わせて逆算し、設備の発注時期を調整する。

私たちはこれまで、食品・農業・インフラ・医療などの現場とともに、ハイパースペクトルカメラの実証を重ねてきました(実績一覧)。既製の非破壊糖度計では要件が満たせない、あるいは「そもそも何を見れば判別できるのか」から詰めたい段階であれば、現場の課題に合わせて解析・実証をともに進めるirodori 共創プランという形もご用意しています。装置の仕様はirodori の製品ページにまとめていますので、資料だけでもご覧いただけたら嬉しいです。

よくある質問

非破壊糖度計の価格はいくらくらいですか?

品目専用のハンディ機は、メーカー公式通販で税込99,000円〜167,200円の掲載例があります(アタゴ「PAL-光センサー」/2026年8月時点)。卓上型や選果機組込型は各社とも価格を公表しておらず、仕様と処理量に応じた個別見積になります。

なぜ選果機組込型は価格が公表されていないのですか?

センサー単体ではなくラインの一部として価格が決まるためです。搬送速度に合わせた光学系、既存コンベアとの接続、仕分け先の増設、制御盤や電源工事、据付スケジュールまでが見積に含まれ、既設ラインへの後付けか新設かでも金額が変わります。

本体価格以外にどんな費用がかかりますか?

主に3つです。ランプなど光源・消耗部品の交換(クボタはフルーツセレクターのランプ光源について寿命約2,000時間と案内)、校正・点検、そして検量線の更新です。5年間の総額で比較することをおすすめします。

検量線は一度作れば使い続けられますか?

使い続けられるとは限りません。品種・産地・栽培時期・収穫年次・熟度の違いや試料温度の変動が精度に影響するため、品種追加や産地拡大のタイミングで更新が必要になります。更新を誰が有償で行うのかを契約前に確認してください。

糖度の測定にハイパースペクトルカメラは必要ですか?

単一品目の糖度を1点測るだけであればオーバースペックで、10万円台の専用ハンディ機のほうが速く安く運用できます。使う波長がまだ決まっていない探索段階、糖度以外の項目も同時に見たい場合、果実内の分布を面で見たい場合に検討価値があります。

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