ヒートシール不良の検査は、装置を選ぶ前に「どの不良を狙うか」で決まります。噛み込み・シール抜け・シワ・シール幅不足・過加熱の5種に対し、目視から漏れ試験・超音波・分光までの得意不得意を整理し、シール条件管理との役割分担まで示します。
結論から書きます。シール部の不良は、検査で見つけるより先に、シール条件(温度・圧力・時間)で作り込むのが本筋です。そのうえで実務の主役になるのは、抜取りの漏れ試験と強度測定、そしてシール部の画像検査や超音波検査による全数検査の組み合わせです。分光・ハイパースペクトルイメージングは、この主役を置き換えるものではなく、「見た目が同じでもシール面に挟まった内容物や油分を成分差として捉えたい」という限られた場面の補助として考えてください。
ヒートシール不良の検査は「条件管理」から始まる
相談の最初に出てくるのは「どの検査機を入れるか」という問いです。ただシール部は、製品の中で唯一、工程側が意図して作った接合部です。つくり方が安定していない接合部を後工程の検査だけで選別しようとすると、不良率が高いまま歩留まりを捨てることになります。だからこの記事は、方式比較の前に条件管理から始めます。
シール条件は温度・圧力・時間の3要素で決まる
ヒートシールは、包材の最内層(シーラント層)を加熱して軟化・溶融させ、圧力で密着させ、冷却して固定する工程です。したがって管理すべき変数は、加熱温度・圧力・加熱時間の3つに集約されます。この3つのどれかが不足すると未溶着側に、過剰になると過加熱側に倒れます。現場で「シール不良が増えた」という時は、まずこの3要素のどれが振れたのかを切り分けるのが順序です。
シール強さの発現は、思っているよりも薄い領域で起きています。日本包装学会誌に掲載された菱沼一夫氏の研究では、溶着面温度をパラメータに溶着層の厚さとヒートシール強さの関係が検証され、3マイクロメートル程度のシーラントでヒートシール強さが完成していると報告されています(日本包装学会誌 Vol.15 No.1、2006年)。同研究は、半溶融状態で圧着して冷却すると摩擦接着による剥れシールになり、溶融温度より高い領域ではシーラントが液状化して混合し、一体化した破れシールになると整理しています。つまり「温度を上げればシールが強くなる」という単純な話ではなく、どの状態で止めるかを決めるのがシール条件の設計です。
HACCPでは密封そのものが重要管理点になる
食品工場の実務として重いのは、シール部が衛生上の管理点として位置づけられている点です。厚生労働省の審議会資料として公開された日本缶詰びん詰レトルト食品協会「容器詰加熱殺菌食品 HACCPマニュアル」では、透明パウチ製品のHACCPプランで密封(ヒートシール)工程を重要管理点(CCP)に指定し、危害の防止措置として「シール温度○○○℃、時間〇.〇秒、圧力〇〇MPa以上で十分な密封強度を保持するようにシールする」という条件管理を置いています。同プランは管理基準として、全数についてシール幅と外観(しわ・破れ・食品の噛み込みなど)を確認し、圧力をかけて漏れがないことを確認する、という書き方をしています。
この記述の順序が重要です。先に条件(温度・圧力・時間)があり、次に全数の外観確認、そして漏れの確認が来ます。検査装置は3番目の手段であって、条件管理の代わりではありません。同マニュアルは、パウチのヒートシールについて「その容器に推奨される温度と時間を設定して管理する」とし、製品ではシール幅やシール後の状態を確認し、手で押して漏洩がないこと、切片を作って両側から引っ張ってある程度の強さがあることを確認する、という現場手順も示しています。
シール強度測定と漏えい試験の規格
抜取りで行う評価の拠り所になるのが規格です。日本産業規格にはJIS Z 0238「ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法」があり、包装に用いるヒートシールされた軟包装袋および半剛性容器の試験方法を規定しています(1981年制定、1998年改正、2023年確認)。同規格の試験項目は、袋のヒートシール強さ試験・容器の破裂強さ試験・落下強さ試験・耐圧縮強さ試験・漏えい試験で、シール部の強さと漏れの有無を数値で押さえる場面の共通言語になります(内容物を詰めた袋は総質量20kg未満、容器は2kg未満が適用範囲です)。
加圧加熱殺菌品であれば、製品規格そのものにも密封の確認が組み込まれています。食品、添加物等の規格基準のうち容器包装詰加圧加熱殺菌食品の成分規格では、検体を容器包装のまま35.0℃で14日間保持する恒温試験を行い、容器包装の膨張または内容物の漏えいを認めたものは微生物が陽性であるとみなすと定められています。シール不良は最終的にこうした形で製品規格に跳ね返るため、「シール部の検査」は品質保証の都合ではなく法令側の要求とつながっています。
医療機器の最終包装では、ISO 11607-1:2019(Packaging for terminally sterilized medical devices)が材料・無菌バリアシステム・包装システムの要求事項と試験方法を規定し、第2版では使用前の無菌バリアシステムの完全性検査に関する要求が追加されています。食品工場の方でも、同じライン設計の考え方を参照する価値があります。
食品包装のシール不良5種を切り分ける
検査方式の話に入る前に、不良の名前を揃えておきます。現場では「シール不良」とひとまとめに呼ばれますが、発生メカニズムが違えば、取れる方式も対策も変わります。ここでは実務で頻度の高い5種に分けます。
1. 噛み込み(内容物・粉体・液のシール面への挟み込み)
シール面に内容物の破片、粉、液、油分が挟まった状態です。充填時の跳ね上がり、粉体の舞い上がり、ホッパーからの垂れ、設備のチョコ停後の再起動などで発生します。厄介なのは、挟まっているものが内容物そのものなので、画像上は「少し色が違う」程度にしか見えない場合があることです。微細な噛み込みは、その瞬間に漏れていなくても、流通時の振動や温度変化で流路に育ちます。
2. シール抜け・未溶着(シール条件不足・コールドシール)
シールバーの温度が立ち上がる前、品種切り替え直後、設備のチョコ停からの復帰直後などに起きる、溶着そのものが成立していない状態です。見かけ上はシールの跡が付いているのに接合していない「疑似シール」になることがあり、外観検査が最も騙されやすい不良です。前述の研究が示すように剥れシールと破れシールの境界は温度に敏感なので、条件の下限側に余裕がないラインでは出続けます。
3. シワ・チャンネルリーク
シール部にシワが入り、シワの谷が微細な流路として残った状態をチャンネルリークと呼びます(シール部を貫通する細い通路が残り、そこから気体や液が通る不良のこと)。フィルムの張力ムラ、重ね部の段差、三方シールの交点、ガゼット部などで起きやすく、見た目のシワが必ず漏れにつながるわけではないため、判定基準づくりが難しい領域です。シワを全部不良にすると過検出でラインが止まり、見逃すと流通後のクレームになります。
4. シール幅不足・シール位置ズレ
規定のシール幅が確保できていない、あるいはシール位置がズレて端が開いている状態です。フィルムの蛇行、送りのズレ、シールバーの平行度や摩耗が原因になります。前出のHACCPマニュアルのプランでも、全数についてシール幅を確認することが管理基準に入っているとおり、寸法として測れる不良なので、画像検査が最も素直に効く領域です。
5. 過加熱によるピンホール・シール部の脆化
シール不良対策として温度を上げ続けた結果として起きるのが、こちらです。シーラントが流れすぎてシール部の肉厚が薄くなり、エッジに切れが入ったり、冷却後に脆くなって落下・圧縮で割れたりします。温度を上げれば噛み込みも溶かし込めるという発想は、この不良に直結します。シール不良を「温度を上げて解決する」方向に倒さないことが、現場の鉄則です。
なお、ここで扱うのはあくまでシール部そのものの不良です。包装の中身に入ってしまった異物をどう見るかは別の設計になるので、未開封の包装ごしに中身を検査する5方式と包材別の限界のほうを参照してください。
シール不良 検査の6方式を比較する
ここからが方式の比較です。軟X線検査装置メーカーのサイエナジーは、シール不良検査に使われる方式としてX線・光学カメラ・赤外線(サーモグラフィ)・超音波・変位センサの5つを挙げています。これに抜取りの漏れ試験と分光を加えると、現実の選択肢がほぼ出揃います。
方式 | 原理 | 全数/抜取り | 得意 | 弱点・制約 |
|---|---|---|---|---|
目視検査 | 人の眼でシール部の外観を見る | 原則抜取り(全数は人数に依存) | 異常の気づき、不定形な異常への対応 | 判定の個人差。不透明包材はほぼ不可。多品種大量生産で全数は現実的でない |
画像(RGB)検査・シール部の透過画像 | 可視光でシール部を撮像し、幅・位置・異物の濃淡を判定 | 全数 | シール幅、シール位置ズレ、はっきりした噛み込み | 印刷・着色・アルミ蒸着で透過できない。色が内容物と近い噛み込み、未溶着は見えにくい |
軟X線検査 | シール部にX線を当て、透過量の差を画像化 | 全数 | 噛み込み、ダーツ、斜めシール・シール後退。アルミ蒸着や印刷包材にも対応 | 密度差の小さい薄い有機物は写りにくい。X線装置としての管理が必要。標準仕様の検査視野は幅方向に制限がある |
漏れ試験(減圧法・加圧法など) | 内外に圧力差を与え、気泡・圧力変化・トレーサガスで漏れを検知 | 原則抜取り(破壊試験を含む) | 「実際に漏れているか」の直接確認。最終判定の基準になる | 速度が出ないため全数には向かない。閉じている微細な流路は条件次第で検知できない |
超音波シール検査 | 超音波を送信し、反射波・透過波の差からシール内部の気泡・空隙を捉える | 全数 | 外から見えないシール内部の噛み込み、シール抜け、シワ、シール位置ズレ。不透明包材でも可 | 搬送クリアランスや通過間隔などライン条件の制約。ワーク端辺の一定幅は検査対象外 |
分光・近赤外/ハイパースペクトルイメージング | 波長ごとの吸収の違い(分光)から材料の成分差を画像化 | 全数(条件が整えば) | 印刷・着色フィルムごしに、シール面の有機物の成分差を捉えたい場合 | 包材がその波長域で透過性を持つことが前提。導入事例が限定的でコストも重い |
減圧法の漏れ試験は「最終判定」の位置に置く
漏れ試験は、シール不良検査の中で唯一「漏れているかどうか」を直接確認できる手段です。日本産業規格ではJIS Z 2330「非破壊試験-漏れ試験方法の種類及びその選択」が一般に用いられる漏れ試験方法の種類と選択の指針を規定し、個別の方法としてはJIS Z 2329「非破壊試験-発泡漏れ試験方法」(試験面の片側を加圧または減圧し、発泡液の気泡で漏れ位置を見る方法)やJIS Z 2332「圧力変化による漏れ試験方法」(加圧または減圧し、一定時間の圧力変化から漏れを測る方法)が整備されています。水没させて減圧し気泡を見る減圧法は、発泡漏れ試験の考え方に沿った方法です。
ここで正直に書くべき点が2つあります。ひとつは、漏れ試験は速度が出ないため全数検査には向かず、抜取りで条件の妥当性を確認する役割になるということ。もうひとつは、閉じたチャンネルリークのように「静置状態では漏れていない」不良は、試験条件によって検知できない場合があるということです。だから漏れ試験だけに頼る設計にはせず、条件管理と全数の外観・内部検査を組み合わせます。
シールチェッカー(超音波式)は不透明包材の全数検査に効く
「シールチェッカー」と呼ばれる機器には複数の方式がありますが、全数検査の文脈で実装が進んでいるのが超音波式です。ヤマハファインテックの超音波式ヒートシール検査機は、ピロー包装の事例で菓子やパンの破片の噛み込み、シール抜け、シワ、シール位置ズレの4つを検出対象として挙げ、センターシール部の全数自動検査とシールの内部状態の可視化、検査履歴の全数保存を実現したとしています。レトルトパウチの事例では、不透明な袋は不良検出が困難という目視の限界に対して、超音波センサーが外から見えないシールの剥離を直接検知する点が導入理由として挙げられています。
一方で、ライン条件の制約は正面から見るべきです。同社の製品ページには、検査速度は60m/min(1,000mm/sec)以下、ワーク通過部クリアランスは2mm未満、ワーク通過インターバルは150msec以上、センサー端部約1mmとワーク端辺から2mmは検査対象外という条件が明記されています。既存ラインに後付けする場合、この種の寸法・速度条件が入るかどうかが実質的な採否の分かれ目になります。
非接触の温度計測を使う方式もあります。四国計測工業のヒートシール検査装置は、赤外線放射温度計による非接触温度測定方式で、噛み込み・未接着(疑似シール)・シール幅の不均一・容器の重なり・シワを検出対象とし、処理能力は最大125袋/分としています。同時に、主な対応は給袋式レトルトパウチのロータリー式充填包装機で、ピロー式には対応不可、真空型には非対応という適用範囲も明記されています。方式の優劣ではなく、自社の包装形態に合うかどうかで決まる領域です。
軟X線は印刷・アルミ蒸着包材での噛み込みに強い
可視光が通らない包材でシール部の中を見たい場合、軟X線が選択肢になります。サイエナジーは軟X線が選ばれる理由として、中身の見えないアルミ蒸着フィルムや印刷のある包材に対応できること、熱伝導性に関わらず包装機内のシール前・シール後に設置できること、標準仕様で検査視野200mmまで対応すること、空間的な厚みの影響を受けずに検査できることを挙げ、検出対象として噛み込み・ダーツ・斜めシール・シール後退を示しています。
X線の原理的な限界も押さえておきます。X線画像のコントラストは密度差と厚みに依存するため、包材と密度が近く薄い有機物は写りにくくなります。X線で見えないものを前提にした設計の考え方は、外観検査の自動化が失敗する原因4分類とPoC設計の整理とあわせて読むと見通しが良くなります。
不良5種 × 検査方式の対応表
現場で必要なのは「自社で出ている不良が、その方式で取れるのか」です。前節で引いた各社の公開情報をもとに整理します。◯は各社が検出対象として明示している、または原理的に素直に効く領域、△は条件次第、×は原則として向かない領域です。装置個体の性能保証ではなく、方式の向き不向きの整理として読んでください。
不良 | 目視 | 画像(RGB) | 軟X線 | 漏れ試験(抜取り) | 超音波 | 分光・HSI |
|---|---|---|---|---|---|---|
噛み込み(内容物・粉・液) | △(透明包材・大きいものだけ) | △(透明包材で色差があれば) | ◯(印刷・アルミ蒸着でも可) | △(貫通して漏れていれば) | ◯ | △(成分差があり包材が透過性を持つ場合) |
シール抜け・未溶着(疑似シール) | ×(跡が付くため騙されやすい) | ×〜△ | △ | ◯ | ◯ | ×〜△ |
シワ・チャンネルリーク | △(シワは見えるが流路の有無は不明) | △(シワの検出まで) | ◯(シワ・斜めシール) | △(閉じた流路は条件次第) | ◯ | ×〜△ |
シール幅不足・位置ズレ | △(基準があれば可) | ◯(寸法として最も素直) | ◯ | ×(漏れていなければ出ない) | ◯ | △ |
過加熱によるピンホール・脆化 | × | ×〜△ | △ | ◯(ピンホールは漏れとして出る) | △ | × |
この表から読めることは2つです。ひとつは、未溶着と過加熱は、全数検査よりも漏れ試験と強度測定で押さえる不良だということ。もうひとつは、噛み込み・シワ・幅不足という「形になって残る不良」は全数検査で取りにいく対象だということです。この切り分けができていないと、「全数検査機を入れたのにクレームが減らない」という結果になります。
分光・ハイパースペクトルがシール不良検査で効く範囲
私たちはハイパースペクトルカメラを開発している立場ですが、シール不良検査における分光は標準解ではありません。実務の主役は、くり返しになりますが、シール条件管理(温度・圧力・時間)、抜取りの漏れ試験と強度測定、そしてシール部の画像検査または超音波検査による全数検査です。この順序を崩す提案はしません。
効く可能性があるのは「見た目が同じでも成分が違う」場合
分光は、波長ごとの光の吸収の違いから材料の成分差を捉える手法です(ハイパースペクトルイメージングは、画素ごとに連続した波長のスペクトルを取得して画像化する方式を指します)。シール不良に当てはめると、効く可能性があるのはシール面に挟まった内容物・油分・水分を、RGBでは色が同じに見えても成分差として分離したいというケースに限られます。
近赤外ハイパースペクトルカメラのメーカーであるSpecimは、ヒートシール包装の検査事例で印刷されたプラスチック包材では従来のビジョンシステムが機能しないこと、長波長側の透過特性を利用して900〜1700nmの近赤外域で撮像すること、前提条件として包材がその波長域の光に対して透過性を持つ必要があることを説明しています。シール検査向けの装置を出しているEngilicoも、ハイパースペクトルカメラがRGBの色情報ではなく材料の組成情報を取得するため、不透明または印刷されたトレーやサーモフォーム容器でのシール部の汚れ検出に向くとし、包装直後の変形していない安定した状態で撮像する構成を説明しています。
向かないケースと、まだ研究段階のこと
逆に、分光が向かないケースははっきりしています。未溶着(疑似シール)や過加熱による脆化は、シール面に異物があるわけではなく接合状態そのものの問題なので、成分の違いとしては現れにくい領域です。アルミ箔のように近赤外も通さない包材では、そもそも透過して中を見ることができません。シール幅や位置ズレのような寸法の問題であれば、安価なRGBの画像検査で足ります。分光を持ち出す必要がありません。
そして、シール部の不良検出に分光を適用する取り組みは、食品の鮮度評価や異物検査に比べると事例が少なく、包材・内容物の組み合わせごとに「その波長域で差が出るか」を確かめるところから始まります。この段階を研究段階と呼ぶべきで、検出率や精度を前もって約束できるものではありません。私たちも「分光なら全部取れます」とは言いません。ハイパースペクトルカメラの仕組みと原理を押さえたうえで、自社の不良が成分差として出るのかどうかを先に確かめる順序をおすすめしています。
私たちは国産ハイパースペクトルカメラ irodori を開発しています。受賞・学術発表・メディア掲載は会社実績のページにまとめています。記事の途中で恐縮ですが、もしシール部の見えない噛み込みでお困りでしたら、irodori の仕様だけでも覗いていただけたら嬉しいです。
実務の落とし穴と、検査を入れる順番
最後に、導入でつまずきやすい点と現実的な進め方を整理します。装置の性能より、ここの設計で結果が変わります。
よくある4つの落とし穴
1つ目は、条件管理を飛ばして検査機から入ること。不良率が数パーセントある状態で全数検査機を入れると、ラインは止まり続け、廃棄が増えます。検査機は「まれに出る不良を逃さない」ための装置で、「常に出る不良を選別する」ための装置ではありません。まずシール条件の記録を見て、温度・圧力・時間がどれだけ振れているかを確認してください。
2つ目は、判定基準を決めずにPoCを始めること。とくにシワは、どの程度のシワを不良とするかで検出率も過検出率も大きく変わります。「漏れにつながるシワ」の線を、漏れ試験の結果と突き合わせて決めないまま装置を評価すると、数字が一人歩きします。
3つ目は、良品サンプルしか用意しないこと。評価に必要なのは実機で出た不良品です。人工的に作った噛み込みサンプルは、本物より大きく、きれいに挟まっていることが多く、評価が甘くなりがちです。
4つ目は、シール不良対策として温度を上げてしまうこと。前述のとおり、これは過加熱によるピンホールと脆化を招きます。噛み込みを溶かし込む方向ではなく、充填時の跳ね・粉の舞い上がり・垂れを減らす方向、つまり発生源側で手を打つのが順序です。
導入ステップ
- 不良の棚卸し:過去のクレームと社内不良を、この記事の5種(噛み込み・シール抜け・シワ/チャンネルリーク・幅不足/位置ズレ・過加熱)に分類し、件数の多い順に並べます。
- 条件管理の確認:シール温度・圧力・時間の設定値と実測の振れ幅、品種切り替え時とチョコ停復帰時の扱いを確認します。ここで直る不良があるなら、検査機の前に直します。
- 抜取り試験の整備:JIS Z 0238の袋のヒートシール強さ試験と漏えい試験を軸に、試験の方法と頻度を決め、条件変更時に必ず回す運用にします。これが全数検査の判定基準の根拠になります。
- 全数検査の方式選定:包材(透明/印刷/アルミ蒸着)、包装形態(ピロー/給袋ロータリー/トレーシール)、ライン速度、設置スペースの4点で候補を絞ります。この4点でほとんどの方式は自動的に落ちます。
- PoC(実機検証):現場で出た不良品と良品を持ち込み、検出率ではなく「過検出率を実運用に収めたうえで、狙った不良が取れるか」を確認します。あわせてライン条件(クリアランス・通過間隔・端辺の不検査領域)が成立するかを実機で見ます。
- 運用の作り込み:不良が出たときの排出、分別、条件再設定、再シールの扱い、記録の残し方まで決めます。HACCPマニュアルのプランが改善措置として挙げている流れ(製造責任者への連絡、前回確認以降の製品の分別、条件の再設定、再充填も含めた再シール)が、そのまま手順書の骨格になります。
この順番で進めると、問いが「どの方式がいちばん良いか」から「自社の不良に対して、どの組み合わせが足りていないか」に変わります。
まとめ
ヒートシール不良の検査は、条件管理(温度・圧力・時間)を土台に、抜取りの漏れ試験・強度測定で基準を作り、全数検査で形に残る不良を逃さない、という3層で考えるのが実務的です。全数検査の方式は、包材が光を通すかどうかと、包装形態がライン条件に合うかどうかで、ほぼ自動的に絞られます。
分光・ハイパースペクトルは、その上で「見た目が同じでもシール面の成分が違う」という限られた課題に向き合うための選択肢です。向き不向きをはっきりさせたうえでお話ししたいので、自社の不良が成分差として出るのかどうかを一緒に確かめる形から始めています。判断の材料として、資料だけでもご覧いただけたら嬉しいです。




