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青果の選別機を自動化する5方式|外部品質と内部品質で選ぶ【2026】

青果の選別機の自動化は、「外部品質(形・サイズ・色・傷)」と「内部品質(糖度・熟度・内部褐変・空洞)」のどちらを機械に任せるのかを決めるところから始まります。本記事では選果ラインで使われる5方式を、見分けられる項目・処理能力・導入規模の目安で比較し、導入前に必ず詰めるべき検量線づくりのコストまで整理します。

結論から書きます。青果の選別機は「万能な1台」を選ぶものではなく、外部品質を担う機構と内部品質を担うセンサーを、ライン上でどう組み合わせるかという設計の問題です。外部品質は重量選別とカラー画像選別で、内部品質は近赤外(光センサー)選別機で分担するのが基本形になります。背景にある人手不足は数字にも表れており、2025年農林業センサス(概数値)では個人経営体の基幹的農業従事者は102万1千人と、5年前から34万2千人・25.1%減少しています(農林水産省「2025年農林業センサス結果の概要(概数値)」)。選別を人手前提で組み続けることが、そもそも難しくなっています。

青果の選別機の自動化は「外部品質」と「内部品質」で分けて考える

選果ラインの相談で最初に起きるのは、「選別機を入れたい」という要望の中身が人によってバラバラ、という状態です。ある人はサイズ揃えの話をし、ある人は糖度別出荷の話をし、ある人はクレームになった内部褐変の話をしている。これらは必要な装置がまったく違うため、最初に軸を分けておく必要があります。

外部品質=形状・サイズ・色・傷(重量選別/カラー画像選別)

外部品質は「表面と外形から判断できる項目」です。等階級のうちサイズは重量選別機(ロードセルで1個ずつ計量)、色・形・表面の傷はカラーカメラによる画像選別が担当します。この領域は技術としてすでに成熟しており、判断基準さえ決まれば機械化の再現性は高い領域です。逆にいえば、ここで揉めるのは技術ではなく「どこからをB品にするか」という基準の側で、属人化していた目合わせを言語化・数値化する作業が実質的な導入工数になります。

内部品質=糖度・熟度・内部褐変・空洞(近赤外/光センサー選別機)

内部品質は「切らないと分からない項目」です。近赤外光を果実に当て、透過または反射した光の吸収を解析して糖度・酸度・熟度・内部障害を推定します。いわゆる光センサー選別機がこれにあたり、メーカー公開情報では糖度・酸度・熟度・内部障害・す上がり・水果・褐変・蜜・腐れ・空洞といった項目を測定対象として挙げています(三井金属計測機工 農業関連事業)。糖度そのものの測定原理は果物の糖度を非破壊で測る手法の比較記事で詳しく扱っているため、本記事ではライン設計側の視点に絞ります。

まず「どの不良で、いくら失っているか」を数える

方式選定の前に、直近3〜6か月のクレーム・返品・格落ちを不良項目別に集計してください。実務では、外部品質の不揃いは日々の作業負荷として現れ、内部品質の不良はクレームとして現れる、という分かれ方をします。金額インパクトが内部品質側に寄っているのに重量選別機だけを更新しても、痛みは消えません。投資の優先順位は「作業がつらい工程」ではなく「損失が出ている項目」で決めるのが原則です。

青果の選別機5方式を比較|見分けられる項目・処理能力・導入規模

選果場で実際に選択肢になるのは次の5方式です。価格は公開情報が限られるため、ここでは規模感の相対比較に留めます。

方式

見分けられる項目

処理能力の目安

導入規模の目安

向く工程

重量選別

重量(サイズ換算)

高速・1個ずつ連続計量

小〜大(単体機からライン組込みまで)

等階級のサイズ振り分け

カラー画像選別

色・形状・表面の傷・変色

高速(ベルト式は原料により毎時数百kg規模の公表例あり)

小〜中(既存ラインへの追加が比較的容易)

外観のA/B品振り分け、異物・混入物の除去

近赤外(光センサー)選別

糖度・酸度・熟度・内部褐変・す上がり・空洞

中〜高速(果実を1個ずつ搬送するバケット式が主流)

中〜大(選果場単位の投資になりやすい)

内部品質での等級分け・出荷可否判定

X線

密度差による内部欠損・硬質異物・虫害

中速(アーモンドで0.1〜5.0t/hの公表例)

中〜大(遮蔽・法定管理が必要)

内部の空洞・食害・硬質異物の最終砦

ハイパースペクトル(分光画像)

面としての成分・状態分布(研究・実証段階の用途が多い)

低〜中速(データ量が大きい)

検討・PoC規模から

既存方式で分けられない項目の見極め

重量選別:等階級の土台になるが、品質は見ていない

ロードセルで1個ずつ計量し、階級別に振り分けます。安定性が高く、選果ラインの土台として今も現役です。ただし重量は品質の代理指標にすぎません。「大玉=良品」という前提が崩れる品目・年産では、重量選別だけでは説明のつかない格差が出ます。

カラー画像選別:色と形は強いが、表面より内側は見えない

フルカラーカメラで色・形状・傷を判定します。近年はNIRカメラを併用し、原料と同色の石やプラスチック片まで識別する機種も市販されています(サタケ 枝豆選別機)。同社の公表事例では、収穫・選別・出荷に5〜6名を要していた作業が選別施設の導入後は3名で回るようになったとされています。粒状物の色彩選別そのものの限界は斑点米・着色粒の色彩選別機の記事で整理しています。

近赤外(光センサー)選別機:仕組みと、実は一番重いコスト

果実の赤道部に近赤外光を照射し、透過してきた光のスペクトルから糖度などを推定します。ポイントは、装置が糖度を「測っている」のではなく、事前に作った検量線(スペクトルと実測値の対応モデル)を使って推定していることです。ここが導入の実務上いちばん重いところで、後述します。

X線:密度差で内部を見る。青果では用途を絞って使う

X線は密度差を画像化するため、内部の空洞・食害・硬質異物に強い一方、糖度のような成分差は原理的に見えません。近年はAIによる画像認識を組み合わせ、虫食い粒や半割れといった複雑な内部欠損を検出する機種も出ています(サタケ ベルトゥーザ スペクトラ)。遮蔽構造と法定の管理が伴うため、「他の方式で分けられないものだけをX線に回す」設計が現実的です。

ハイパースペクトル:既存方式で分けられない項目を見極める段階の技術

ハイパースペクトルは、1画素ごとに連続した波長のスペクトルを取得する分光計測手法です。点で測る近赤外センサーに対して「面」で成分や状態の分布を捉えられるため、傷みの広がりや部位差を評価できます。りんごの非破壊糖度推定にハイパースペクトル画像を用いた検討も報告されています(映像情報メディア学会年次大会・2016)。原理そのものはハイパースペクトルカメラとは何か(仕組みとマルチスペクトルとの違い)で解説しています。ただし高速ラインへの常設は処理データ量とコストの制約が大きく、現時点では「既存方式で分けられるのか」を見極める調査・実証の道具として使うのが正直な位置づけです。

私たちは国産・自社開発のハイパースペクトルカメラ「irodori」を開発しています。選別機の機種選定の前に「そもそもこの不良は光で分けられるのか」を確かめたい、という段階でしたら、irodori の製品ページだけでも見ていただけたら嬉しいです。

選果場の省人化はどこまで進むか|自動化しても人が残る工程

農林水産省のスマート農業技術カタログ(果樹)には、近赤外分光による青果物品質評価装置、AIによる外観品質の客観評価システム、AI画像検査ソフト、不定形農産物の自動計量機などが掲載されています(農林水産省 スマート農業技術カタログ(果樹))。判定そのものは、かなりの範囲が機械に置き換わりつつあります。

一方で、人が残りやすいのは判定の前後です。具体的には、(1)コンテナからの荷受けと1個ずつへの整列供給、(2)判定後の箱詰め・パッド入れ・化粧、(3)異常時のライン復旧と日々の清掃・校正確認です。省人化の効果は「判定人員が何人減るか」ではなく、供給と包装まで含めたライン全体の人時で測るべきで、ここを見誤ると「選別機は入れたのに人が減らない」という結果になります。食品工場側の視点での自動化手段の整理は出荷検査の自動化で目視検査を減らす5つの手段にまとめています。

導入前に必ず詰める3つの落とし穴

1. 検量線の作り込みが、実務上いちばん大きなコスト

近赤外による内部品質選別の精度は、装置の性能より検量線の質で決まります。近赤外分光による果実の糖・酸測定を総説した論文では、測定精度に影響する要因として品種・産地・栽培期間・収穫年次・熟度の違い、試料温度の変動、果実内の組成の不均一性が挙げられ、検量線には「将来測定する試料がもつ様々な物理化学的変動を含むような試料」を用いる必要があると指摘されています(藤原孝之「近赤外分光法による果実類の糖および酸の測定とその問題点」日本食品工学会誌 5(2), 2004)。

これは現場語に訳すと、「品目ごと・場合によっては品種や産地ごとに、破壊検査で実測値を取りながらサンプルを積み上げる作業が要る」ということです。しかも年産が変われば効き方が変わるため、一度作って終わりにはなりません。導入検討では装置費だけでなく、この検量線づくりと年次メンテナンスの工数を最初から予算に入れる必要があります。ここを甘く見た案件が、「思ったより当たらない」となる典型パターンです。

2. 処理量と単価が見合わないと、回収できない

選別機は固定費です。回収の分母は「年間処理量 × 選別によって守れる単価差または削減できる人時」で、これが装置費と年間の維持費を上回らなければ、技術的に成功していても投資としては失敗します。実務でよく効くのは、単価差の見積もりを楽観で置かないことです。糖度別出荷でいくら上乗せできるかは市場と取引先次第で、装置を入れれば自動的に付く値ではありません。回収年数の具体的な試算手順は検査自動化の費用対効果を試算する4ステップで扱っています。

3. 「分けたい不良」が本当に光で分けられるかの事前確認

内部褐変や芯腐れのように、外からは見えず密度差も小さい不良は、方式選定の前に検証が必要です。農研機構は、官能評価の食味・食感をセンサーに学習させて青果物のおいしさを非破壊推定する技術も報告しており(農研機構「青果物のおいしさを非破壊的に計測」)、光で扱える範囲は広がっています。ただし広がっているからこそ、自社の不良サンプルで実測してから機種を決める順序が重要です。内部腐敗の検出可否については果物の内部腐敗を検査する手法の比較も参考にしてください。

選果ラインの更新に使える補助金(2026年度の状況)

選果施設・選別機の整備は、産地単位の施設整備を支援する制度の対象になり得ます。代表的なのが農林水産省の強い農業づくり総合支援交付金で、集出荷施設など産地の基幹施設を対象とするタイプが設けられています。2026年度(令和8年度)も公募が行われており、たとえば食料システム構築支援タイプ(全国の取組)の2回目公募は令和8年4月28日必着で実施されました(農林水産省 公募ページ)。最新の公募一覧は農林水産省「補助事業参加者の公募」で確認できます。

設備投資側の制度としては、中小企業向けのものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金があり、2026年からは新事業進出補助金と統合された枠組みでの公募も始まっています。制度は年度ごとに名称・要件・枠組みが変わるため、公募時期・要件・対象経費は必ず公式サイトで最新情報を確認してください。採択率や受給額をあらかじめ約束できる性質のものではありません。

なお、施設整備型の交付金は事前相談から採択まで年単位の準備が必要で、都道府県経由の手続きになるケースが一般的です。設備の仕様を固める前に、窓口へ相談する順序が現実的です。農業分野の制度全体はスマート農業の補助金【2026年度】センシング導入に使える制度まとめに整理しています。

青果の選別機を自動化する5ステップ

  1. 不良項目別に損失を数える:直近3〜6か月のクレーム・格落ち・返品を項目別に金額化し、外部品質と内部品質のどちらに寄っているかを判定する。
  2. 判定基準を言語化する:目合わせで運用してきたA品/B品の境界を、写真・数値・限度見本に落とす。ここが未整備だと、どの機種でも設定が決まらない。
  3. 自社サンプルで検証する:分けたい不良が本当に光や密度差で分かれるかを、実際のサンプルで確認する。メーカーのデモや実証で、良品・不良品を持ち込んで撮る。
  4. ライン全体で人時を試算する:供給・判定・包装・清掃まで含めた人時と、検量線づくり・年次校正の工数を織り込んで回収年数を出す。
  5. 制度の窓口に早めに相談する:施設整備型の交付金は仕様確定前の事前相談が実務上の分岐点になる。

私たちはこれまで、食品・農業・インフラ・医療などの現場とともに、ハイパースペクトルカメラの実証を重ねてきました(実績一覧)。選別機の選定は決して安い買い物ではないので、「まず分けられるのかを確かめる」段階のご相談も歓迎しています。押し売りはしませんので、製品カタログと事業紹介資料だけでもご覧いただけたら嬉しいです。

FAQ

青果の選別機の自動化は、何から検討すればよいですか?

分けたい項目が外部品質(形・サイズ・色・傷)か内部品質(糖度・熟度・内部褐変・空洞)かを切り分けるところからです。そのうえで、直近3〜6か月のクレームや格落ちを不良項目別に金額化し、損失が大きい側から投資の優先順位を決めます。

光センサー選別機の仕組みを簡単に教えてください。

果実に近赤外光を照射し、透過または反射した光のスペクトルから糖度・酸度・熟度・内部障害などを推定する仕組みです。装置が直接測定しているわけではなく、事前に作った検量線というモデルを使って推定しています。

導入で一番コストがかかるのはどこですか?

実務上は検量線の作り込みです。品種・産地・栽培期間・収穫年次・熟度・試料温度などで測定値が変動するため、将来測定する試料の変動を含むサンプルを集めて検量線を作る必要があり、年次のメンテナンスも続きます。

選別機を入れれば選果場の人員は減りますか?

判定工程は機械に置き換わりますが、荷受けと整列供給、判定後の箱詰め・化粧、異常時の復旧や清掃・校正確認には人が残ります。省人化の効果は判定人員だけでなく、ライン全体の人時で評価してください。

選果施設の更新に使える補助金はありますか?

農林水産省の強い農業づくり総合支援交付金には産地の基幹施設を対象とするタイプがあり、2026年度も公募が行われています。ただし要件や枠組みは年度で変わるため、公募時期・対象経費は必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。

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