プラスチック選別機を入れても黒い樹脂が残り、再生材の品位が上がらない。原因は装置の性能ではなく選定の順序です。方式ごとの守備範囲と弱点を比較し、到達品位から逆算する4軸で「既存機で足りるのか、実証が要るのか」を見分けられる状態にします。
結論から言えば、プラスチック選別機の選定は処理能力ではなく「どの純度まで届かせたいか」から逆算します。使用済み家電から同じ家電の部材をつくる水平リサイクルでは、単一樹脂を99%以上の純度で選別回収しなければならないと報告されており(河済博文「光学識別法を用いる次世代ソーティング機器の開発動向」廃棄物資源循環学会誌 Vol.29 No.2, 2018)、この水準は近赤外(NIR)選別機を1台置けば届くものではありません。方式の組み合わせと段数、そして黒色樹脂をどう扱うかが、そのまま品位の上限を決めます。
プラスチック選別機とは|「測る装置」と「弾いて分ける設備」は別物
プラスチック選別機は、破砕・洗浄後のフレークや回収ベール品をベルトコンベアで流し、センサーで樹脂種・色・形状を判定して、圧縮空気の噴射で目的物を弾き分ける設備です。判定はミリ秒オーダーで行われ、高速に開閉する電磁バルブから空気を吹きつけて振り分けます(前掲・河済 2018)。つまり選別機の仕事は「測ること」ではなく「分けること」にあります。
材質判別装置との役割の違い
ここを混同すると設備選定を外します。破片1個の樹脂種を確かめたいのなら、必要なのは選別機ではなく判別装置です。「分ける前に、まず自社の廃材に何が混ざっているかを測って確かめたい」という段階であれば、プラスチック材質判別装置の5方式の比較のほうが目的に合います。判別装置は組成を知るための道具、選別機は知った組成をもとに物理的に振り分ける設備で、前者の結果がないまま後者を選ぶと、投入物に合わない方式を買うことになります。
なお、選別の対象が廃プラスチックに限らず、金属・紙・木片を含む廃棄物処理ライン全体である場合は、廃棄物の選別を自動化する6方式でライン全体の設計を先に押さえたほうが早いです。本記事はそのうち「プラスチックを樹脂種で分ける」部分に絞って掘り下げます。
なぜ今、再生材の品位が問われるのか
背景には2つの制度があります。ひとつは「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(プラ新法)で、2021年6月11日公布・2022年4月1日施行です(環境省:プラスチック資源循環法関連)。設計指針、使い捨て製品の使用の合理化、市区町村の分別収集・再商品化、製造販売事業者等の自主回収・再資源化、排出事業者の排出抑制・再資源化等という5つの措置で構成されます。
ここで誤解しやすいのが義務の範囲です。排出事業者(小規模企業者等を除く)には判断基準省令に基づき、プラスチック使用製品産業廃棄物等について可能な限り①排出抑制②適切な分別排出③再資源化の実施④熱回収を行うことが求められます。さらに前年度の排出量が250トン以上の多量排出事業者は、排出抑制・再資源化等に関する目標を定め、計画的に取り組むことが義務づけられています(環境省:排出事業者による排出の抑制・再資源化等と認定申請)。選別設備を導入すること自体が義務なのではなく、取組と目標が求められる点を押さえてください。
もうひとつが改正資源有効利用促進法(2026年4月1日施行)です。「指定脱炭素化再生資源利用促進製品」としてプラスチック製容器包装(1万トン以上)・自動車(1万台以上)・ユニット形エアコンディショナ/テレビ受像機/電気冷蔵庫/電気洗濯機(各5万台以上)が指定され、該当する製造事業者等には再生プラスチックの利用計画と定期報告が求められます。計画提出の初回は2027年9月末日、定期報告の初回は2028年9月末日です(経済産業省:資源有効利用促進法)。
つまり再生材は「引き取ってもらえる廃棄物」から「製品に使う原料」へ位置づけが変わりつつあります。原料として使うなら品位が要求され、品位は選別工程で決まります。日本の廃プラスチックは2024年に総排出量911万トン・有効利用率89%ですが、その内訳はサーマルリサイクル67%に対しマテリアルリサイクルは20%にとどまります(一般社団法人プラスチック循環利用協会:プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況(マテリアルフロー図)2025年12月公表)。燃やす側に大きく傾いた構造を材料側へ動かす作業が、まさに選別の精度にかかっています。
プラスチック選別機の主な方式|守備範囲と弱点の比較
「プラスチック選別機」と一括りにされますが、原理はまったく違います。公開情報で裏の取れる範囲に限って整理します。空欄を埋めるための推定値は入れていません。
方式 | 主に分けられるもの | 黒色プラ | 処理規模の目安 | 主な弱点 |
|---|---|---|---|---|
NIR(近赤外)選別 | PE・PP・PS・PET・ABS・PC等の樹脂種、PVC除去 | 不可 | 毎分200m以上のベルト速度で毎時1トン以上の機種が複数メーカーから販売 | 表面反射のみを読むため塗装・被覆の内部が読めない。1,300nm以上で水の吸収が効き、濡れていると識別困難 |
色彩選別(可視カメラ) | 色・透明/着色の区別 | 黒同士の樹脂種分離は不可 | NIR機にVISセンサーとして併載される構成が一般的 | 色が同じなら樹脂種は分けられない |
比重選別・風力選別 | 比重差のある樹脂の粗分け、夾雑物除去 | 色に依存しないため可 | 前処理として複数工程に組み込まれる | 性質の差が小さく、ばらつきが大きいと精度が出ない(PSとABSは比重で分けられない) |
静電選別(摩擦帯電) | 比重で分けられないPSとABSなど | 色に依存しないため可 | 家電リサイクルの選別フローで実用 | 樹脂の組み合わせごとに帯電条件を出す必要があり、乾燥が前提 |
中赤外(MIR)ハイパースペクトル | 黒色のPP・PEなど黒色樹脂の樹脂種 | 可(3〜5μmのC-H伸縮振動を使う) | 2017年に国内で使われ始めた段階 | 装置価格・商業ベースの識別精度・長期安定使用が検討課題と報告されている |
ラマン分光 | PSとABS、黒色のPP・PE、臭素系難燃剤 | 可 | PS/ABS分離で純度98%、識別機50台構成で最大毎時400kg(2018年の報告)/トラッキング型ではベルト1.5m/秒で最大毎時1トン | レーザーのスポット照射のためベルト幅を覆うには多数台必要でシステムが複雑になる |
X線透過 | 臭素系難燃剤を含むプラスチック、タルク、金属 | 可(色に無関係) | ― | 樹脂種そのものの識別には使えない |
NIR選別|主力だが「1台で2〜3種」が基本
樹脂種選別の主力はNIRです。樹脂に含まれるC-H結合などの倍音・結合音による吸収が波長800nm以上に現れるため、そのパターンからPE・PP・PSなどを判定します。以前の検出器は900〜1,700nmにしか感度がなく1,200nmや1,400nm付近の小さなピークで判定していましたが、InGaAs検出器の進歩で2,500nm付近まで感度をもつものが登場し、1,700nm付近の大きな吸収ピークまで使えるようになりました(前掲・河済 2018)。
ここで見落とされやすいのが分配側の制約です。国内で流通するNIR選別機の代表例では、検知幅1,000〜2,800mm・ベルト速度2〜3m/s・ノズル数80〜224という仕様で、1台のパスで分けられるのは2〜3種とされています(株式会社アーステクニカ:高効率プラスチック材質選別機 オートソート)。判定は詳細にできても、選別機能は圧縮空気による二者択一が基本のため、回収した一方を再度かける「二度掛け」も行われます(前掲・河済 2018)。4種類以上に分けたいなら、必要なのは高性能な1台ではなく段数の設計です。
比重・風力・静電|色に依存しない物理選別
光を使わないため黒でも動くのが物理選別の強みです。ただし性質の差が小さい、ばらつきが大きいという弱点があり、比重の近い樹脂は分けられません。代表例がPSとABSで、これは比重選別では分離できず静電選別が使われます。摩擦帯電傾向の違いを利用し、PSはマイナス、ABSはプラスに帯電させて電極に引き寄せる原理です。近年は複数センサーとAIで帯電条件を自動制御する方式の検証も始まっています(三菱電機:プラスチックリサイクル向け「スマート静電選別」技術を開発、検証実験を開始)。
中赤外・ラマン|黒色樹脂に踏み込む方式
黒色樹脂に届く方式は実用段階に入りつつありますが、成熟度は正直に区別すべきです。ラマン分光では、ABS分子のC≡N結合の振動ピーク(2,240cm⁻¹)を検出することでPSとABSを分離し、破片の重なりや吹き落としの精度まで含めて純度98%を達成した実機報告があります。1個あたりの識別時間3ms、毎分100mのベルト速度で識別機50台構成、最大毎時400kgという規模です(前掲・河済 2018)。商用機ではトラッキング型ラマン分光技術により、ベルト搬送速度1.5m/秒を保ちながら最大毎時1トンの選別が可能とされる装置が2024年6月から受注開始されています(キヤノン:種類判別が難しい黒色のプラスチック片も計測できる高精度選別装置を受注開始)。
一方で中赤外ハイパースペクトルは、3〜5μmのC-H伸縮振動を使って黒色のPPとPEを識別できることが検証されているものの、装置価格・商業ベースでの識別精度・長期間の安定使用は検討課題として明記されています(前掲・河済 2018)。「黒が採れる」と「黒を毎日安定して採り続けられる」の間には、まだ距離があります。
X線透過|難燃剤とタルクを見る
X線はプラスチックのような軽元素の有機物を透過するため樹脂種の識別には使えませんが、混入・含有する元素の分析ができます。RoHS指令対応を考えた臭素系難燃剤を含むプラスチックの除去や、使用済み自動車由来のプラスチックに多いタルクの検出に使われます(前掲・河済 2018)。樹脂種選別とは目的が別なので、NIR機の後段に置くのが通例です。
再生材の品位が上がらない5つの原因
①黒色樹脂|カーボンブラックが光を返さない
業界最大の壁です。カーボンブラック等の顔料を使った黒色プラスチックは、可視領域から2.5μmまでの近赤外領域の光をほとんど反射しないため、NIRでは信号そのものが得られません(前掲・河済 2018)。家庭用電化製品や自動車内装に黒色樹脂は多く、選別できないまま燃料として利用されているのが現状です(キヤノン:計測が難しい黒色プラスチック片も同時計測できる高精度選別法を開発)。投入物に黒が2〜3割あるなら、NIR機の純度は原理的にそこで頭打ちになります。
②塗装・被覆・多層フィルム|読めるのは表層だけ
NIRは表面反射光を測っているため、塗装や被覆があると内部のプラスチックは識別できません。多層フィルムも同様に、基本的に読めるのは最表層です。ただし透明な対象であれば、主成分分析などの多変量解析と組み合わせることで複層素材の識別も可能になると報告されています(前掲・河済 2018)。「複合材だから無理」と決める前に、透明性の有無で場合分けする価値があります。
③汚れと水分|1,300nm以上は水が効く
1,300nm以上の波長には水の大きな吸収があるため、プラスチックが濡れていると識別が困難になります(前掲・河済 2018)。洗浄後の乾燥が不十分なままNIR機に投入して純度が出ない、というのは装置の不良ではなく前工程の設計の問題です。油分・土砂・ラベル・印刷インキも同じく樹脂本来のスペクトルを埋もれさせます。
④重なりと破砕サイズ|上面だけで判定される
表面反射光を測っているので、破砕片が重なっていると上面の判定結果で下の片も一緒に吹き落とされ、選別精度が落ちます。そのため振動フィーダで破砕片を広げる工程が置かれます(前掲・河済 2018)。また処理量・搬送速度・各工程の効率から投入する破砕片のサイズには制限が生じるため、光学識別の空間分解能との兼ね合いを考える必要があります。カタログ値が出ないときは、まず投入量と広がりを疑うのが順序です。
⑤二者択一という構造|どの時点で選別するか
大量の混合素材から目的の樹脂を純度よく回収できても、含有量が少なく吹き落としが稀にしか発生しないようでは効率が悪くなります(前掲・河済 2018)。選別をフローのどこに置くか、粗分けを先にするか、二度掛けをどこに入れるか。設備単体の性能ではなく工程配置で品位が決まる部分です。
選別設備に使える補助金・助成金(2026年度の状況)
設備投資の原資として使える公的支援を、2026年9月時点の公募状況とあわせて整理します。採択を保証するものではなく、公募時期・要件は必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
- 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(プラスチック資源・金属資源等のバリューチェーン脱炭素化のための高度化設備導入等促進事業)|リサイクルの質の向上につながる資源循環高度化設備の導入費用を1/2を上限に補助する事業で、補助対象に金属破砕・選別設備導入事業が含まれます。令和7年度補正予算の公募は2026年3月31日〜5月8日で受付を終了しています(環境省 報道発表)。
- 令和8年度 脱炭素型循環経済システム構築促進事業(うち、プラスチック等資源循環システム構築実証事業)|現状ではリサイクルが困難なプラスチック等をリサイクルするための技術的課題の解決を実証する事業です。公募は2026年4月17日〜5月29日17:00で受付を終了しています(環境省 報道発表)。設備単体の購入が対象かは公募要領で確認が必要です。
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回公募)|従来のものづくり補助金が再編された制度で、革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠の3枠構成です。補助率は中小企業1/2(一定要件で2/3)、従業員規模により補助上限は750万円〜7,000万円。応募受付は2026年10月30日(金)18:00締切で現在公募中です(中小企業基盤整備機構:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金)。
環境省系の設備補助は年度前半に公募が集中する傾向があるため、今年度の受付が終わっている場合は次期公募を前提に、この記事で挙げた「何をどの純度まで分けるのか」の検証を先に済ませておくほうが計画書は通りやすくなります。
私たちは国産のハイパースペクトルカメラ irodori を開発している会社です。申請そのものを代行することはできませんが、どの波長で何が見分けられるのかという設備計画の前提部分はお手伝いできます。irodori の導入が補助金の対象になり得るか、まずはお気軽にご相談ください。
プラスチック選別機の選定4軸と判定チャート
ここまでの内容を、発注前に固めるべき4つの軸にまとめます。この4つが埋まっていない状態でメーカーに相談すると、比較のしようがない見積が並びます。
- 分けたい樹脂の組み合わせ|PS/ABSのように比重で分けられない組み合わせが含まれるか。含まれるなら静電選別かラマン分光が候補に入ります。
- 色の構成|投入物のうち黒色樹脂が何割か。無視できない比率なら、NIR単独では原理的に届きません。
- 要求品位|クローズドリサイクル相当なら99%以上、汎用の再生ペレットならどこまでか。要求品位が段数と方式を決めます。
- 処理量とライン速度|毎時何トン、ベルト何m/分か。ラマン分光は精度が高い一方で毎時数百kg規模の報告が多く、処理量との両立が論点になります。
既存機で足りるか/分光の実証が要るかの判定チャート
現場で起きている症状 | 考えられる原因 | まず試すこと | 分光の実証 |
|---|---|---|---|
4種類以上に分けたいのに純度が出ない | 1パス2〜3種という二者択一の構造 | 二度掛け・段数追加・工程配置の見直し | 不要 |
白物・淡色は採れるが黒が残る | NIRの原理的限界(カーボンブラック) | 黒を別ラインに振り分ける前処理 | 必要(波長帯の選定から) |
カタログ値は出るのに現場の純度が届かない | 破砕片の重なり・投入量・サイズ | 振動フィーダの調整、投入量の抑制 | 不要(まず機械条件) |
洗浄後も判定が安定しない | 水分(1,300nm以上の吸収)と汚れ | 乾燥工程と洗浄条件の見直し | 条件次第 |
多層フィルム・複合材が混ざる | 読めるのは最表層だけ | 単層化・前処理での分離 | 必要(透明なら多変量解析で可能性あり) |
難燃剤入りを除去したい | 樹脂種では分けられない | X線透過の後段設置を検討 | 必要(検出下限の確認) |
表の右列が「不要」の行に該当するなら、既存設備の条件出しと工程配置で解ける可能性が高く、新しい装置を買う前にやることが残っています。逆に「必要」の行に当てはまるなら、装置を選ぶ前にどの波長で分かれるのかを確かめる工程が抜けています。
実証(PoC)で先に確かめるという選択肢
現在のNIR選別機の心臓部には、分光機能を組み込んだハイパースペクトルカメラが使われています。高性能機の仕様では空間方向300〜500画素・波長方向200〜300画素・毎秒200〜500画面の読み出しで、1m幅のベルトなら空間分解能2mm、スペクトル分解能5nm、進行方向6mm間隔でのデータ取得が見積もられています(前掲・河済 2018)。つまりハイパースペクトルは既存機を置き換える新技術ではなく、すでに選別機の内側で動いている計測の枠組みです。
だからこそ有効な使い方は、既存機で採れているものを置き換えることではなく、採れていない対象について「どの波長なら分かれるのか」を切り出して条件を出すことです。全波長のスペクトルを面で取得したうえで、識別に効く波長だけを選び、量産機に落とす。この順序であれば、方式選定そのものを根拠のある判断に変えられます。仕組みから理解したい方はハイパースペクトルカメラで何が見分けられるのかを整理した記事、装置仕様はirodori の波長帯と構成をご覧ください。
そのうえで、実際にラインを組む相談相手はプラントメーカー・装置メーカー・商社など複数の区分に分かれます。どこに持ち込むかで出てくる提案が変わるため、リサイクル向け選別機の相談先を4区分で整理した記事も並行して見ておくと遠回りが減ります。
私たちはこれまで、食品・農業・インフラ・医療などの現場とともにハイパースペクトルカメラの実証を重ねてきました(実績一覧)。プラスチックについても、既存のNIR選別機を置き換えるという話ではなく、いま採れていない対象を切り分けるところに役割があると考えています。記事の最後で恐縮ですが、もし再生材の品位でお困りでしたら、資料だけでもご覧いただけたら嬉しいです。




