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廃棄物の選別を自動化する6方式|材質判別の限界と選び方【2026】

廃棄物の選別の自動化は、材質判別の方式選びで成否が決まります。手選別・物理選別・AIカメラ・近赤外分光・X線透過など6方式を、金属やプラスチックなど対象物ごとに比較し、精度が落ちる条件と導入判断の順序まで整理します。

結論を先に述べます。廃棄物の選別の自動化に「万能な1方式」は存在せず、何を何から分けたいかで最適解が変わります。形が違うものは画像とAIで、金属は磁力・渦電流で、樹脂の種類は近赤外の分光で、内部の密度差はX線透過で分ける——という具合に、判別の原理そのものが違うためです。実際、環境省の産業廃棄物排出・処理状況調査(令和5年度実績)では総排出量3億6,725万トンのうち再生利用は54.7%にとどまり、がれき類が16.5%、建設業からの排出が21.8%を占めています。混ざったまま出てくる廃棄物をどう解くかが、リサイクル率の伸びしろそのものになっています。

結論:自動選別は「何を分けたいか」で方式が決まる

選別の自動化を検討するとき、最初にやるべきことは機種の比較ではありません。「今の手選別ラインで、人が何を見て、何を抜いているか」を言語化することです。人が色と形で抜いているなら画像+AIで置き換えられる可能性が高く、人が手触りや重さで判断しているなら物理選別、人にも見分けがつかない樹脂の違いを分けたいなら分光——と、必要な技術が一意に決まっていきます。

以下が6方式の整理です。専門語の補足として、「分光」とは物質が特定の波長の光をどれだけ吸収・反射するかを波長ごとに測る手法で、材質固有の“指紋”を読み取る考え方です。

方式

判別の原理

主に分けられるもの

得意

苦手・限界

手選別

人の目・手・経験

ほぼ何でも

少量多品種、異形物、例外対応

速度とばらつき、人手確保、労働環境

物理選別(磁力・渦電流・風力・比重)

磁性・導電性・質量と空気抵抗

鉄、アルミ等の非鉄金属、軽量物と重量物

大量処理が安価、汚れに強い、実績が厚い

材質そのものは判別できない。樹脂の種類は分けられない

カラーカメラ+AI

RGB画像の形・色・質感を機械学習で分類

缶、ボトル、木材片、紙、大きな異物

見た目で違うものに強い。学習で対象を追加できる

見た目が同じで材質が違うものは原理的に分けられない

近赤外(NIR)・分光イメージング

分子振動に由来する近赤外域の吸収スペクトル

PE・PP・PET・PSなど樹脂種、木材/紙、含水状態

見た目が同じ樹脂を材質で分けられる

黒色(カーボンブラック含有)樹脂、破片の重なり、汚れ・水分

X線透過(XRT)

密度・実効原子番号による透過率の差

金属種、比重差のある材料、内部の異物

表面の汚れ・塗装・ラベルに影響されにくい

樹脂の種類までは分けにくい。設備コストと管理義務

AIロボット選別(判別+ピッキング)

上記センサーの判別結果をロボットアームで取り出す

手選別ラインで人が抜いている品目

手選別工程を直接置き換えられる

ピッキング速度が律速。判別できないものは取れない

なお環境省は、収集運搬・中間処理におけるAI・IoTの活用状況を調査し産業廃棄物処理におけるIT活用の導入事例として整理しています。技術としては実用段階に入った一方、初期投資の壁が導入の実際的なハードルになっている、という構図です。

選別方式6つの仕組みと、正直な得意・不得意

手選別:なくす前提ではなく「残す工程」を決める

手選別は今も多くの中間処理ラインの中核です。自動化の目的は「手選別をゼロにする」ことではなく、人にしかできない例外処理に人を残し、単純反復と危険作業から人を外すことにあります。実務では、自動選別導入後も最終確認の手選別ポジションは残るのが普通で、これを見込まずに人員計画を立てると現場が回らなくなります。

物理選別:安価で堅牢、ただし「材質判別」ではない

磁力選別は鉄を、渦電流選別はアルミや銅などの非鉄金属を、風力選別や比重選別は軽量物と重量物を分けます。これらは汚れや水分に強く、処理量あたりのコストが低いため、多くのラインで最初に入れるべき工程です。ただし分けているのは物性であって材質ではないため、PPとPEのように比重も見た目も近いものは分離できません。

カラーカメラ+AI:見た目で違うものに限る

RGBカメラと機械学習の組み合わせは、缶・ボトル・木片・配管材など「人が目で見分けているもの」を高速で置き換えられます。学習データを追加すれば対象品目を増やせる柔軟性も利点です。一方で、同じ形状・同じ色で材質だけが違うものは、どれだけAIを賢くしても画像だけでは分けられません。ここは技術の努力ではなく物理の制約です。

近赤外(NIR)・分光イメージング:樹脂種を分ける主役、ただし条件付き

近赤外分光は、プラスチックの樹脂種を非接触・高速で判別できる現在の主力技術です。廃棄物資源循環学会誌に掲載された光学識別法を用いる次世代ソーティング機器の開発動向(河済博文, 2018)では、近赤外吸収法・中赤外吸収法・ラマン散乱法・透過X線法の4手段が整理され、黒色プラスチックの識別や臭素系難燃剤の検出といった応用も紹介されています。

同時に、限界も明確です。近赤外は表面反射光を測っているため、破砕片が重なっていると精度が落ちます。カーボンブラックを含む黒色樹脂は近赤外域の光をほぼ吸収してしまい、通常のNIRソーターでは判別が難しいことが知られています。さらに、表面の汚れ・付着物・水分は、材質そのもののスペクトルを覆い隠します。廃棄物は本質的に「汚れていて、濡れていて、重なっている」ため、分光の性能はカタログ値どおりには出ません。装置レベルの方式差についてはプラスチック材質判別装置の5方式と黒色樹脂の壁で詳しく整理しています。

この「見た目が同じものを分光で分ける」考え方は廃棄物に限りません。米の着色粒選別で色彩選別機と分光の役割が分かれる話は斑点米・着色粒の選別装置と色彩選別機の仕組みに、原理の全体像はハイパースペクトルカメラの仕組みと業界別の活用事例にまとめています。

X線透過(XRT):汚れに強く、内部が見える

X線透過は密度と実効原子番号の差を使うため、表面が汚れていても、ラベルが貼られていても中身を評価できます。金属の種類分けや、比重差のある材料の分離、内部異物の検出で強みを発揮します。反面、樹脂の種類までは分けにくく、装置コストとX線管理の運用負荷が加わります。

AIロボット選別:判別とピッキングは別問題

センサーで判別できても、その物を実際に取り出せなければ選別は完了しません。ロボット選別ではピッキング速度が処理能力の律速になりやすく、「1台で人間何人分か」はコンベア速度・単位面積あたりの物量・対象品目の出現頻度で大きく変わります。NEDOの革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発でも、複合センシングとAIを組み合わせた廃プラスチックの高度選別技術が研究開発項目として設定されており、単一センサーでは足りないという認識は国のプロジェクトレベルでも共有されています。

対象物別:あなたの廃棄物にはどれが効くか

方式を覚えても現場は動きません。「何を分けたいか」から逆引きする表を用意しました。

分けたい対象

第一選択

補助的に有効

現実的な注意点

鉄・非鉄金属

磁力選別+渦電流選別

XRTで金属種をさらに分ける

細片・薄物・複合材は回収率が落ちる

プラスチックの樹脂種(PE/PP/PET/PS)

近赤外(NIR)分光選別

ラマン・中赤外は黒色対応の選択肢

黒色樹脂・汚れ・重なりで精度低下。単層化が前提

木材・紙

風力選別+カラーカメラAI

NIRで防腐処理材・合板の区別を検討

含水率の変動でスペクトルも比重も動く

石膏ボード

発生元での現場分別

画像AIで取りこぼしを回収

破砕後の混合物からの分離は難易度が高い

コンクリートがれき

比重選別・破砕+ふるい

画像AIで木材・プラの異物除去

粉じん環境はカメラ・光学系の汚れ対策が必須

建設混合廃棄物

前処理(破袋・破砕・単層化)

物理選別→画像AI→分光の多段構成

1方式で解こうとすると必ず破綻する

石膏ボードを「発生元での現場分別」としているのには根拠があります。国土交通省は廃石膏ボード現場分別解体マニュアルを整備しており、混ざる前に分けることが最も確実で安価という前提に立っています。中間処理側で混合物から石膏を取り戻すより、解体現場で分けるほうが圧倒的に効率が良い、という順序は自動化を検討する前に押さえておくべき点です。

また、解体前調査でのアスベスト含有建材の判別は、選別ラインの自動化とはまったく別の法定手順に属します。混同しないよう、アスベスト含有建材の判別方法と解体前調査の手順を参照してください。

導入判断のフレーム:前処理・処理量・投資回収の3段階

自動選別の成否は、装置の性能より前段で決まります。次の3段階を順番に検証してください。ステップ1で不合格なら、どんな高性能機を買っても投資は回収できません。

  1. 前処理は成立するか(最重要):センサーは「見えているもの」しか判別できません。破袋・破砕による粒度の揃え、ふるいによる寸法分級、そしてコンベア上で対象物を重ならせない単層化と、搬送速度の安定。この4点が確保できるかを先に見ます。単層化ができないラインに分光選別を入れても、性能は出ません。
  2. 処理量と対象物の出現頻度は合うか:ロボット選別はピッキング速度が上限になります。1時間あたりの投入トン数、コンベア幅と速度、抜きたい品目が単位時間に何個流れてくるかを実測し、装置の公称処理能力と突き合わせます。ここで「自社の物量に対して過剰/過少」が判明することは珍しくありません。
  3. 投資回収の根拠は何か:削減人件費だけで組むと成立しにくいのが実情です。回収した資源の売却単価向上、最終処分費の削減、選別純度が上がることで生まれる出口の確保、労働災害リスクの低減——これらを合算した上で回収年数を見ます。加えて、公募中の補助制度が使えるかは、要件・公募時期ともに必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。

この順番を守らずに機器選定から入ると、導入後に「思ったほど分けられない」となります。同じ失敗のパターンは分野を問わず共通で、ハイパースペクトルカメラ導入で起きる7つの落とし穴にも整理しています。

実務の落とし穴と、2026年時点の制度の動き

現場で起きがちな5つの落とし穴

  • 「自動選別を入れれば人手ゼロ」という想定:例外対応と最終確認の人員は残ります。減るのは人数ではなく、単純反復と危険作業の比率です。
  • カタログの選別精度をそのまま信じる:多くは単一材質・清浄・単層の理想条件での値です。実廃棄物での精度は、必ず自社サンプルでの実測に基づいて評価してください。
  • 光学系の汚れ対策を計画に入れない:粉じん環境ではレンズ・照明・保護ガラスが数時間で曇ります。清掃頻度と手順、そのための停止時間が運用コストに直結します。
  • 季節と天候で精度が動くことを見ていない:雨天後の含水率上昇は、分光スペクトルにも比重選別にも効きます。年間を通した変動を見込んだ設計が要ります。
  • 出口(受け入れ先)を決めずに純度を上げる:高純度で選別できても、その材を買ってくれる先がなければ在庫が増えるだけです。技術検討と同時に販路を確認します。

制度は「選別の質」を問う方向に動いている

2026年時点で、押さえておくべき制度の動きは2つあります。ひとつは再資源化事業等高度化法(資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律)です。特定産業廃棄物処分業者に対し、処分した産業廃棄物の数量と再資源化の数量を国へ報告する制度が設けられ、報告内容は国が公表する仕組みになっています。令和7年度実績の報告期限は2026年6月30日とされていました。対象事業者の範囲や数量のしきい値は要件が細かいため、自社が該当するかは必ず環境省の公式情報でご確認ください。

もうひとつは資源有効利用促進法の改正です。環境省の資源の有効な利用の促進に関する法律の一部改正についてのとおり、再生資源(第一弾として再生プラスチック)の利用について、一定規模以上の製造事業者に計画提出と定期報告を求める仕組みと、環境配慮設計の認定制度が設けられ、政令改正を経て2026年4月1日に施行されています。

この2つが意味するのは、「処理したか」ではなく「再資源化できたか」が可視化され、再生材の品質が下流から問われるようになるということです。純度の低い再生材は選ばれにくくなり、選別工程の質が事業の競争力に直結します。建設分野を見ても、建設廃棄物全体の再資源化・縮減率は2018年度に97.2%に達している一方、建設混合廃棄物は63.2%と大きく水をあけられています。伸びしろは「混ざったもの」に集中しており、そこがまさに自動選別の主戦場です。

分光で何が見えて、何が見えないのかを先に知る

ハイパースペクトルカメラは、各画素について数十〜数百の波長帯の反射スペクトルを取得する装置です。単波長のNIRセンサーが「あらかじめ決めた材質かどうか」を判定するのに対し、波長の情報量が多いぶん、どの波長が効くかを検証段階で探索できるという性格があります。逆に言えば、色や大きさで分けられる対象なら、RGBカメラや既存の色彩選別機で十分であり、そのほうが安価で速い——これは正直に申し上げておきたい点です。

分光が価値を出すのは、「人にも見分けがつかないが、材質としては確実に違う」領域に限られます。まず自社の廃棄物で、その領域がどれだけの割合を占めるのかを測ることをおすすめします。

私たちMilk.株式会社は、国産のハイパースペクトルカメラ「irodori」を自社開発しています。食品・農業・インフラ・医療などの現場とともに実証を重ねてきた内容は実績一覧にまとめています。廃棄物の材質判別で「分光でどこまで見えるのか」を確かめたい段階の方は、資料だけでもご覧いただけたら嬉しいです。

FAQ

近赤外(NIR)で黒いプラスチックは分けられますか?

カーボンブラックを含む黒色樹脂は近赤外域の光をほぼ吸収してしまうため、通常のNIRソーターでは判別が難しいのが実情です。中赤外吸収法やラマン散乱法が選択肢として検討されますが、処理速度やコストの制約があります。まず自社の廃棄物に黒色樹脂がどれだけ含まれるかを把握してください。

自動選別を導入すれば手選別の人員はゼロになりますか?

なりません。例外対応と最終確認のポジションは残るのが通常です。自動選別で減るのは人数そのものより、単純反復作業と危険作業の比率です。導入後も一定の手選別工程を残す前提で人員計画を立ててください。

混合廃棄物をそのまま自動選別機にかけられますか?

難しいです。センサーは見えているものしか判別できないため、破袋・破砕・ふるいによる分級と、コンベア上で対象物を重ならせない単層化が前提になります。前処理が成立しないラインでは、どれだけ高性能な選別機を入れても公称性能は出ません。

ハイパースペクトルカメラと近赤外センサーはどう違いますか?

ハイパースペクトルカメラは各画素で数十〜数百の波長帯のスペクトルを取得します。あらかじめ決めた材質かどうかを判定する単波長のNIRセンサーに比べ、どの波長が効くかを検証段階で探索できる点が違いです。ただし色や大きさで分けられる対象なら、RGBカメラや色彩選別機のほうが安価で速く適しています。

石膏ボードやアスベスト含有建材も自動で判別できますか?

石膏ボードは、破砕後の混合物から分離するより解体現場で分別するほうが確実で安価です。国土交通省も現場分別解体マニュアルを整備しています。アスベスト含有建材の判別は選別ラインの自動化とは別の法定調査手順に属するため、混同せず所定の手順に従ってください。

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