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プラスチック材質判別装置の5方式を比較|黒色樹脂の壁と選び方【2026年版】

プラスチックの材質判別装置は、樹脂の種類を目視や手触りに頼らず光で見分ける機器です。この記事では5方式の違いと、業界共通の壁である「黒色樹脂」の扱い方を整理し、自社の現場に合う一台を選べる状態にします。

結論から言えば、選定の軸は精度の高さではなく「何を、どの粒度で判別したいか」です。ベルトコンベア上の廃プラを樹脂種ごとに連続選別するなら近赤外(NIR)系の光学選別機、破片1個の材質をその場で確かめるならハンディのNIR判別器やFTIR、カーボンブラックを含む黒色樹脂まで対象にするならラマン分光や中赤外(MIR)系という住み分けになります。処理能力の桁も方式で大きく変わり、たとえば中赤外域のハイパースペクトルカメラを用いた構成では、2×2cmのフレークを毎分300kg規模で選別できるとメーカーが公表しています(Specim: FX50による黒色プラスチック選別)。

装置選びの前に決めること:判別したい対象は3種類ある

「プラスチックの材質を判別したい」という相談は、掘り下げると次の3つに分かれます。ここを混ぜたまま装置を比較すると、カタログ上は高性能でも現場で使えない、という結果になりがちです。

(1)樹脂種の選別(PET/PP/PE/PS/ABSなどを分ける)

最も需要が大きいのがこれです。破砕後のフレークや、家電・自動車由来の混合プラスチックを、樹脂の種類ごとに分けたい。求められるのは1点あたりの分析精度よりも、スループットと分離純度です。分析機器ではなく「選別機」を探すべき領域といえます。

(2)異物・異材の検出(本来入っていないものを見つける)

成形メーカーの品質管理で多いのがこちらです。同じ樹脂の中に別素材が混ざっていないか、フィルムに異物が付着していないかを見たい。この場合は「全数を面で見る」必要があるため、点で測る分光器ではなくイメージング系が向きます。考え方は食品工場の異物検査と共通する部分が多く、X線で映らない異物をどう検出するかを整理した記事の判断軸がそのまま応用できます。

(3)グレード・添加剤の判定(同じPPでも中身を見分ける)

ここが最も難易度が高く、そして光学的な材質判別装置が最も苦手とする領域です。詳しくは後述しますが、「樹脂の種類は分かってもグレードまでは分からない」ことを前提に、装置ではなく試験機関への外部分析を組み合わせる設計が現実的です。

プラスチック材質判別5方式の比較

現場で選択肢に挙がる5方式を、原理と使いどころで整理します。優劣ではなく、扱う対象と量で向き不向きが決まります。

方式

原理

非破壊

その場で判るか

面での一括判別

苦手な対象

向く現場

比重・燃焼などの現場試験

水/塩水への浮沈、燃え方・臭い、外観

×(試料を消費)

△(熟練が必要)

×

比重が近い樹脂、複合材

装置導入前の一次仕分け

FTIR(赤外分光・ATR)

中赤外の分子振動吸収をライブラリ照合

○(ATRは接触)

△(据置が中心)

×(点測定)

表面の汚れ・凹凸、多層品

ラボでの材質同定・受入検査

ラマン分光

レーザー照射による散乱光の分子情報

×(点測定・走査)

蛍光を発する添加剤、低速になりやすい

黒色を含む高純度選別

近赤外(NIR)分光

C-H結合などの近赤外吸収スペクトル

◎(ハンディ機あり)

△(機種による)

黒色(カーボンブラック)、極薄フィルム

ヤードでの判別、連続選別

ハイパースペクトルイメージング(HSI)

画素ごとに数十〜数百バンドの分光情報を取得

NIR域では黒色、汚れの厚い表面

選別+異物検出を同時に見たい現場

手作業の試験は「捨てる技術」ではない

比重分離や燃焼試験は、装置を入れる前に対象物の素性を掴む手段として今も有効です。ただし判定が人の経験に依存するため、担当者が替わると基準がぶれます。実際、近赤外方式のハンディ判別装置を提供する山本製作所も、手ざわり・弾力・匂い・燃え方といったベテランの経験則に依存しがちだった作業を、データに基づく客観的な判別に変える点を製品の価値として説明しています(山本製作所:プラスチック材質判別装置)。

FTIRとラマンは「1点を確実に」

FTIRはATR(全反射測定)付属品を使えば試料をほぼ加工せずに測定でき、日本分光をはじめ各社が用途別のATRユニットを揃えています(日本分光:FTIR特別付属品)。一方ラマン分光は黒色樹脂にも対応できるのが強みで、キヤノンは走査によって計測時間を確保する「トラッキング型ラマン分光技術」を用いた選別装置を製品化し、搬送スピード1.5m/秒・最大選別量1t/時という仕様を公表しています(キヤノン:黒色プラスチック片も計測できる選別装置)。

NIRとHSIは「面で、大量に」

近赤外分光は樹脂のC-H結合に由来する吸収を捉えるため、PET・PP・PE・PSといった主要樹脂の識別に向き、リサイクル現場の光学選別機の主流になっています。これをカメラ化したものがハイパースペクトルイメージングで、画素ごとにスペクトルを持つため「どこに、どの樹脂が、どれだけあるか」を面で把握できます。廃棄物資源循環学会誌でも、近赤外吸収・中赤外吸収・ラマン散乱・X線透過を並べた次世代ソーティング機器の動向が整理されています(河済博文「光学識別法を用いる次世代ソーティング機器の開発動向」廃棄物資源循環学会誌 29巻2号, 2018年)。

なおHSIは波長域の選択がそのまま判別できる樹脂の範囲を決めます。可視〜近赤外(VNIR)と短波長赤外(SWIR)で得意分野が変わる点は、ハイパースペクトルカメラの波長域の選び方で詳しく整理しています。実際にSpecimは、VNIR(400–1000nm)・NIR(900–1700nm)・SWIR(1000–2500nm)・MWIR(2700–5200nm)とラインアップを分け、PE・ABS・PVC・PS・PA・PP・PC・PETの識別性能を波長域ごとに比較しています(Specim: Plastics sorting with FX cameras)。

正直に書いておきたい、材質判別装置の限界

黒色プラスチックは光学式の共通課題

最大の壁がこれです。カーボンブラックで着色された黒色樹脂は近赤外光を吸収してしまい、反射光の波形が得られないため、NIR方式では材質を判別できません。装置メーカー自身も「黒色プラスチック(樹脂)は近赤外線を吸収してしまうため、反射する光の波形を測定することができず、材質を判別することはできません」と明記しています(山本製作所)。家電や自動車内装には黒色樹脂が多く、この制約はリサイクル率に直結します。

対策は大きく2つです。ひとつは前述のラマン分光。もうひとつは中赤外(MIR/MWIR)域を使う方法で、TOMRAはMIR分光でカーボンブラックを含む黒色のPE・PP・PSを樹脂種ごとに分離する専用機を提供していますし(TOMRA: AUTOSORT BLACK)、SpecimもMWIR域のカメラを黒色樹脂向けの選択肢として位置づけています。いずれも一般的なNIR機より装置コストは上がるため、「黒をどこまで拾う必要があるか」を事前に決めておくことが費用を左右します。

汚れ・多層フィルム・複合材は苦手

光学式はいずれも表面の情報を読んでいます。したがって油分や土砂、ラベル、印刷インキが載っていると、樹脂本来のスペクトルが埋もれます。多層フィルムのように異なる樹脂が積層された製品では、読み取れるのは基本的に最表層です。金属やガラス繊維を含む複合材も、単一樹脂として扱えません。前処理(洗浄・破砕)の設計が判別精度を決める、というのが現場の実感に近いところです。

樹脂の種類は分かっても、グレードまでは分からない

ここは誤解が生まれやすい点です。「PPである」ことは判別できても、そのPPがホモかランダムコポリマーか、どのメーカーのどの銘柄か、難燃剤や可塑剤が何%入っているかまでは、材質判別装置では基本的に特定できません。再生材の受入基準としてグレードや添加剤の管理が必要な場合は、装置による一次判別と、外部試験機関での定量分析を組み合わせる二段構えが現実的です。

私たちは国産のハイパースペクトルカメラ irodori を開発していて、食品・農業・インフラ・医療などの現場とともに実証を重ねてきました(実績一覧)。記事の途中で恐縮ですが、樹脂の判別や異物の見え方でお困りでしたら、資料だけでもご覧いただけたら嬉しいです。

制度の背景:再生材の「中身」を説明する責任が増えている

樹脂の判別精度が問われるようになった背景には、制度の変化があります。プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)は令和3年6月11日に公布、令和4年(2022年)4月1日に施行され、設計・製造から排出・回収・リサイクルまでを通じた資源循環の取組を求めています(環境省:プラスチック資源循環法関連)。

さらに資源有効利用促進法の改正により、脱炭素化の促進のために再生材の利用を促す仕組みが導入され、第一弾の対象として再生プラスチックが指定されました。対象製品は自動車・家電4品目・容器包装(飲食料品(指定PETボトル除く)や医薬品等を除く)で、一定の生産量・販売量を超える製造事業者等に、再生材の利用に関する計画の提出と定期報告が求められます(環境省:資源の有効な利用の促進に関する法律の一部改正について)。この改正は令和8年(2026年)4月1日施行で、自動車は1万台、家電4品目は各5万台、プラスチック製容器包装は1万トンが計画・定期報告の要件とされています(経済産業省説明資料)。

つまり、再生材を「使った」だけでなく「何をどれだけ使ったか」を説明する必要が出てきています。判別装置は分別のためだけでなく、記録・トレーサビリティの道具としての意味合いを強めつつあります。制度の詳細は改正が続くため、導入検討時には所管省庁の最新情報を確認してください。

導入判断の5ステップ

  1. 目的を1つに絞る:樹脂種の選別か、異物検出か、グレード判定か。3つを1台で解決しようとしないこと。
  2. 対象物の黒色比率を数える:黒色が全体の何%を占めるかで、NIRで足りるかMIR/ラマンが要るかが決まります。
  3. 処理量の桁を出す:1日あたり何トンか、1点あたり何秒までなら許容できるか。ハンディ機と選別機では設計思想がまったく違います。
  4. 前処理をセットで考える:洗浄・破砕・単層化まで含めて初めて判別精度が出ます。装置単体の性能値だけで判断しない。
  5. 自社サンプルで試す:カタログの樹脂リストではなく、自社の現物で分離できるかを確認します。予算感を掴みたい場合はハイパースペクトルカメラの価格・費用相場もあわせてご覧ください。

ハイパースペクトルイメージングが樹脂に対して具体的にどう効くのかは、プラスチックへの活用をまとめた記事でも触れています。また、ハイパースペクトルカメラの技術と事例をまとめたトップページでは、樹脂以外の分野も含めた活用の広がりをご覧いただけます。

どの方式が自社に合うか判断が難しいときは、まず対象物と処理量を整理するところからで構いません。検討材料として資料をお使いいただければ幸いです。

FAQ

プラスチックの材質判別装置で黒色の樹脂は判別できますか?

近赤外(NIR)方式では困難です。カーボンブラックで着色された黒色樹脂は近赤外光を吸収し、反射光の波形が得られないためです。ラマン分光や中赤外(MIR/MWIR)域を使う方式であれば、黒色のPE・PP・PSなどを樹脂種ごとに分離できる製品が実用化されています。

PET・PP・PEの判別に一番向いている方式はどれですか?

連続的に大量を選別するなら近赤外分光を使った光学選別機やハイパースペクトルイメージングが向きます。破片1個ずつを確実に同定したい場合はFTIR(ATR測定)が適しています。目的が選別か同定かで選ぶ装置が変わります。

材質判別装置で樹脂のグレードや添加剤まで分かりますか?

基本的に分かりません。PPかPEかといった樹脂の種類は判別できますが、コポリマーの種別や難燃剤・可塑剤の含有量までは特定できないのが一般的です。グレード管理が必要な場合は、装置による一次判別と外部試験機関での定量分析を組み合わせる運用が現実的です。

汚れた廃プラでも判別できますか?

光学式はいずれも表面の情報を読むため、油分・土砂・ラベル・印刷インキがあると樹脂本来のスペクトルが埋もれ、精度が落ちます。多層フィルムでは読み取れるのは基本的に最表層です。洗浄・破砕といった前処理の設計が判別精度を大きく左右します。

再生プラスチックに関する制度で何が変わりましたか?

資源有効利用促進法の改正により、再生材利用の第一弾の対象として再生プラスチックが指定され、自動車・家電4品目・容器包装の製造事業者等に、再生材の利用計画の提出と定期報告が求められるようになりました。詳細は環境省・経済産業省の資料をご確認ください。

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