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ハイパースペクトルカメラで正確な情報を取得するためには?|Milk.株式会社

ハイパースペクトルカメラで正確な情報を取得するためには?|Milk.株式会社

こんにちは。Milk.株式会社の藤井です。
今回はハイパースペクトルカメラで正確な情報を計測するための方法について解説します。

一口にハイパースペクトルカメラと言っても、複数の分光方式があり、方式に応じて撮影方法の工夫が必要になります。

今回は、特に「ラインスキャン方式」のハイパースペクトルカメラに関する撮影方法を紹介しますが、中には他の方式のハイパースペクトルカメラにも適用できる手法もありますので、ハイパースペクトルカメラ撮影の初心者の方の全般的な参考になる記事にできればと考えています。 

1.ハイパースペクトルカメラとは?

まず、ハイパースペクトルカメラの定義を説明します。

Milk.株式会社では、市場に出回っている製品から「特定範囲の波長帯を数十~数百の波長のまとまりで分割した情報(分光情報)とその位置情報(ピクセル)を同時に取得できるカメラ」と定義しています。

波長数の多さや連続的なスペクトルを取得できることを要件とするケースもありますが、それぞれの方式にメリットがあるので広めに捉えています。  

2.ラインスキャン方式のハイパースペクトルカメラとは

中でも、「ラインスキャン方式」のハイパースペクトルカメラは、波長分解能が高く、ノイズも乗りにくいことがメリットです。工場のラインでマシンビジョンとして活用したり、HISUIなどの人工衛星搭載などの実績があり、同じ速度で動くものの撮影に適しているハイパースペクトルカメラです。

おそらく、国内でハイパースペクトルカメラを購入される方の多くが、このラインスキャン方式のカメラを使用されているのではないかなと思います。

ただし、画像として撮影する際にはスキャンをする必要があるため、撮影速度が遅い(一枚の画像撮影に数秒~十数秒)ことが難点です。

3.ラインスキャン方式の原理 

原理としては、スリットを通した1次元(線)の光を、プリズムや回折格子などの分光器を通して分光し、2次元(面)の画像センサーで捉えることで分光情報を含んだ画像データを取得します。 

外部に動作機構(電動ステージや電動三脚など)が必要な機種もあり、そういった機種はカメラ機器としての取り回しが悪い傾向にあります。

4.ハイパースペクトルカメラでの撮影時の注意点

通常のカメラと比較したハイパースペクトルカメラの撮像機器としての特徴を3つ考えました。

①光源の影響を強く受ける
②画像が暗くなりやすい
③撮影速度が遅い 

上記3点が撮影方法を考える際には特に影響します。 

光に含まれる情報をできるだけ分けて取り出す計測機器のような側面もあるため、通常のカメラのようには手軽に撮影できないのですが、
これから上記の特徴を考慮して、ハイパースペクトルカメラを用いて、できる限り正確な情報を取得するための撮影方法について解説します。 

1)ハイパースペクトルカメラの光源について

光源について、普通のカメラでは光の強弱や照射方向のみを考慮すればよいのですが、ハイパースペクトルカメラの場合は、光源に含まれるスペクトルの分布が特に重要になってきます。

・光源の種類選定
理想的な光源としては、以下の3つが用意しやすく、おすすめです。

①太陽光(屋外)

・引用元
経済産業省 資源エネルギー庁:太陽エネルギーの基礎知識
https://x.gd/TkRcC 

太陽光は非常に広い範囲で安定した波長を提供してくれる光源です。屋外での撮影時は基本的に太陽光を光源とした撮影を行いますが、天気によって変化するため、あとで紹介する補正が重要になります。 

②ハロゲンランプ

・引用元
島津製作所:分光光度計の光源
https://x.gd/NkPOE

比較的安価に調達が可能で350 nm~3500 nmの幅広い波長範囲で安定した強い光を放射してくれる理想的な光源の一つです。 

ただ、光が強いということは、それだけ対象物に対して影響を与えてしまうため、利用時には照射時間を抑えるなど注意が必要です。また、LEDなどと比較すると時間経過によるスペクトルの変動などがあるため、その点を考慮した撮影が必要になります。

③高演色LED

・引用元
シーシーエス株式会社:高演色(自然光)LED照明とは
https://www.ccs-inc.co.jp/natural_lights/

通常のLEDよりは高価ですが、幅広い波長範囲で一定の光を放射してくれる光源です。ハロゲンランプと比較すると電気的に安定している点が特徴ですが、近赤外領域の広い範囲をカバー したい際にはハロゲンランプを選定するケースが多いです。

これらのグラフを見ると通常のLEDと比較して、太陽光などではハイパースペクトルカメラで撮影できる350nm~1700nm付近の範囲で波長が広く分布していることが分かると思います。この波形を基準として、波形が凹んでいる箇所に物質ごとの特徴が出てきます。もちろん撮影対象によって、上記以外の光源もうまく使いながら撮影する必要があります。

・光源の強弱調整

基本的には、通常のカメラと同様に絞りの調整や露光時間の調整などを行いますが、金属などの光沢が強いものを撮影する際には直接光を制限できる物体(布や拡散板など)を光源との間に挟むケースもあります。

2)補正について

 先ほどは光源について解説しましたが、やはり光源の影響を強く受けるため、特に屋外などの撮影環境が時間によって大きく変動する場合には、変化を考慮するための補正をする必要があります。

その際によく使用されるのが、白色板です。 

白色板イメージ

名前の通りただの白い板なのですが、可視光を満遍なく反射するので、撮影対象と同時に撮影しておくことで、補正の際の基準になります。

同時に撮影した対象と比較することで、光源のスペクトルをどれだけその物質が吸収しているかということが分かるので、より違いが際立ちます。

その他の補正を行うケースもありますが、
白色板による補正ができれば解析の入り口に立つことができます。 

3)ラインスキャンタイプのハイパースペクトルカメラで動くものを測定するには?

最後に少し応用編ですが、「動くものを撮影して、経時的変化を観察したい」というご要望をいただくケースがあります。ラインスキャンタイプのハイパースペクトルカメラは不規則に動く物体の撮影には向かないので、力技の部分もありますが、これまで行なってきた手法を一部紹介します。

①実験動物→麻酔で眠らせる
元も子もないですが、麻酔で眠らせて撮影しました。動くなら動かなくすればいいという究極の力技です。

②微生物→動きの影響が変化が出にくいマクロで撮影
特に分子生物系の研究で多いですが、生きている細胞の評価を染色せずに行いたいという要望があります。正直、染色していない細胞のミクロで見た時の特徴は軽微なためマクロで撮影した際の平均スペクトルを比較する手法を取りました。

他にも、使用波長を制限したり、光量を強めることで露光時間を短くし、
コマ送り動画のような撮影をすることも可能です。その際は、ノイズが大きくなる可能性が高いため、複数枚撮影した上での比較検証が必要になります。

最近はCubert社などからビデオタイプハイパースペクトルカメラも出ているので、使用を検討するケースもあります。 

5.最後に

以上、ハイパースペクトルカメラによる撮影方法について書いてみました。

ご参考になりましたら幸いです。

Milk.株式会社では、お客様の撮影対象や状況に合わせて、弊社の持てる手段を全て駆使して撮影をサポートするハイパースペクトル計測サービスがあります。

弊社おすすめ機種のハイパースペクトルカメラレンタルや、撮影方法レクチャー、解析の受託など幅広く行なっておりますので、ハイパースペクトルカメラに興味があるよという方は、ぜひ、こちらのフォームからお問い合わせください!!
https://hscform.milk-med.com/

・参考記事

①2014年4月30日ハイパースペクトルカメラの利用について
https://www.nies.go.jp/kanko/news/33/33-1/33-1-05.html

 

②Milk.株式会社サービス ANSWER Platform
https://www.milk-med.com/service/answer-platform/